平和への使者

Daisaku

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フランス2

51話 天空の閃光

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「はあ~、やっと着いたね」

ゲートを入り、1kmほど入ったところに軍の建物があった。その周りは広大な敷地を有し、地平のかなたまで基地の敷地があるのではないかと思うぐらい広かった。時代を感じさせるその古めかしい軍の建物は歴史ある、威厳のある建物のように、そこに存在していた。マリ達が車から降りた時に10人ぐらいの軍服を着た人たちが笑顔で並んで立っていた。

「あれ、皆さん、どうされました?こんなところで?」

「ようこそ、おいでくださいました、マリ・トビシマ様」

「はい、おはようございます。取調室まで、案内してもらえますか?」

「取調室?そんなところにはご案内しません。この度は、私共の不手際で、こんなところまで、お呼びだてして申し訳ありません」

「お呼びだて?私は軍の命令で絶対に本日10時にここに来いと言われ、強制的に連れて来られたんですけど」

「申し訳ございません。今回の事件の担当責任者のマリアと言います。それと私と同じ審問官が3名と、今回事件を起こした部隊の責任者ドニーズ将軍・レモンド中佐以下3名です。我々軍の起こした事件であり、マリさんはそれを止めていただいたわけですから、こちらからは何もお聞きするようなことはありません」

「じゃあ、なんで呼んだんですか?私だって色々と用事があるんですよ」

マリは急に機嫌が悪くなった。ユウキ達もなんだか急にこの軍の関係者の態度が弱腰になったことを不思議に思った。そこでユウキは悟ったように

「マリ、簡単なことだよ。そちらにいるマリアさん達がマリのことを普通の少女と考え、いつも通り、軍の権力を使い、上から見下して、呼びつけたんだよ。おおかた、大統領、もしくはアベルさんにそのことがばれて、怒られて、なんとか、許してもらおうと、泣きついてきているんだよ」

イブも

「マリ~、ほら見てごらん、この軍人たち、こわそうな顔なのに無理やり笑顔を作っているから、すごく気持ち悪いじゃない」

「たしかに、こわいよね。逆に」

同行している葉子も

「こちらとしては、強制的で威圧的だった、フランス軍に対して、今回の件は許すわけにはいきません。マリさんは高校1年生ですが、日本国では政府高官の地位にあり、なにも悪いことをしていないのに、あなた達から無理やり、連れてこられたわけですから、もう本国にも詳細は連絡済みです。恐らく、貴国に対して、それ相応のペナルティーがあることを認識してください」

マリはそんな話の最中、建物の横から、戦闘機の先端が見えたのに気が付いた。

「うわあ、戦闘機、あれは、ダッソーラファールだ~すご~い、すごすぎる!」

レモンド中佐はマリが戦闘機が好きそうなのを見てすかさず

「マリさん、戦闘機がお好きなんですか?」

「はい、大好きです。おばあちゃんの影響で小さい時から、あらゆる武器から戦闘機までいろいろと教わってきましたから」

「そうなんですか。よかったら近くでご覧になりますか」

「え~、いいんですか。うれしい~、お願いします」

膨れ顔だった、マリが急にご機嫌になり、マリア審問官。将軍をはじめ、レモンド中佐にもっとご機嫌を取れと目で合図をした。
建物から少し離れたところに格納庫があり、そこに案内された。そこには8機ほどの戦闘機が置かれ、本日は雨のため、格納庫にて整備などを行っていた。

「すご~い、ミラージュもありますね」

マリはご機嫌で戦闘機を眺めた。

「すみませ~ん、あの奥にシートをかぶっているのはもしかして、最新型のF15ーXではないですか?アメリカから買ったんですか?」

レモンド中佐はちょっと見ただけで、機体の種類までわかるマリに驚いた。

「その通りです。公表はされていないんですけど、フランスが今年3機購入したんですよ。その1機がここにあるんです」

「うわあ~いいな~かっこいいな~」

ユウキやイブ、葉子などマリがこんなに嬉しそうにしているのをはじめて見た。

「え~と、レモンド中佐、私も日本の基地でF15のシュミレーターで最高評価をもらい、いつでも、操縦できる資格も取っているんですよ」

「それはすごい、ハハハ、マリさんはもうなんでもありですな。そうだ、良かったら、別の格納庫に訓練用の複座式のF15があります。乗ってみますか?」

「え~、いいんですか。ぜひお願いします。」

すぐに移動用の車が用意され、ここにいる全員で別の格納庫に移動した。少し、古くなった格納庫の前に着き、入り口の大きなスライド扉が開いた。

「ここは、訓練用の戦闘機を置いています。さきほどのラファールなど、新人用に改良された、すべて複座式の訓練用戦闘機になります」

「すご~い、こんなに訓練機を置いているところなんて、あまりないですよね」

「そうですね。ほかの国はどうかわかりませんが、わがフランスは世界でも誇れる戦闘機を数多く開発していますから、新人の教育にとても力を入れているんですよ」

「いいことですね」

「マリさん、今日はあいにくの大雨のため、戦闘機を飛ばすことはできませんが、操縦席などに乗っていただいても大丈夫ですから、ここにある戦闘機はすべて訓練用ですから、お好きな機体にどうぞお乗りください」

