黒猫と異世界転移を楽しもう!

かめきち

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第1章 異世界転移と旅立ち

第30話 大きな魔物

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 沼の中から出てくる大きな魔物は、泥を被っているために詳細が見えないが、魔眼で確認してみると、

  種族 : ビッグポイズンフラッグ(魔物)
  ランク:   C
  LV : 12
  HP : 180/185
  MP : 20/20
  筋力 :  45
  魔力 :  12
  耐久力 : 39
  敏捷性 : 37
  状態 : 健康
  スキル : 毒生成 6
        ポイズンボディ 6
        危険察知 2
        
   カエル型の魔物、ポイズンフラッグの進化系。 主に沼地に生息し猛毒にて獲物を襲う。 ポイズンボディを持ち毒液を吐くため攻守ともに毒の付与があるため注意。 毒の威力は非常に強い。 毒抜きすれば食用可能。


 魔物のランクはSランクを除いて、同ランクの冒険者が1対1で倒せるという一つの目安になっている。

 今回はCランクの魔物なのでEランクのヤストには無謀なはずだが、

 《アリス、さっきのポイズンフラッグの進化系みたいだ。 毒が強烈みたいだから、遠距離攻撃のみでいこう。》

 (分かりました。私は遊撃しますので、ヤストは隙を狙って次元刀でお願いします。)

 そう言いながらアリスは素早くビッグポイズンフラッグの側面に回っていく。
 沼から完全に上がって身震いをして、ある程度泥を落とした魔物は、高さが2.5メートルほどあり、毒々しい黒の斑点がある紫色の大きなカエルだった。
 完全にヤストの方を睨み付け、今にもジャンプしそうな様子を見せている。

 《アリス、俺から先制攻撃でいくぞ。 次元刀!》

 ビッグポイズンフラッグを横に真っ二つに切るように次元刀を使ったが、魔法発動と共に3メートルほど上空にジャンプし躱されてしまった。

 《危険察知があるし、元々素早いみたいだな。 アリスも気を付けてくれ。》

 (はい。 私は攻撃しながら移動し続けますので大丈夫ですよ。 ヤストこそ気をつけてください。)

 ビッグポイズンフラッグは紫の舌を伸ばしながら、少しずつ近づいて来ている。
 もう一度同じ次元刀で牽制し、上空に飛び上がって最高到達点に来た時に、次元刀を放ってみると、少しずれたが右の後ろ足を半分ほど切断する事に成功した。

 《やった。 これで機動力はほとんど奪っただろう・・・》

 そう言った瞬間に、ビッグポイズンフラッグは片足でヤストに向かって大ジャンプをしてきた。
 
 (ヤスト危ない!!)

 ビッグポイズンフラッグの横から、ウインドカッターが連発で飛んできているが、狙いが甘くほとんど当たらなかった為、ほぼ一直線にヤストへ迫ってくる。

 紫の舌が目の前まで来たところで、

 「停止!!」

 ヤストが叫んだ時には、ビッグポイズンフラッグは目の前で舌を出したまま空中に浮かんでいた。

 「次元刀! 次元刀! 次元刀!」

 目の前を縦・横・斜めに次元刀を放ち切断していく。
 焦ったまま、少し横にずれたところで、バラバラになったビッグポイズンフラッグが地面に落ちていく。

 (ヤスト、大丈夫ですか?)

 ヤストは返事をせずに上級MPポーションを一気飲みして、地面にへたり込んだ。

 《なんとか大丈夫だよ。 魔力欠乏を起こしそうだったんで先にポーションを飲んだ。 危なかった・・・》

 側に来ているアリスが、すごく悲しそうな顔でヤストに話しかける。

 (・・・ヤスト、本当に油断はやめてください。 魔物もですが最後まで何が起きても対処できるようにしないと・・・ また死んでしまいますよ・・)

 最後の方は消え入りそうな声で話しかけてくる。

 《ごめん・・・、片足が無いからジャンプ出来ないだろうと思ってしまって気が緩んだよ・・・ 自分の常識は捨てて、もう二度と無いようにする。》

 ヤストも沈んだ声でアリスに応える。
 アリスは座り込んでいるヤストの背中に背中を合わせながらジッとしている。
 1時間はそうしたままで、ヤストが身体も動かせるようになったのを確認したところでアリスが、

 (今日は調査は中止にして少し森に戻って、休みましょう。)

 《ああそうだな・・・》

 1人と1匹で並んで歩き、少し木々が開けたところに野営の準備をする。
 死に掛けたヤストも、ヤストを失いかけたアリスも気が疲れすぎて、食事も無理やりねじ込んでから、もう休もうとしていた。

 (ヤスト、私がまずは見張りをしますので、ゆっくり休んで下さい。)

 《ありがとう、今日は休ませてもらうけど、何かあったらすぐに起こしてくれよ。 ・・・アリス今日は心配かけた、本当にもう二度と離れる事の無いように油断もしないし、強くなるからな。》

 (・・・お願いします、私も強くなりますから。)

 ヤストが横になっているところに、尻尾だけ触れさせながらアリスはそう言った。
 

 夜中に見張りを交替し、アリスを足に乗せてずっと撫でながら朝を迎えた。


 アリスが目を覚ますした後に、朝食を取りながら話をする。

 《アリス、昨日は悪かった、おれは正直、異世界転移をゲームのように考えていたのかもしれない。 アリスがMPを心配してポーションを飲んでいなかったら、時間停止は使えていなかっただろうし、こうやって話をすることすら出来なかったかもしれない。 これからは現実をしっかりと受け入れて、油断もしないし、甘くも考えない。 身体やレベルだけではなく、一番大事な心や考え方を鍛えていくから、これからもずっと一緒にいてくれないか。》

 ヤストは真剣にアリスの目を見つめながら自分の決心を話していく、
 それにアリスは真剣な顔に優しさをにじませながら答えてくれた。

 (お互いに鍛えて、頑張っていきましょう。 初めから言っている通り、私はヤストから離れませんよ。)

 《本当にありがとう。》

 お互いに話をして、今度こそちゃんと通じ合ったような気がした。


 《今朝方に考えていたんだが、ビッグポイズンフラッグが異変の原因と思う。 今日は昨日のビッグポイズンフラッグを収納して、注意深く沼と周辺を検索しよう。》

 (私もそう思います。 カエル系の魔物が多数出てきたのもですし、Cランクの魔物はこの辺には居ないはずですから。)

 野営の片づけを済ませて、1人と1匹は十分に警戒しながら沼へと戻っていく。 
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