黒猫と異世界転移を楽しもう!

かめきち

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第1章 異世界転移と旅立ち

第12話 ゴブリンVS調査隊

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 いつでも魔法を放てるようにしてアリスと待機していると、合図でもある矢がゴブリンの首へ命中し、小さくうめき声を上げると崩れ落ちた。

 《アリス。行くぞ》

 (はい。)

 アリスと飛び出し、おれ達の方向を向いているゴブリンに次元刀で首の切断を狙う。 アリスは風魔法のウインドカッターを放つ。
 事前に打ち合わせた通り、おれは右側から、アリスは左側からだ。
 3匹いたので、真ん中のゴブリンはほぼ同時に魔法を放つ。

 3匹のゴブリンが魔法で倒れて行くのを見ながらも近づいて行くと、左右からも弓矢が飛んできてあと1匹ずつのゴブリンを倒した。
 
 その時ゴブリン達はようやく襲撃に気付き武器を手に取り「ギャギャ」と何かを話し始めた。

 ゴブリンが武装しようとしている最中に、敵の後方からガイム達が攻撃を仕掛け、2人で1匹を危なげなく倒した。

 《後はホブゴブリン1匹とゴブリン1匹だな。》

 (そうですね。けど油断は禁物です!)

 《了解。アリスは周囲の警戒を続けてくれ。》

 (分かりました。)

 すでにホブゴブリンとゴブリンが装備を整え戦闘態勢を取っている。
 それを取り囲む5人と1匹、弓を持つ2人は矢を番えて狙いを定めたままだ。

 「いくぞ!!」

 ガイムの声でみんな動き出しまず矢が2本左右から放たれたが、ゴブリンの左からに肩に刺さり、ホブゴブリンを狙った矢は錆びた盾に弾かれた。
 同時にガイム等は計画通りホブゴブリンの前に立つ。
 
 おれは残りのゴブリンに向かって剣を振る。
 肩が痛むのだろう、錆びたショートソードでは受けきれない。
 2回目の袈裟懸けでゴブリンとの勝負はついた。

 (気配察知には目の前のホブゴブリンしか反応はないので、あとはホブゴブリンのみです。)

 アリスの気配察知の方が検索範囲が広いので、この場はアリスに任せて目の前に集中する。

 ホブゴブリンはガイム達の攻撃を上手く盾でそらしながら、少しずつ攻撃に移っていく。

 《ゴブリンとは全く違うな、ガイム等が少し苦戦しているみたいだな。》

 (上位固体になると前の存在とは違うと思ってください。 加勢をするなら巻き込まない様に魔法は止めて剣での攻撃が良いかと思われます。 十分に注意を!)

 ガイム達と挟む様に立ち、3人で囲んで攻撃を始めると、さすがのホブゴブリンも避けきれなくなり、細かい傷が出来始めた。
 ガイム達に飛び掛って活路を見出そうとするホブゴブリンの隙を見逃さず、おれの剣が止めとなった。

 「ふ~、みんなお疲れ様。 みんな無傷で討伐できたな。」

 「ああ、気配察知で確認したが、この周辺にはもう魔物はいないようだ。」

 「それは良かった。 手伝ってくれてありがとうヤスト。 このゴブリン達がいたから、森がざわついたんだろうな。 魔石だけとって処分して帰ろう。」

 ガイムの指示でゴブリン達から魔石を取り出し、一箇所に集めて死体を燃やし帰路に着いた。



 村に帰りついた後、ガイム達は村長への報告、おれとアリスは疲れが出たので宿に戻ることにした。

 《初めての多数対多数は緊張したな、アリスは大丈夫か?》

 (私は大丈夫ですよ。 ヤストは夕食まで時間があるのでゆっくり休んでいてください。)

