結婚までの120日~結婚式が決まっているのに前途は見えない~【完結】

まぁ

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方向を見失う

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 ここの鍋焼うどんは天ぷらが乗っているような豪華さはないが、干ししいたけがよく香るところがとてもうまい。しいたけの他には鶏肉、油揚げ、かまぼこ、青ねぎ、卵のシンプルな具材で飽きることのない冬の定番メニューだ。

「瑛ちゃん、何飲む?今日はバレンタインで小さなコップ一杯、ビールか日本酒のサービスしてるの」

 半分くらい食べ終えた俺に、手が空いたのか美琴さんがビール瓶と日本酒の瓶を見せてくる。

「太っ腹だね」
「毎年よ。どうする?」
「日本酒」

 俺がそう言うと、席をひとつ開けて座る客が日本酒のおかわりを頼む。すると美琴さんは小さなコップを下げて、いつものコップに酒を注いでいるからサービスのあとにおかわりをしているのだろう。

「ありがとう。いただきます」
「どうぞ。何だかしけた顔してるからねぇ、しっかり食べて、しっかり飲みなさない」

 彼女が俺にそう言うと、隣の客が俺を見る。

「前にもここで会ったね。お一人さま同士で乾杯しようか?」

 見覚えのある、俺より明らかに年上の男性は、コップを持つ手を俺に差し出した。

「「乾杯」」

 何に乾杯だよ…さっきのしけた顔も失礼だと思うが、言った本人は離れたところで仕事している。

「彼女にフラれでもしたの?知らないお兄さんが話を聞いてあげようか?」
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