平和への使者

Daisaku

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フランスの友達

107話 パスカルの訪問

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八月に入り、夏休みも本番、ヘンリ高校のパスカルは姉のセリーヌが仕事が休みの日に合わせて、
再度、マリ達が入って行った、警備会社社長が所有している豪邸に向かった。

「姉さんは仕事に遊びに忙し過ぎるんじゃないの?」

「あんたね、人生なんて、すぐに終わっちゃうのよ、だから、精一杯生きないとだめよ」

「本当はもっと早く、ここに来たかったのに、姉さんが空いている日に合わせたから、
随分時間がたっちゃったよ」

「いいじゃない別に、少し時間が過ぎた方が向こうも警戒しないわよ。
それで、どうするのよあんた」

「それは、もう考えているよ。マリもそうだけど、ユウキやイブも学校ではかなり男女に
人気があるからね。今度の土曜日にあの豪邸でパーティーをやるといえば、かなり、
みんな集まると思うんだよね」

「ふ~ん、そんなにうまくいくかしら。
だいたい、あんた、あの3人とそんなに親しくないんでしょ」

「でも、同じクラスだし、特にマリは、友達を作りたいと、
よく話していると聞いたこともあるしね」

そんな会話をしているうちにセリーヌの車で豪邸についた。

「相変わらず、すごいわね。ブルボン王朝の貴族が住んでいたこともあり、
すごい、庭園と建物よね。本当にここに、あの子達が住んでいるのかしら?」

「まあ、聞いてみれば、すぐにわかるよ」

大きな門の前に止めた車の中でそんな話をしていた時に特殊なインターホンから、

「どちら様ですか?当家にご用ですか?」

とても大きな豪邸に、似つかわしくないプジョーの小型車しかも中古の車が止まったため、
この建物を任されているフィルマンは不審者ではないかと、すぐに確かめた。
その声に驚いたパスカルは

「ボンジュール、僕はマリやイブ、ユウキと高校の同じクラスのパスカルと言います。
少し、話がしたくてここに来ました」

「高校生ですか。ここには高校生は住んでいませんよ。お間違いではありませんか」

「いいえ、ここに入るのを偶然にも見かけましたから、間違いありません」

「そうですか。それでは、確認してきますから、少々お待ちください」

そう言って、インターホンは切れた。

使用人のフィルマンは昨日遅くに帰ったポーラに確認を取るために部屋に向かった。

「コンコン・・・、お嬢様、お客様と思われる方が来ておりますが、ご確認をお願いできませんか」

昨晩、ポーラはイブとパリの行きつけのお店でお酒を飲みすぎて、
朝10時過ぎだというのに、今日は非番のため、まだ、ぐっすり眠っていた。

「お嬢様、どうされました。まさか、寝てませんよね。ご主人様から、休みでも、
9時を過ぎても寝ていた場合は、おかまいなしに起こすように言われてますから、失礼します」

「バタン」

フィルマンが大きな扉を開けて寝室に入ると、奥のベットで、気持ちよさそうにポーラは寝ていた。

「お嬢様、10時ですよ。起きてください」

フィルマンの声がまるで聞こえていないのか、ポーラはまだ完全に寝ていた。
フィルマンは、こんなことに慣れているのか、小さな笑みを浮かべ、
ポーラが一番反応する耳に氷水を数滴たらした。

「ポトン・・・」

ポーラは驚いて

「キャー、やめて・・・」

よくわからないが、ポーラの体はケイレンを起こし、完全に目が覚めた。

「もう、フィルマン、それやめて、体がおかしくなっちゃうじゃない」

「お嬢様、そんなことより、お客様がお見えです」

「お客?」

「はい、マリ、イブ、ユウキさんと同級生だと言っています。ご存じですか?」

ポーラは驚いた顔で、

「同級生?あ~この間の尾行してきた子かあ~」

ポーラは少し考えて

「フィルマン、とりあえず、マリ達に連絡を取るから、ロビーの奥のサロンに案内してくれる。
少ししたら、私が相手をするから」

「わかりました。ですが、お嬢様、最近、よく外食やお酒を飲まれてるようですが、お給料がなくなってしまわないように考えて行動してください。ご主人様も心配されていますから」