「ヤッタ~」

マリは次から、次へと色々な機体に乗り込み、思い切り楽しんでいた。そんな時に少し落ち着きを取り戻し、皆が自分に付き合っている状況に気づき

「ごめんなさい、私ひとり、楽しんでしまって」

「いえいえ、ぜんぜん構いませんよ。我々は」

レモンド中佐はなんとか、マリの機嫌を取り、今回の件の許しをもらい、将軍の処分も帳消しにしようと必死だった。

「でも~このF15は飛ばしてみたかったな。今日がこんな天気でなかったらな~」

マリがくやしそうにしているところにイブがニコニコして近づいてきて

「マリ、この戦闘機飛ばしたいなら、私が手伝うよ」

「手伝うって、どうやって?」

「マリが私に指示を出せば、従者である私はその指示を全力で果たします。だから、この雨をなんとかしてと言ってください」

マリはイブが何を言っているのといった顔で何気なく

「イブ、この大雨を止めて、天気にしてくれる?」

「承知しました。マスター」

イブはまた、片膝をついて両腕を広げ、一礼をして、しばらくして、大雨の外に飛び出した。

「レモンド中佐と言ったな。どれくらいの広さが晴れれば、その戦闘機は飛べるんだ!」

レモンドは何を言っているんだと首をかしげ、

「なにを考えているかは知らんが、この滑走路とそうだなこの上空10km四方が晴れれば、すぐに雲の上に出れるから、問題ないだろう」

「あと、どれくらいの時間晴れてればいいんだ」

「そうだな。はじめて実戦機体に乗るんだから、飛行時間は15分程度だろう、それと準備に15分かかるから計30分といったところだ」

「わかった。おい、ムー人、聞いてたな。その範囲の上空で生物や飛行機など、サーチして私に情報をよこせ!」

ユウキはふくれ顔で

「サターン人の指示になんで僕が従わなくちゃいけないんだ」

「めんどくさい奴だな。全く、マリ~、このムー人に指示を出してください」

マリはどうなってるのといった顔で、

「ユウキくんイブの指示に従って、教えてあげて」

「了解した。サーチを開始する」

レモンド中佐をはじめ、ここにいる人達はこの3人の行動を見つめていた。演技にしては随分、手の込んだ内容だなとも思った。

「お~い、サターン人、上空にランディングに入っている機体がある50秒後に離脱予定、それから、
10分は何も障害なし」

「了解、ブラストショット準備中・・・・」

そうイブが発した途端イブの足元から赤い光が発せられ徐々に足元から上半身へとその光は上がっていった。だんだん光が増していき、全身がまぶしいくらいに赤く光ってきた。
イブは両手を空に向けて、数分後に強烈な光を両手から発した。

「キ~ン、バシュ~」

ものすごい爆音と風圧がイブを中心に巻き起こった。皆はまぶしくて目を開けていられず目を閉じた。
数秒後にその光はなくなった。

「マリ~、指示通り晴天になったよ」

皆はその声を聞いて、閉じていた、目を開けた。そこにはなんと、上空に雲一つない世界が広がっていた。

「イブ~、すご~い、すご~い」

マリは歓喜の声を出した。そこに立ち会っていた、マリアや将軍、レモンド中佐、葉子、クロード達はとんでもない瞬間を見たことに驚愕した。特に棺から出てきたことを信じていなかった者達にはそれを信じるべき出来事だったといえよう。

「中佐!早く準備しろ、30分したら、また、雨が降ってくるぞ」

レモンド中佐は驚きのあまり、すぐに声が出なかった。しばらくして

「マリさん、F15訓練機は私が同乗しますので、そうすれば、何かあっても、私の方で対応しますから、よろしいですか」

「はい、お願いします」

「将軍、将軍!いいですよね」

ドニーズ将軍も信じられない出来事にぼ~としていたが、

「おう、そうだな、中佐が同乗するのであれば問題ないだろう」

その言葉を確認してすぐに

「マリさん、それでは向こうにフライトスーツと耐Gスーツがありますので着替えてください」

「お~い、そこの女性警護官、向こうでマリさんの着替えを手伝ってくれ」

「はい、わかりました」

「カミーユ大尉、向こうの格納庫にいる整備士に声をかけて、すぐにこのF15の発信準備をさせてくれ、15分後に離陸する」

「了解しました」

カミーユは急いで、隣の格納庫に向かった。ドニーズ将軍はこの出来事を目のあたりにして、
マリさん達の許しをもらうのもそうだが、なんとか、このフランスに留まっていただき、犯罪や紛争テロ、誘拐事件や行方不明者の捜索など、協力いただき、そして、この方たちがいれば、わがフランスはアメリカを凌ぐ、経済大国に発展することもできるのではないかと、考えてしまった。
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