黒猫と異世界転移を楽しもう!

かめきち

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第1章 異世界転移と旅立ち

第14話 フクロウの宿

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 見張り台に座っている男に向かってノーベルを前に抱えながら話しかけた。

 「夜分遅くに申し訳ない。 おれは旅人だが、この町に向かう途中にこの子が迷子になっていて連れて来たんだ。 この町の『フクロウの宿』と言う宿をしているニコライとエルダの息子と言っているのだが、何か聞いてないか?」

 「あぁ、行方が分からなくなった男の子がいると聞いている。 確かにフクロウの宿はこの町にあるから、少し待っていてくれ。 基本的に夜間は門を開けない決まりなんでな。」

 「分かった。 この門のところで待っているよ。」


 しばらくすると、門が開く音が聞こえ、2人の男女がこっちに走ってきた。
 
 それと同時にノーベルが泣きながら走って向かっていく。

 「ママァ~~~~、パパ~」

 「「ノーベル!!!」」

 間違いなく親子みたいだ、本当に無事で良かった感動の再開だなと思った瞬間、

 バチーーン!!

 周りに響くような音を鳴らし、思いっきり母親がノーベルを平手打ちした。

 「なぜ、勝手に離れたの!!! 本当にこの子は!! この子は・・・ うわぁ~」

 ノーベルは叩かれてビックリしたのと母親が泣いているのを見て、必死に謝りながら泣いて母親にしがみついていた。

 父親らしき人がおれに気付いてこっちに近づいて来る。

 「この子を見つけてくれて、連れてきてくださった旅人とはあなたのことでしょうか?」

 「あ・あぁ、わたしがこの町に向かっているところに、偶然姿を見かけて話しかけると迷子になっているとの事でしたので、一緒にこの町に来ました。 無事に会えて良かったですね。」

 「本当にありがとうございました。」

 深く頭を下げるのを見ながら、魔物に襲われていて間一髪だったことは言わなくて正解かなと思っていると、

 「ヤスト兄ちゃんが、ゴブリンから助けてくれたんだよ!」

 と、正解を正面から否定してくれたノーベルが真っ赤なほっぺたを向けながらキラキラした目でおれを見ている。

 ドゴンッ!!!

 今度は、ノベールの頭に父親の拳骨が振ってきた・・・ 

 真っ青な顔をして、母親と父親がおれに頭を下げてきた。

 「いえいえ、大丈夫ですよ。 結果的に無事でよかったです。」

 両親に会えた事で負傷したノーベルは痛がり泣きながらも、顔は笑っていたので良かった事にしよう。

 「本当にありがとうございました。 お礼をしたいのですが中に・・・入れますかね?」

 途中から門番に話しかける。

 「そういう事情なら大丈夫だ。 検査だけは受けてもらうから少しこっちに来てくれないか。」

 門番について行き、身分証明書を求められたが持っていないので無い事を言うと、水晶が目の前に有りそれに触れてくれとの事だった。

 《アリス、これはまさか異世界検問テンプレの『悪いことしてないかどうか水晶』か?》

 (・・・ そのストレートで変な名前はともかく、この場所や人に害意のある人や犯罪者などを感知する魔道具であっていますよ。)

 水晶に触れるとボォと白い光が灯った。

 「よし、大丈夫そうだな。 カリーナの町へようこそ。 入場料に銀貨1枚をいただくが大丈夫か?  後日、冒険者ギルドカード等の身分証明書を持ってきてくれたら返金するから持ってきてくれ。 それとおれ等からも住民を助けてくれた事に礼を言おう、ありがとう。」

 銀貨を1枚を渡しながら、冒険者ギルドに登録予定ということも話しておいた。
 行きずりで助けたが改めてお礼を言われると、自分の行動に間違いはなかったと思える。

 門を潜ると、明かりはほとんど無く夜間はやはり寝静まっているようだ。

 父親がお礼としたいと自分達の宿まで先導し案内してくれている。
 今晩は泊まる場所も無いので父親について行くと、フクロウの絵の下に『フクロウの宿』と書いてある宿に来て中に入る。
 中に入るとノーベルのお姉ちゃんだとは思うが、15歳くらいの女の子が急いで駆け寄りノーベルをつぶれるくらい抱き締めた。


 「改めまして、息子を救っていただき本当にありがとうございました。」

 両親共に深く頭を下げながらお礼を言ってきた。

 「いえいえ、当然の事ですよ。 無事で良かったです。」

 「「ありがとうございました。」」

 少女とノーベルも頭を下げてくる。

 「良かったな。」

 そう言いながら、ノーベルの頭に手を置くと、嬉しそうにしていた。

 「名乗るのが遅れましたが、ノーベルの父親のニコライです。 妻のエルダと娘のベスです。」

 「旅をしているヤストだ。 それと・・・アリスだ。」

 カバンからひょっこりと顔を出しているアリスを紹介すると、ベスの目が釘付けになっている。

 視線を感じたのか、アリスがカバンから出てきてベスの側に行くと、ノーベルそっちのけで撫で始めた・・・

 「ヤストさん、本当にありがとうございました。 何かお礼をしたいのですが。」

 「本当に偶然でしたから、あんまり気にしないでください。 お礼は・・・ 3日程こちらの宿に泊めていただければ助かります。 実はこの町には全くツテも当てもないものですから。」

 「そんなことでよければどうぞ泊って行ってください。 1週間でも1か月でも大丈夫ですよ。」

 ようやくニコライさんにも自然な笑顔が出てきた。

 「いえいえそこまでは甘えることは出来ません。 この町で冒険者になって生活基盤を整えたいと思っておりますのですごく助かります。 よろしくお願いいたします。」

 エルダさんも異論はないらしく、笑顔で部屋の鍵を渡してくれた。

 「今日はゆっくり休んで下さい。 また明日お話ししましょう。」

 「分かりました。 ありがとうございます。」

 「お兄ちゃん、また明日ね」

 「アリスちゃん、明日もなでなでさせてね。」

 ノーベルの笑顔とベスの名残惜しそうな視線を振り切ってアリスも一緒に部屋に移動した。

 《アリス、子供たちの相手をありがとうな。》

 (いいえ、それくらい大丈夫ですよ。 良い宿を見つけられて良かったです。 今日は疲れたでしょう。)

 《ああ、さすがに疲れたけど、こうやって宿も決まったし、ノーベルも助けれたから良しとしよう。 アリスもお疲れさま。》

 (お疲れさまでした。 クリーンをかけますので、今日はもうおやすみ下さい。)

 《分かった。 アリスも疲れただろうから、ゆっくり休もうな。》

 そう言って、1人と1匹はベットに横になったとたん、眠りに落ちていった。


 その時、ノーベルはお叱りの第2弾がちょうど始まったところだった・・・

 
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