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第1章 異世界転移と旅立ち

第29話 沼

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 森を抜けたところの沼の前に立ったが、

 《アリス、池と言うよりも湖に近いかもな。》

 (ですね。 直径100メートルはありそうですし。 しかし濁り具合から見れば泥沼でしょうか。)

 直径100メートル程度で、1メートル底も見えないような濁った沼が目の前にあった。

 《よし、まずは周囲を回ってみよう。 おれは出来るだけ魔眼を使いながら見て回るから、アリスは気配察知を重点的にして、何か気になったらすぐに教えて欲しい。》

 (分かりました。 ヤストも気配察知は常時お願いしますよ。)


 1人と1匹で沼の外周を3分の1ほど回った時に、

 (ヤスト、沼から魔物の反応です! 反応は5、6、どんどん増えていきます!)

 アリスの警戒した声にサーベルを抜きながら、沼から離れる。

 《カエル?》

 黄色のカエルが沼から出で来るのを魔眼を発動したまま見ると、

  種族 : マッドフラッグ(魔物)
  ランク:   E
  LV : 2
  HP : 24/24
  MP :  1/1
  筋力 :  10
  魔力 :   1
  耐久力 :  6
  敏捷性 : 23
  状態 : 健康
  スキル : なし
   カエル型の魔物、群れを作り生活する習性がある。 主に沼地に生息し群れにて獲物を襲う。 食用可能。

 と出ている、

 《アリス、Eランクの魔物だし特殊能力は無いようだ。》

 (分かりました。 しかし数が・・・)

 すでにヤストの気配察知にも、40匹を超えた。
 体長30センチの黄色いカエルがこんなにいると、さすがに気持ちが悪くなってくる。

 《少し森に避難しながら少しずつ倒していこう、 それとやってみたい事があるからアリスはおれより常に森側にいてほしい。》

 (分かりました。 危険の無い様にお願いします。)

 走って振り返るとカエル達との距離は約50メートル、
 2本の木が向かい合っている場所に空間魔法の断裂を糸のように細くイメージした網を木にくっつける。

 マッドフラッグが「ゲコゲコ」言いながら、その木々の間を通ると、
 バラバラと細切れになっていく。

 《成功だな。 トラップを時空魔法で作ってみたが上手くいったな。》

 (・・・ヤスト、どや顔のところ悪いのですが、トラップを避けて来ているものもいますので気をつけて下さい。)

 木々の間ではなく、横を通ってきたマッドフラッグにウインドカッターで攻撃しながら、冷静なアリスに突っ込まれた・・・

 《よ・よし、減ってきたところを討伐しよう。》

 アリスはトラップに向かって左から漏れてくるマッドフラッグと戦っているので、ヤストは右側から漏れているマッドフラッグをサーベルを使って切り裂いていく。 相手はEランクというのもあり、ほぼ一撃で倒していく。
 
 20匹近く討伐したところで気配察知にはヤストとアリスの反応しか残っていなかった。

 《ふ~、疲れたな。 強い敵ではないが見た目と数がな。》

 (お疲れ様でした。 あの次元刀の網バージョンは良かったと思いますよ。あれがなければもう少し苦戦していたでしょうから。 その後のどや顔はなんとも言えませんでしたが・・・)

 《それは忘れてくれ・・・ 、そろそろ沼に戻ろうかな。》

 ジーと見つめるアリスを見ないように魔石を拾い、マッドフラッグのある程度形の残っている固体を収納しながら沼に向かっていく。

 《そういえば、この沼はマッドフラッグが大量にいるのか?》

 (マッドフラッグは通常10匹前後の集団だと世界辞書に記載があります。 何らかの原因で増えてしまったのでしょうね。)

 気配察知をフルに使って警戒しながら、沼に近づくと、次は5匹の紫のカエルが沼から頭を出していた。

 種族 : ポイズンフラッグ(魔物)
  ランク:   D
  LV : 3
  HP : 34/34
  MP : 10/10
  筋力 :  10
  魔力 :   5
  耐久力 :  6
  敏捷性 : 27
  状態 : 健康
  スキル : 毒生成 2
        ポイズンボディ 3
   カエル型の魔物、群れを作り生活する習性がある。 主に沼地に生息し群れにて獲物を襲う。 ポイズンボディを持ち毒液を吐くため攻守ともに毒の付与があるため注意。 毒を抜きすれば食用可能。

 魔眼で鑑定している間にこちらに気づいて、ゆっくりと向かってきている。

 《アリス、ポイズンフラッグがこっちに気づいてるよ、名前の通り毒持ちだから注意してくれ。》

 (分かりました。私は左から攻撃していきますので、ヤストは真ん中から右に攻撃してください。 魔法で一気に行きますよ。)
 
 そう言いながらも、アリスはウインドカッターを数発撃ちながら、走っていく。
 ヤストも次元刀を連続で放つと、30秒もしないうちに5匹を倒した。

 《やはり魔法は強いな、近づかなくて良い分危険も少ないしな。》

 (強い分、MPの制限がありますからね。 ヤストのMPは大丈夫ですか?)
 
 そう言われてHPとMPを確認してみると、

       名前 : ヤスト(城之内 康人)
   LV : 19
   HP :    157/190
   MP :   62/190

 《アリス、残りMPは62だ。まだ大丈夫とは思うが》

 言いかけたところで、アリスが怒気を含んだ念話を割り込ませてくる。

 (倒れれば、私だけでは守りきれませんので、すぐにMPポーションを飲んで下さい!! 私が周囲を見張ってますから。)

 《ひゃい!!》

 慌てて、中級MPポーションを2本取り出して飲み始める。

 この調査に来る前に、
 初級HPポーション×10本、中級HPポーション×20本、上級HPポーション×20本
 初級MPポーション×10本、中級MPポーション×20本、上級MPポーション×20本
 を購入してある。
 初級で30前後、中級で50程度、上級で100程度回復の見込みがあるらしい、値段は相当高かったが命には代えれないということで、アリスと相談し買って来ている。
 

 栄養ドリンク程度の大きさなので、2本はまだ大丈夫だが、何本も飲むのは厳しい。
 しかし、アリスに怒られたので2本を一気飲みししばらくすると、

 《アリス、おれのMPは170まで回復しているから大丈夫だよ。》

 (本当に気を付けて、決して油断しないで下さいね。 私は残りMPは97ですから大丈夫です。 しかしまだ油断は出来ないので節約しながら行きますね。)

 アリスがそう言うので、了解しながらもアリスのHPを確認する。

  名前 : アリス
  LV : 11
  HP : 70/83
  MP : 97/140
 
 レベルが11まで上がっていてMPもまだ大丈夫そうだが、猫なので身体の大きさからしてもポーション類も気安くは飲めない。
 基本的には自己回復でおこなってもらい、魔力欠乏を起こす寸前のMPポーションか、非常時のHPポーションしか飲まない事はポーションを買う時に話し合っていた。

 《分かった、もう少し沼に近づいて、危険ならば一旦引こう。》


 (そうですね、魔物の数が多いので深入りはやめておきましょう。)

 (ヤスト!! 沼から大きな魔物の反応が!!)

 沼を見てみると、泥をかぶった大きな魔物が出てくるのが見えた。

 
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