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フランス
41話 古代の異星人
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44話
パリフランス国立考古学研究所、ここでは、フランス国での重要な文化財や歴史的に重要な発見をした場合に必ずここで調査・研究がなされる国内唯一の機関である。所属している研究者は数多く、特に日本とは文明の調べる年代が違いかなり古い時代からの物も扱っている。だが、今回の棺においてはかつて扱ったことのない年代の遺物であり、さらに、どういった文明や人種が造ったのかわからないという特殊な案件である。
「やっと時間になりましたな」
レモンド中佐は発見者であるモーリス博士に声をかけた。
「そうですね。ですが、あなたは、あくまでも第三者の立場ですからね。余計なことを言われても、こちらは、かまわず進めていきますから」
「わかっています。邪魔はしませんので、ご安心を」
「モーリス、分析室にいきましょう」
古代文字を専門とするミッシェルは早く棺を調べたい衝動を抑えられない様子で声をかけた。
この男は小さい時から、未知の古代文明に憧れており、エジプトやメソポタミアの遺跡でも年代測定にかけた遺物の中で1万年以上前の物がかなり出てきているのに学会では説明がつかないため、その証拠に重きを置かず軽視してきたことに不満を持っていた。また、著名な学者による発表やなどで、1万年以上前の文明の存在を握りつぶすような動きもある。自分の発表した考えや内容が否定されれば、著名な学者は自分の権威が失墜するのを恐れていることもある。そのため、この男はこの棺の発見でこの世界の常識をくつがえし、正確な常識を世にしらしめたいと強く考えていた。
関係者が分析室に入り、まず、この棺を開けるために調査を始めた。ミッシェルは棺の各面の写真を取り、別室で文字の解読を始めた。昨日と同じようにレモンドはガラス張りの分析室の外から昨日と同じように作業を見ていた。その時、
「棺を一度持ち上げて、底も確認してみよう」
モーリスが声をかけて、調査助手のアランが
「わかりました。ジャンヌ外から、3人ほど連れてきてくれるか。100㎏ほどあるから5人ほどいないと持ちあがらないからな」
「はいわかりました。すぐに呼んできます」
そう言ってしばらくして、男性3人を連れてきた。アランは1段高い枠を持ってきて
持ち上げた後に、棺の底が良く見えるように準備した。
「それでは、持ち上げるぞ!」
「せ~の」
5人が思い切り力を入れて持ち上げた。
「危な~い!」
棺が軽すぎて、一瞬棺が宙に上がった。
「何をやってるんだ。棺がこわれたらどうするんだ」
モーリスは大きい声を出した。とりあえず、宙に上がった棺を受け止めて、準備した枠の上に置いた。
「何だこれ、軽すぎますよ!」
びっくりしたモーリスが
「そんなことがあるか!昨日、ある程度のデータを送ってもらった時には重量120㎏になっていたぞ。一晩で軽くなるわけないだろ!昨日、棺の搬入や清掃など関わった者はここにいるか」
アランとジャンヌはビクついて、アランは
「はい、私とジャンヌ、それと外にいるレモンド中佐とミッシェル博士は昨日いましたが」
持ち込まれた時には120㎏ほどあり、棺周辺の汚れを取っても100㎏ぐらいあった棺だったが
「誰かが、棺を開けて、中身を持ち去ったんじゃないのか。ここのセキュリティは世界でも有数の機能を持っているんだろ」
モーリスは自分が発見した遺物が誰かに持ち去られたことに怒りが収まらなかった。
「レモンド中佐!こっちに来てくれ!あと別室に行った、ミッシェルと、
今日はいないが、ロベールにも連絡を取ってくれ」