 そう言われてベットに横になると、アリスが肩に寄りかかってくれたので、体温を感じながら眠りに着いた。

 「ヤストさん、夕食が出来たよ。」

 マールの呼び声で目が覚めた時には疲労もほとんど無く、顔を洗った後に食堂へと向かうと、ガイムも食堂にいて夕食を一緒に食べるようだった。

 「ヤスト、今日は本当にありがとう。 手伝ってもらったお蔭でみんな無傷で済んだよ。 村長からも礼を言っておいて欲しいと言われているよ。」

 そう言いながら頭を下げるガイム、

 「いや、おれが付いて行くって言い出したのだし、いい経験になったよ。」

 「そう言ってもらえれば助かる。 報酬は支払えないがせめて魔石をもらってくれ。」

 机の上にゴブリンの魔石より一回り大きいホブゴブリンの魔石を置きながら再度頭を下げた。

 「分かった。 もらっておくよ。」

 ポケットに魔石を入れて、食事を始める。
 いつもの通り、アリスは隣のイスの上で分けられた食事をチマチマと食べ始めた。

 「なぁヤスト、しばらくはこの村にいるのか?」

 「それも考えていたんだが、ここ以外もいろいろ見て行きたいと思っているんだ。 次は町に向かってみようかと思う。」

 (私もそろそろと考えていました。)

  アリスの同意が得られたし、何より村以外の世界も見てみたいし、いろいろな物も見てみたい、冒険者にもなってみたい。 してみたい事は山ほどある。
 
 「明日はゆっくりして、明後日の朝早くには出発しようと思っている。」

 「そうか、少し寂しくはなるがまた戻ってきて旅の話を聞かせてくれ。」

 その日は、久しぶりのアルコール(エール)を3人で飲み(途中でマールも加わっていた)少し酔っ払いながらも、出会いを楽しんで就寝した。


 翌朝、マールにあと一泊をお願いし1銀貨を渡し、5鉄貨を受け取る。
 ついでにガイムから聞いていた町の場所と詳細を訪ねる。

 町の名前はカリーナ。 5000人程が暮らす比較的大きな町だ。 宿屋や店はもちろん冒険者ギルドや商業ギルドも備わっており、領主のマクミランがその町を治めている。  以前に聞いた通り徒歩で5日程度の距離みたいだ。

 次に明日からの準備の為に雑貨屋に向かうとマーサに話しかけられた。

 「あんた、昨日の調査隊の事はありがとうね。マールにも聞いたけど、明日旅立つんだって?」

 「いえいえ、自分の好きにしたことですから。 明日の朝に出発しようと思ってます。 今日はその旅の分の食料とかを買いに来ました。」

 「そうかい、寂しくなるし売り上げが減るねぇ。」

 ニヤッと笑いながら見つめられ、売り上げが減る方が本音だなと思いながら買い物をしていく。

 保存の効く固いパン × 20個
 干し肉       × 20個
 ドライフルーツ   × 20セット
 追加の水袋     ×  3個
 柔らかいパン    ×  5個
 野菜(ジャガイモ・にんじん・玉ねぎ)それぞれ5キロ
 小麦粉 20キロ
 フライパンや鍋の調理器具
 調味料一式

 をカウンターに持っていく。

 「こんなに買ってくれるのは嬉しいけど、持ち運びは大丈夫かい?」

 「あぁ、アイテムボックス持ちなんですよ。 内緒にしてて下さいね。」

 「そうだったのかい? 今度は服も一式入れとかないとね」

 最初の出会いを覚えていて、またニヤっと笑われた。
 恥ずかしそうに返事をして、服を一式と、肩から掛けるカバンをもう1つ買うことにした。

 「108700クローナだけど、調査隊も手伝ってくれたし、10万クローナでいいよ。」

 「ありがとう。 また村に来たときはよらせてもらうよ。」

 そう言いながら、10銀貨を渡して雑貨屋を出た。

 《アリス、準備はこんなもんかな? 後はゆっくりでもいいが、少しレベルを上げに行っておこうかと思うんだが?》

 (準備は大丈夫です。ゆっくりも良いですが、ヤストのいう通りレベル上げに行きましょう。 村周辺の魔物を少しでも減らせますからね。)

 アリスにおれの考えが分かってしまっていたけれど、夕方まで村の外でゴブリンやホーンラビットを討伐し、夕食に狩ってきたホーンラビットを丸焼きにしてもらい、ガイムやマーサ・マールのみんなで美味しく食べた。

 《こののんびりした村が異世界の初めで良かったよ。 けど、こうやって異世界を普通に渡っていけるのもアリスがいてくれるからだよ、本当にありがとう。》

 (いいえ、私こそありがとうございます。 この世界を楽しんで行きましょうね。)

 《そうだな。2人なら2倍楽しめるな。》

 そう言い合って、マハシム村最後の夜もアリスと一緒に眠りについた。
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