「わかっているわ。でもね、いつも友達が全部、お金はだしてくれるから心配しないで、あ、友達と言っても女性だからね」

「お嬢様、あまり、その女性に依存しないようにしてください。当家のお嬢様という自覚を決してお忘れないように」

「も~う、わかっているわ」

フィルマンは扉を閉めて、出て行った。

「フィルマンは、本当に口うるさいんだから、あっと、マリは、たしか、今日もベルリンに行っているからな~、電話に出てくれるかしら」

ポーラは着替えをしながら、ブツブツと独り言を言いながら、身なりを整えていった。
ポーラの部屋は寝室の他にもリビングや居室、リラックスルーム、
そして、ウォーキングクローゼットもとても大きく部屋全体が服や靴などがあり、
化粧ルームもあり、あちこちに動き回りながら、身なりを整えた。
そして、ベルリンにいるイブに連絡した。

「プルルルル、ポーラか、どうした、今日は休みじゃないのか?」

「イブ、昨日はありがとうね。いつも、ごちそうになってごめんね」

「またか、地球人は何度もお礼を言うのが好きなんだな。それは昨日聞いたから、今日、言う必要はないだろ。なにかあったのか?」

「イブ、マリは近くにいる?あ~マリ、今ドイツの首相と話をしているよ」

「首相!」

「あ~そうだ、難民問題やテロ組織の壊滅や環境問題の改善など、あっというまにドイツでの仕事も終わり、どうしても、マリにお礼が言いたいとか言ってな」

「そうですか。それじゃあ、まだ、時間がかかりそうですね。困ったな」

「どうしたんだ?」

「今、マリの同級生がウチに来ているんですよ。3人に話があるみたいで」

「そうか、なら、ポーラが話を聞いておいてくれ、それを聞いて、あとで、マリに確認して連絡をするから」

「わかったわ。それじゃあ、聞いておくね」

「よろしくな」

そう言って連絡が切れた。

ポーラは相変わらず、イブはさっぱりした回答だなと思い、下の階にあるサロンに行った。
扉を開けると、高校生ぐらいの男の子と、自分と同じ年位の大人の女性がいた。

「ボンジュール、私はポーラよ」

「ボンジュール、パスカルと言います」

「わたしは、パスカルの姉のセリーヌです」

「今日はどうしました?」

「先日、ここにマリやイブ、ユウキが入るのを見まして、話がしたくて伺いました」

「あら、そうなの、残念ね。今日は3人共、出かけているわ。
良かったら、代わりに私が話を聞くけど」

「そうですか。どうしようかな。あの~ポーラはマリ達と家族なんですか?」

「違うわよ。マリとは仲の良い友達よ。ユウキもイブもそうだけど」

「ここに住んでいるんですか?」

「住んでないわ。たまに遊びに来るのよ」

「そうなんですか」

パスカルはしばらく考えた様子で

「パスカル、考えたってしょうがないでしょ。言いたいことを早く言いなさいよ」

セリーヌはマリ達がいないんなら、ここにいてもしょうがないといった感じで

「そうだね。それならポーラできれば、クラスの子達とここで、
パーティーをさせてもらいたいんだけど、できれば、今度の土曜日に」

「パーティー?」

「はい、だめでしょうか。マリもそうですけど特にイブやユウキはクラスの男女に
とても人気があり、かなりたくさんの人がここに集まれると思うんですけど」

ポーラは笑いながら、

「いいわよ。マリ達に伝えとくわね。私は別に、土曜日にここでパーティーを
することはかまわないけど、マリ達は忙しいから、予定が空いているといいけどね」

「そんなに、忙しんですか?いつも3人は何をしているんですか?
それとどこに住んでいるんですか?」

「それはね、個人情報だから、本人に直接聞いて、それじゃ、パスカル連絡先だけ教えて、
明日にでも連絡するわ」

「はい、よろしくお願いします」

パスカルはうれしそうに答えた。
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