ジャンヌはアランに指示を受け、ミッシェルを呼びに行き、ロベールにも連絡を取ったが、
すぐには連絡がつかなかった。分析室に皆が集まると
「昨日、ここのカギをかけたのは誰だ?」
アランが答えた。
「私です。しかし、鍵の確認もここに常駐している、警備員も一緒に確認しています。
それと、昨晩から今朝まで、完全な時間のセキュリティがかかっていますので、鍵や認証があっても誰も開けることはできません。ですから、絶対にここにいる人以外だれもこの部屋には入っていません」
「本当にそうなのか」
「神に誓って!」
「じゃあなんで、60~70㎏重さが減ったんだ。みんな考えろ!」
モーリスはこの15年、なんの発見もなく、資金も底を付き、この発見で、もう一度、学会での発表やマスコミなど、表舞台にはばたこうと思っていた矢先、こんなことが起きて完全に興奮状態が収まらないようだった。そこでジャンヌが
「あの~、アランがさっき言った、ここにいる人以外というのはちょっと違うと思います」
「何!どういうことだ」
「はい、今朝、アランが準備のため、鍵を開けたあと、扉を開け放しにした時に、TV局の金髪女性の出演者が間違ってこの部屋に入ったと言っていました」
「出演者?」
「はい」
「ジャンヌ、この扉は常閉で開け放しにできない構造になっている。もし何かで押さえて開けた状態が10秒以上続くと警報がなるようになっている。しかも僕は必ず扉が閉まったのを確認してから、その場を離れるようにしている。だから、間違って入ることなどありえないんだ」
そこで、レモンド中佐が
「アラン、ここは防犯ビデオの撮影はしているのかな」
「はい、もちろん、4か所のあらゆる角度から撮影しています」
「それじゃあ、ここにいるみんなの身の潔白のため、ビデオを見せてくれるか」
「はい、すぐに準備します」
モニター室でのビデオの準備ができて、全員でそのビデオを見た。
「アラン、時間はそうだな。今朝の、9時ごろから見てみよう」
「わかりました。」
ビデオの視聴が始った。
45話
全員はびっくりした。そこには、まだ鍵を誰もあけていないのに
一人の金髪女性が分析室内に立っていた。
「なんだ、これは、どうやって入ったんだ」
レモンド中佐が声を出した。
「アラン、もう2時間もどしてくれるか」
「はい、わかりました」
また、そこにいる全員が驚いた。なんと2時間前の7時にもその女性は室内で立っていた。
ジャンヌは自分がこの女性のような生き物にだまされて、外に出してしまったとその時、はじめて気が付いた。しかも、今日、最初に鍵をあけたのはアランではなく、自分であるとわかり、
自分の対応が陳腐に思えた。そこで、モーリスが
「アラン、この際だ。早送りでいいから、昨日の搬入から、現在までを見せてくれるか」
「はい、わかりました」
モニター室は室内奥に大きな50インチほどのモニターがあり、それを20席ある席から
全員が見れるようになっている。
「それでは、昨晩21時の搬入後から、お見せします」
レモンド中佐は赤い球体の件がモーリスに露見してしまうが、軍や政府ではこのことを被害もないため軽視しているので、かまわないだろうと思った。ビデオでは昨晩同様、棺の清掃が行われ、清掃員が棺の突起物を拭き終わった直後、赤い球体が出現する様子が写し出された。
そこで、モーリスだけ、びっくりして
「なんだ、この赤い球体は、昨晩の世界中の騒ぎはここから発信されたのか!」
モーリスはその場所にいる人達にすごいことが起きてるぞといった顔つきで話しかけてきたが、モーリス以外はこのことをその場にいて知っていたため無反応だった。
「なんだ、こんな凄いことが起きたのに、なぜ、私に教えてくれなかったんだ」
ここにいる全員が無反応だった。そこでレモンド中佐が
「すみませんな。ここ、フランスから、こんなものが出たと知れたら、大変なことになるので
