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80、さようなら
「はぁ…」
マーガレットに落ち着いたらピクニックに行こう、なんて誘ったけど…。
この仕事はいつ終わるんだろう…。
城内の雇用の件はほぼ終わりが見えてきたけど…。城の決算書類等を確認すればするほど出てくる不正たち…。終わりが全然見えない…。
「ん、んん、」
「あ、ロンダ…どうしたの?」
部屋に誰もいないと思って机に突っ伏していると、いつの間に入ってきたのか、気まずそうに咳払いするアレックスさんが居た。
「一応何度か入出許可を伺ったのですが、返事が無かったので入らせていただきました」
「ごめんなさい、考え事をしていて聞こえてなかったみたい。それで、どうしたの?」
さっきの醜態を無かった事にするためにキリッとした顔で言えば、アレックスさんも空気を読んで真面目な顔で答えてくれる。
「皇帝より手紙を預かって参りましたので、お受け取りください」
「ありがとう」
手紙なんて1度も貰ったことがないのに、どういう風の吹き回しなんだろう。
手紙を受け取れば、アレックスさんはすぐに退出してしまったので1人で手紙を開封する。
中を確認すれば、リアムに話した内容とイザベラ様の今後について書かれていた。
リアム様からはどんな話をしたかは聞いていたけど、イザベラ様の事については全く知らされていなかったので、落ち着かない気持ちを抑えながら読んでいく。
「………した事がした事だから、仕方ない…よね」
手紙を読み終わってから、また机に突っ伏す。
前世での身近な死と言えば、老衰か事故や病気がほとんどで、死刑なんて、ニュースで聞くだけの話でしか無かった。それが今身近で起きようとしているんだと思うと、すごく複雑な気持ちになる。
国のトップを殺害したのだから、死刑になるかもしれないとは予想していた。それに、私やアイリ自身も危険な目に合わされそうになった。
だけど、いざその人が死刑に処されることを知って、平然としていられない。
前世の平和な世界で過ごしていた感覚がしっかりと残っているからこんなにも動揺してしまうんだろうな…。
皇帝が決めたことだから異を唱えるつもりは無いけど、すごく気が重くなってしまう。
リアムにはこの事はまだ伝えるつもりはないって書いていたから、リアムにイザベラ様の事が悟られないようにしないとな…。
ああ…アイリとリアムに今すぐ会いに行って抱きしめたい…。癒しが欲しい…。平和ボケした私に死刑はすぐに受け止めれるものじゃないよ…。
けど、この目の前の書類たちがそうさせてはくれないんだよね…。
「………がんばろ」
今まで、ルビアが何もさせてもらえなかったことをいい事に好きな事しかして来なかった自分が悪いと思ってするしかない。それに、仕事に集中すれば余計な事も考えなくていいんだから、良いように考えよう。
そうやって仕事に打ち込めば、気付けば1ヶ月が経っていた。
1ヶ月もすれば、城の中はかなり落ち着きを取り戻し、お父様やワイズ公爵の助けもなく仕事が回るようになっていた。
そして、イザベラ様は皇帝の言った通り、死刑が執行された。イザベラ様の死刑については、イザベラ様を皇后に、と支持していた貴族達から反対の声が上がったけど、その人達を調べると、次々と不正が見つかり、イザベラ様を庇う所ではなくなった。
結果として、イザベラ様の刑は執行され、不正を行っていた貴族達も粛清された。その事で、皇帝も仕事がしやすくなったと言っていたらしい。
正直、あんなにも皇后に執着していたイザベラ様が大人しく牢に入り、刑を執行されるまで逃げる素振りすら見せなかった事には驚いた。
イザベラ様は、あの夜から一体何を考えて過ごしていたんだろう…。母親に騙されていたこと?それとも、ギルバートに騙されていたこと?
どちらにしろ、イザベラ様にとっては可哀想なことでしかない。純粋な女の子を殺人者にしてしまった2人の罪は重い。
因みに、ギルバートは、私の証言でイザベラ様と共犯だった事、パーティで声を上げた男と同一人物だと知ったアレックスさんによって捕まえられ、イザベラ様と共に死刑に処された。
まさか、隣国にまで逃げているとは思わなくて、探し出すのにかなり時間がかかったようだ。それに、本当はパーティで名乗っていた家とは全く無関係だった為、余計に捜索に手間取ったらしい。
捕まって洗いざらい話した内容は、なかなかに酷いものだった。幼いイザベラ様を騙し、利用するだけして捨てるなんて…それに、妻子までいるなんて本当に最低な男だ。
もし…イザベラ様のお母様が子供思いで、ギルバートみたいな悪どい男と出会ってなければ、あんな風にはならなかったのかな…。
考えたところで答えは出ないけど、ふとした時に考えてしまう。
ルビアや皇帝、リアムやアイリにとって最低な人ではあったけど、彼女よ生い立ちには同情してしまう。
どうか…イザベラ様の来世が幸せな物でありますように。
空にそっと祈りを捧げながら、リアムと手を繋ぎながら庭を散歩する。
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