黒猫と異世界転移を楽しもう!

かめきち

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第1章 異世界転移と旅立ち

第32話 ギルドへの報告

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 朝にはスッキリと目覚めたヤスト。
 アリスもいろいろと考えがまとまったのかスッキリとした顔で一緒に朝食をいただく。

 《なぁアリス、すぐにギルドにクエストの報告に行こうと思っているんだが、大丈夫か?》

 (大丈夫ですよ。 ただし今回はクエストは受けないでもらえますか、一回宿に戻って説明をしてから訓練したり、クエストを受けましょう。)

 《分かった。じゃあ、このままギルドへは報告に行こう。》

 朝食を食べ終わって、部屋にも戻らずにそのまま冒険者ギルドへと向かう。

 ギルドに到着しギルドサブマスターのルイーズに話しかける。

 「おはようございます。 帰ってくるのが少し早かったのですがクエストの報告はこちらで大丈夫でしょうか?」

 「おはようございます。 無事に帰ってきていただいて良かったです。 こちらでも大丈夫ですよ。」

 ヤストが書いた地図を渡しながら、魔物と出会った場所を説明していく。
 沼の魔物にCランクのビッグポイズンフラッグと出会ったことを話したところで、ルイーズが驚いた声で口を挟んできた。

 「ビッグポイズンフラッグですか!? 確かCランクの魔物だったはずですし、毒沼にしか生息しないはずですが。」

 「それがですね、沼と聞いてはいたのですが毒沼になっていたのです。 沼の中に[毒の宝玉]があってそれの効力で毒沼になっていたようです。 ビッグポイズンフラッグはなんとか討伐しました。」

 「お1人で討伐されたんですか!? 毒の宝玉はどうして分かったのですか?」

 「正直かなり危なかったですが、討伐はできましたよ。 後で魔物の死体をお渡しします。 それと毒の宝玉はビッグポイズンフラッグを討伐して出現していた辺りを詳しく調査していたら、たまたま何かあると思い調べたときに宝玉がありました。 宝玉も持って帰って来ましたが、周囲に毒の付与があるみたいなのでどこでお渡ししたら良いかを指示してください。」

 前もってアリスと打ち合わせていたので、スラスラと説明が出てきた。
 かなりビックリしている様子のルイーズは少し考えた後、ヤストの目を見つめながら言った、

 「ヤスト様ありがとうございます。 私ではこの件は処理しきれませんので、ギルドマスターに説明していただけますか?」

 「難しいですか・・・ 分かりました。説明はさせていただきますが今回は正直かなり危険でしたので、これ以上の調査は遠慮したいのが私の気持ちです。」

 説明はするが、これ以上巻き込まれることの無い様に先に釘を刺してから、ギルドマスターの部屋に案内してもらう。

 「マスター、ルイーズですが入ってもよろしいでしょうか?」

 ノックをしながらルイーズがたずねると、中から太い声で返事が来た。

 「おう、いいぞ。」

 ルイーズがドアを開けるとそこには、身長2メートル近くありそうな筋肉質の男が座って書類にペンを走らせていた。
 
 「失礼いたします。先日話していた沼の調査の件で、冒険者のヤスト様に来ていただきました。」

 中に入って、ギルドマスターがソファに座り、正面にルイーズとヤストが座る。

 「始めまして、冒険者のヤストです。」

 「おれはギルドマスターのフリッツだ。 よろしくな。」

 大きな身体で厳しい目つきで話かけてくる。

 「それで、ルイーズでは処理出来ない内容なのか?」

 先ほどの調査の事を要約しルイーズが話し終わり、少し考えてギルドマスターが質問をしてくる。

 「ヤストは鑑定持ちか?」

 「はい、鑑定と地図スキルを持っているので、今回の調査を引き受けましたが、Cランクの魔物は正直厳しかったです。」

 「そうだろうな、Eランク冒険者が1人で戦う相手ではない。 知らなかったとは言え、そんな調査をさせてすまなかったな、よく無事に戻ってきてくれた。」

 そう言いながら、ギルドマスターは頭を下げて、慌ててルイーズも頭を下げる。

 「いえいえ、今がこうやって生きて帰って来れているので大丈夫です。 しかし力不足は感じましたが・・・」

 それを聞いて頭を上げたギルドマスターは、ニヤッと笑いながらも少し悲しみを含んだ声で話し出す。

 「そう言って力不足を感じたら力をつければいい、慢心と油断はほんとにダメだ。 おれは自信満々の冒険者がクエストに行くのを見送って、帰ってこないやつもいっぱい見てきている。 力不足を感じるようなら大丈夫だ、勇敢と無謀を履き違えなければ強くなれるぞ。」

 そう言って優しい笑顔になっている。
 ギルドマスターは見かけによらず優しい人のようだ。

 「ヤスト、ビッグポイズンフラッグと毒の宝玉はこの場に持って来ているのか? アイテムボックス持ちか?」

 「アイテムボックスなので、持ってきていますよ。 この場で出しますか?」

 「ルイーズが回復も使えるし、おれも何とかなるから大丈夫だろう。 出してくれ。」

 アイテムボックスから、テーブルの脇にビッグポイズンフラッグの死体を、テーブルの上に毒の宝玉を取り出した。
 取り出したとたん毒の宝玉の周囲に薄い紫のもやが宝玉から出てきている。

 「間違いなくビッグポイズンフラッグと毒の宝玉だな。 宝玉は自然発生するものでもないし、誰かが仕掛けたかだな。 すまないが魔物と宝玉は仕舞っておいてくれるか。」

 すばやく両方をアイテムボックスに収納すると、ルイーズが毒の浄化を行なう。

 「今回の件は、高ランクの冒険者でもう少し探ってみる。 ヤストは魔物と宝玉はギルドに渡しても大丈夫か? 調べてみたいんでな。 もちろん買取させてもらうぞ。」

 (ヤスト! 毒の宝玉は1日待ってもらうようにしてもらえますか。)

 「ええ、渡しても大丈夫ですが、宝玉は明日の納品で大丈夫ですか? 少し見てみたい事がありますので。」

 「かまわないぞ、じゃあ明日に魔物も宝玉も渡しておいてくれ。 下の倉庫に毒魔物の保管場所と、魔法効果を遮断する箱があるからそこには話は通しておく。 報酬は基本の40万クローナに、魔物と宝玉の金額110万クローナ、危険手当で50万クローナの200万クローナを出そう。 それで大丈夫か?」

 「大丈夫です。 ありがとうございます。」

 「おう、金は明日ルイーズにもらってくれ。 あと何かあったら協力するからおれに言ってきてくれ。」

 にこやかなギルドマスターに見送られながら、部屋を出て、ルイーズに「マスターに気に入られましたね」とあまり気持ち良いものではない言葉を受けながら受付に戻る。
 帰り際にアリスにクエスト掲示板を見て欲しいと頼まれたので、アリスの言うとおりにEランクからCランクまでのクエストを見て回ってから、ギルドを後にした。

 (報告だけでも大変でしたね、お疲れ様でした。)

 《まさかギルドマスターまで出てくるとは思わなかったよ。 報酬は大金だから良かったけどな。》

 説明だけで昼は過ぎていたので、屋台でパンや串焼きを買ってフクロウの宿に戻っていった。
 
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