余計な口外しないようにしてただけですよ。モーリス博士だって、こんなことが世界で知られたら、自作自演で棺を発見したことにして、実は、妙な機械を作っていたなんて、世間に言われたら困るでしょ」
「まあ、そうだが、直接、連絡をくれてもよかったんじゃないか」
「もう過ぎたことは気にするのはやめましょう」
そして、しばらく、早送りが続き朝の4時過ぎに赤い球体が戻ってくる様子が映っていた。
それから、棺全体が赤く光り、30分ほどして、なんと棺があいたのだ。
「止めろ!」
レモンド中佐は大声をだした。
「ここからは普通に再生してくれ」
そして、棺全体の赤い光が収まり、棺のフタがゆっくりと開いた。
「プシュ~」
と音が鳴り、まるで、真空の棺内に空気が送り込まれるような感じだった。
フタが開いて数分後、先ほどの金髪の女性が棺の中から、ゆっくりと起き上がった。長い金髪に古代人が来ていたような服装で現代人とは少し違い、体や顔が少し大きいように見えた。
だが、透き通った白い肌に、彫りが深い顔つきで、まるで妖艶な美女といった感じだ。
それを見たモーリスが
「あっ!」
と声を出した。
「これは、今朝、ロビーで会った女性じゃないか」
レモンドやミッシェルも同調するように驚いた。
立ち上がった女性は、うまく体を動かせないのか、立ち上がったまま、目を閉じて、その場に立ち尽くしていた。
モーリスはやっと、棺が軽くなった原因がわかったのだが、これを誰にどう説明したらよいか
頭の中で整理がつかなかった。なにしろ、1万年以上前の地層に埋まっていた棺で、その中から生きた女性がでてきたなんて誰が信じるのか。そんな疑心暗鬼になっているところ、
レモンド中佐はすぐに自分のチームに連絡を取った。
「こちら、レモンドだ」
「はい、こちら、カミーユ大尉です」
「大尉、赤い球体の調査は中止として、本日9時40分ごろに国立考古学研究所から、脱走した身長180㎝ぐらいで髪は金髪、ローマ人のような白い服装をした女性の行方追って、捕獲してくれ。防犯カメラや衛星などを使ってかまわんから、至急チームを急行させてくれ」
「了解しました」
レモンド中佐はあれだけ、流暢にフランス語を話し、この世界にもかなり、慣れたようにしていた女性に驚きを感じえなかった。
『すぐに見つかればよいが』
とてつもない、不安と想像もできないようなことが起きなければよいが・・・と祈るような気持ちで今後の対応について考えることとした。
中佐からの連絡を受けたカミーユ大尉はすぐにチームに連絡をした。カミーユ大尉を含め
計5人からなるこの特殊科学部隊は特殊な案件を専門としたスペシャリストで、
表向きはこの部隊は存在していないが、フランス国を影でささえる優秀なチームだ。
カミーユ大尉、(チームリーダー)歴史・言語を専門、
ダニエル中尉、ITや機械工学専門、
ドニーズ中尉、政治・経済専門
アンナ軍曹(女性)武道・重火器のエキスパート、
ベルナール一等兵 上級士官の補佐、物資等補給要因
このチームは国内の数々の難しい事件・事故を調査・原因を突き止め、いくつも解決してきた。
「プ~、ガチャ、全員聞いているか」
「聞こえます」
「今、中佐から連絡があり、赤い球体の件は中止だ。本日、9時40分の国立考古学研究所から身長180cm、白人女性、金髪、ローマ人のような白い服装をしている者が研究所から脱走、大至急、生け捕りをするよう指示があった。ダニエルは防犯カメラや衛星を使って追跡、その情報を指示共有、ドニーズとアンナは至急、パリに向かって追跡してくれ、クロードは護送用の足の速い車を用意し、すぐにパリに急行して私と合流、いいか」
「了解!」
速やかにチームは動き出した。
そのころ研究所を出た、女性はこのパリの街並み、そして、たくさんの幸せそうにしている人たちを見ながら、かつて栄えていたアトランティスのことを思い出していた。
「この国はきれいなところだな。かつて栄えたアトランティスに近いものがある。だが、残念なことに、貧富の差が激しく、ところどころにいる物乞いをする者たちがどうしても目についてしまう。しかし、世界を見渡しても、だれも、世界という大きな視点で物事をみず、自分さえ良ければよいという考え方がはびこっている。資本主義は人に働く意欲は与えるが、世界のバランス・調和を考えることができなくなるシステムだ。まあ、私には関係ないが、どうも、いごこちが悪い気分になる」
パリを6時間以上、その女性は歩いて回り、夕方になり、パリのサンタンヌ通りを歩いていた時にものすごい勢いで大きな車が1台と乗用車が1台その女性の前で止まり、
4人の軍服を着た者たちがその女性を取り囲んだ。
「おとなしくしろ、これから、研究所に連行する」
大きな声でリーダーと思われる男がその女性に向かって叫んだ。その女性はその者たちを見渡し、慌てることもなく、
「なんですか。あなた達は、私をどこに連れていくんですか」
廻りにはたくさんの人達が物珍しさにたくさん集まってきた。その様子を見ながら
「やめてくださ~い。この人達、私を誘拐する気です。だれか~助けてください」
先ほどの落ち着いた女性から、急に変貌して、弱弱しい女性になった。
「何を言ってるんだ。大声を出さないで、我々と来るんだ!」
そう言って、その女性を軍人らしき人達が力づくで取り押さえた。
「助けて~、こわ~い、やめて~」
と泣きながら叫んだ。
日本人街として有名なこの通りで、早めのおいしい夕食を食べようとニコニコしていた、
若い男女3人がその様子を店の前から一部始終を見ていた。廻りの人は誰も助けることもできず、その若い女性に乱暴している軍人を見て、夕食を食べようとしていた女性がだんだん怒りがこみあげてきていた。そして、大きな声を出して、その場所に飛び出してきた。
パリフランス国立考古学研究所、ここでは、フランス国での重要な文化財や歴史的に重要な発見をした場合に必ずここで調査・研究がなされる国内唯一の機関である。所属している研究者は数多く、特に日本とは文明の調べる年代が違いかなり古い時代からの物も扱っている。だが、今回の棺においてはかつて扱ったことのない年代の遺物であり、さらに、どういった文明や人種が造ったのかわからないという特殊な案件である。
「やっと時間になりましたな」
レモンド中佐は発見者であるモーリス博士に声をかけた。
「そうですね。ですが、あなたは、あくまでも第三者の立場ですからね。余計なことを言われても、こちらは、かまわず進めていきますから」
「わかっています。邪魔はしませんので、ご安心を」
「モーリス、分析室にいきましょう」
古代文字を専門とするミッシェルは早く棺を調べたい衝動を抑えられない様子で声をかけた。
この男は小さい時から、未知の古代文明に憧れており、エジプトやメソポタミアの遺跡でも年代測定にかけた遺物の中で1万年以上前の物がかなり出てきているのに学会では説明がつかないため、その証拠に重きを置かず軽視してきたことに不満を持っていた。また、著名な学者による発表やなどで、1万年以上前の文明の存在を握りつぶすような動きもある。自分の発表した考えや内容が否定されれば、著名な学者は自分の権威が失墜するのを恐れていることもある。そのため、この男はこの棺の発見でこの世界の常識をくつがえし、正確な常識を世にしらしめたいと強く考えていた。
関係者が分析室に入り、まず、この棺を開けるために調査を始めた。ミッシェルは棺の各面の写真を取り、別室で文字の解読を始めた。昨日と同じようにレモンドはガラス張りの分析室の外から昨日と同じように作業を見ていた。その時、
「棺を一度持ち上げて、底も確認してみよう」
モーリスが声をかけて、調査助手のアランが
「わかりました。ジャンヌ外から、3人ほど連れてきてくれるか。100㎏ほどあるから5人ほどいないと持ちあがらないからな」
「はいわかりました。すぐに呼んできます」
そう言ってしばらくして、男性3人を連れてきた。アランは1段高い枠を持ってきて
持ち上げた後に、棺の底が良く見えるように準備した。
「それでは、持ち上げるぞ!」
「せ~の」
5人が思い切り力を入れて持ち上げた。
「危な~い!」
棺が軽すぎて、一瞬棺が宙に上がった。
「何をやってるんだ。棺がこわれたらどうするんだ」
モーリスは大きい声を出した。とりあえず、宙に上がった棺を受け止めて、準備した枠の上に置いた。
「何だこれ、軽すぎますよ!」
びっくりしたモーリスが
「そんなことがあるか!昨日、ある程度のデータを送ってもらった時には重量120㎏になっていたぞ。一晩で軽くなるわけないだろ!昨日、棺の搬入や清掃など関わった者はここにいるか」
アランとジャンヌはビクついて、アランは
「はい、私とジャンヌ、それと外にいるレモンド中佐とミッシェル博士は昨日いましたが」
持ち込まれた時には120㎏ほどあり、棺周辺の汚れを取っても100㎏ぐらいあった棺だったが
「誰かが、棺を開けて、中身を持ち去ったんじゃないのか。ここのセキュリティは世界でも有数の機能を持っているんだろ」
モーリスは自分が発見した遺物が誰かに持ち去られたことに怒りが収まらなかった。
「レモンド中佐!こっちに来てくれ!あと別室に行った、ミッシェルと、
今日はいないが、ロベールにも連絡を取ってくれ」
ジャンヌはアランに指示を受け、ミッシェルを呼びに行き、ロベールにも連絡を取ったが、
すぐには連絡がつかなかった。分析室に皆が集まると
「昨日、ここのカギをかけたのは誰だ?」
アランが答えた。
「私です。しかし、鍵の確認もここに常駐している、警備員も一緒に確認しています。
それと、昨晩から今朝まで、完全な時間のセキュリティがかかっていますので、鍵や認証があっても誰も開けることはできません。ですから、絶対にここにいる人以外だれもこの部屋には入っていません」
「本当にそうなのか」
「神に誓って!」
「じゃあなんで、60~70㎏重さが減ったんだ。みんな考えろ!」
モーリスはこの15年、なんの発見もなく、資金も底を付き、この発見で、もう一度、学会での発表やマスコミなど、表舞台にはばたこうと思っていた矢先、こんなことが起きて完全に興奮状態が収まらないようだった。そこでジャンヌが
「あの~、アランがさっき言った、ここにいる人以外というのはちょっと違うと思います」
「何!どういうことだ」
「はい、今朝、アランが準備のため、鍵を開けたあと、扉を開け放しにした時に、TV局の金髪女性の出演者が間違ってこの部屋に入ったと言っていました」
「出演者?」
「はい」
「ジャンヌ、この扉は常閉で開け放しにできない構造になっている。もし何かで押さえて開けた状態が10秒以上続くと警報がなるようになっている。しかも僕は必ず扉が閉まったのを確認してから、その場を離れるようにしている。だから、間違って入ることなどありえないんだ」
そこで、レモンド中佐が
「アラン、ここは防犯ビデオの撮影はしているのかな」
「はい、もちろん、4か所のあらゆる角度から撮影しています」
「それじゃあ、ここにいるみんなの身の潔白のため、ビデオを見せてくれるか」
「はい、すぐに準備します」
モニター室でのビデオの準備ができて、全員でそのビデオを見た。
「アラン、時間はそうだな。今朝の、9時ごろから見てみよう」
「わかりました。」
ビデオの視聴が始った。
45話
全員はびっくりした。そこには、まだ鍵を誰もあけていないのに
一人の金髪女性が分析室内に立っていた。
「なんだ、これは、どうやって入ったんだ」
レモンド中佐が声を出した。
「アラン、もう2時間もどしてくれるか」
「はい、わかりました」
また、そこにいる全員が驚いた。なんと2時間前の7時にもその女性は室内で立っていた。
ジャンヌは自分がこの女性のような生き物にだまされて、外に出してしまったとその時、はじめて気が付いた。しかも、今日、最初に鍵をあけたのはアランではなく、自分であるとわかり、
自分の対応が陳腐に思えた。そこで、モーリスが
「アラン、この際だ。早送りでいいから、昨日の搬入から、現在までを見せてくれるか」
「はい、わかりました」
モニター室は室内奥に大きな50インチほどのモニターがあり、それを20席ある席から
全員が見れるようになっている。
「それでは、昨晩21時の搬入後から、お見せします」
レモンド中佐は赤い球体の件がモーリスに露見してしまうが、軍や政府ではこのことを被害もないため軽視しているので、かまわないだろうと思った。ビデオでは昨晩同様、棺の清掃が行われ、清掃員が棺の突起物を拭き終わった直後、赤い球体が出現する様子が写し出された。
そこで、モーリスだけ、びっくりして
「なんだ、この赤い球体は、昨晩の世界中の騒ぎはここから発信されたのか!」
モーリスはその場所にいる人達にすごいことが起きてるぞといった顔つきで話しかけてきたが、モーリス以外はこのことをその場にいて知っていたため無反応だった。
「なんだ、こんな凄いことが起きたのに、なぜ、私に教えてくれなかったんだ」
ここにいる全員が無反応だった。そこでレモンド中佐が
「すみませんな。ここ、フランスから、こんなものが出たと知れたら、大変なことになるので
余計な口外しないようにしてただけですよ。モーリス博士だって、こんなことが世界で知られたら、自作自演で棺を発見したことにして、実は、妙な機械を作っていたなんて、世間に言われたら困るでしょ」
「まあ、そうだが、直接、連絡をくれてもよかったんじゃないか」
「もう過ぎたことは気にするのはやめましょう」
そして、しばらく、早送りが続き朝の4時過ぎに赤い球体が戻ってくる様子が映っていた。
それから、棺全体が赤く光り、30分ほどして、なんと棺があいたのだ。
「止めろ!」
レモンド中佐は大声をだした。
「ここからは普通に再生してくれ」
そして、棺全体の赤い光が収まり、棺のフタがゆっくりと開いた。
「プシュ~」
と音が鳴り、まるで、真空の棺内に空気が送り込まれるような感じだった。
フタが開いて数分後、先ほどの金髪の女性が棺の中から、ゆっくりと起き上がった。長い金髪に古代人が来ていたような服装で現代人とは少し違い、体や顔が少し大きいように見えた。
だが、透き通った白い肌に、彫りが深い顔つきで、まるで妖艶な美女といった感じだ。
それを見たモーリスが
「あっ!」
と声を出した。
「これは、今朝、ロビーで会った女性じゃないか」
レモンドやミッシェルも同調するように驚いた。
立ち上がった女性は、うまく体を動かせないのか、立ち上がったまま、目を閉じて、その場に立ち尽くしていた。
モーリスはやっと、棺が軽くなった原因がわかったのだが、これを誰にどう説明したらよいか
頭の中で整理がつかなかった。なにしろ、1万年以上前の地層に埋まっていた棺で、その中から生きた女性がでてきたなんて誰が信じるのか。そんな疑心暗鬼になっているところ、
レモンド中佐はすぐに自分のチームに連絡を取った。
「こちら、レモンドだ」
「はい、こちら、カミーユ大尉です」
「大尉、赤い球体の調査は中止として、本日9時40分ごろに国立考古学研究所から、脱走した身長180㎝ぐらいで髪は金髪、ローマ人のような白い服装をした女性の行方追って、捕獲してくれ。防犯カメラや衛星などを使ってかまわんから、至急チームを急行させてくれ」
「了解しました」
レモンド中佐はあれだけ、流暢にフランス語を話し、この世界にもかなり、慣れたようにしていた女性に驚きを感じえなかった。
『すぐに見つかればよいが』
とてつもない、不安と想像もできないようなことが起きなければよいが・・・と祈るような気持ちで今後の対応について考えることとした。
中佐からの連絡を受けたカミーユ大尉はすぐにチームに連絡をした。カミーユ大尉を含め
計5人からなるこの特殊科学部隊は特殊な案件を専門としたスペシャリストで、
表向きはこの部隊は存在していないが、フランス国を影でささえる優秀なチームだ。
カミーユ大尉、(チームリーダー)歴史・言語を専門、
ダニエル中尉、ITや機械工学専門、
ドニーズ中尉、政治・経済専門
アンナ軍曹(女性)武道・重火器のエキスパート、
ベルナール一等兵 上級士官の補佐、物資等補給要因
このチームは国内の数々の難しい事件・事故を調査・原因を突き止め、いくつも解決してきた。
「プ~、ガチャ、全員聞いているか」
「聞こえます」
「今、中佐から連絡があり、赤い球体の件は中止だ。本日、9時40分の国立考古学研究所から身長180cm、白人女性、金髪、ローマ人のような白い服装をしている者が研究所から脱走、大至急、生け捕りをするよう指示があった。ダニエルは防犯カメラや衛星を使って追跡、その情報を指示共有、ドニーズとアンナは至急、パリに向かって追跡してくれ、クロードは護送用の足の速い車を用意し、すぐにパリに急行して私と合流、いいか」
「了解!」
速やかにチームは動き出した。
そのころ研究所を出た、女性はこのパリの街並み、そして、たくさんの幸せそうにしている人たちを見ながら、かつて栄えていたアトランティスのことを思い出していた。
「この国はきれいなところだな。かつて栄えたアトランティスに近いものがある。だが、残念なことに、貧富の差が激しく、ところどころにいる物乞いをする者たちがどうしても目についてしまう。しかし、世界を見渡しても、だれも、世界という大きな視点で物事をみず、自分さえ良ければよいという考え方がはびこっている。資本主義は人に働く意欲は与えるが、世界のバランス・調和を考えることができなくなるシステムだ。まあ、私には関係ないが、どうも、いごこちが悪い気分になる」
パリを6時間以上、その女性は歩いて回り、夕方になり、パリのサンタンヌ通りを歩いていた時にものすごい勢いで大きな車が1台と乗用車が1台その女性の前で止まり、
4人の軍服を着た者たちがその女性を取り囲んだ。
「おとなしくしろ、これから、研究所に連行する」
大きな声でリーダーと思われる男がその女性に向かって叫んだ。その女性はその者たちを見渡し、慌てることもなく、
「なんですか。あなた達は、私をどこに連れていくんですか」
廻りにはたくさんの人達が物珍しさにたくさん集まってきた。その様子を見ながら
「やめてくださ~い。この人達、私を誘拐する気です。だれか~助けてください」
先ほどの落ち着いた女性から、急に変貌して、弱弱しい女性になった。
「何を言ってるんだ。大声を出さないで、我々と来るんだ!」
そう言って、その女性を軍人らしき人達が力づくで取り押さえた。
「助けて~、こわ~い、やめて~」
と泣きながら叫んだ。
日本人街として有名なこの通りで、早めのおいしい夕食を食べようとニコニコしていた、
若い男女3人がその様子を店の前から一部始終を見ていた。廻りの人は誰も助けることもできず、その若い女性に乱暴している軍人を見て、夕食を食べようとしていた女性がだんだん怒りがこみあげてきていた。そして、大きな声を出して、その場所に飛び出してきた。
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