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第1章 ーオー・レーモンと隣国ー
国外へ
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早朝、バラードと私を乗せた船はオー・レーモンを出航した。
日の出が目に染みる。
これから私達のたびが始まるのだと考えると胸が高鳴る。世界中の誰にも聞こえないくらい小さな声で、レイラに伝えるー
「……レイラ、待っていてね。」
その呟きは眩しすぎる朝日に溶けて消えていった。
「サリア!出航したはいいが、これからどこへ向かう?!」
バラードも日の出を遮る為に片手で目元を軽く覆う。
「……そうね、私達2人だけではとてもじゃないけれど人数が足りないわ!私は、もっと仲間が欲しい!!」
海を突き進む船の音に掻き消されぬよう大きな声で叫ぶ。バラードは太陽の良く似合う笑顔で、了解!と叫んだ。
少ししてから舵が安定し、バラードは船を自動操縦に切り替えた。
「バラード、これからどこへ行くの?」
彼は作っておいたサンドイッチを大口でかぶりつきながら答える。
「北の森だ。」
「……北の森?」
私はバラードの過去の話を思い出す。難民だった頃の彼が立ち寄った際、払い返されてしまった森だ。
「……それって、大丈夫なのかしら?また追い出されてしまうかもしれないわ。」
バラードはサンドイッチを口に詰め込み一気に水筒に入れてあった水で流し込む。
「でもな、そこにはすげえ強力な護術士がいるんだ。お前は剣術士、あの魚捌きを見れば分かるぜ。そんで俺も実は剣術士なんだ。いつも海海で剣術なんかここ最近やってなかったがな。」
「そうなのね!それは、危険を冒してでも行く価値はあるかもしれない……!!」
剣術士2人では相当やっていけない。
たしか、オー・レーモンの治安維持部隊の構成も、部隊の3分の1は護術士だったはずだ。それくらい御術士は大切な存在だ。
「強え護術士のいるとこは強えんだぜ!頑張ろうな、サリア!!」
バラードが一緒だと、とても心強かった。
オー・レーモン港から北へ30キロメートル。朝日は正午を過ぎた西の空へ傾きつつあった。
私は久々に地上に立つような感覚に陥った。軽くよろけると、バラードが大丈夫か?と身体を支えてくれる。「私がしっかりしなければ」、と船で酔った脳を叩き直す。
「こんなに長い時間船に乗ったのは初めてだったな。サリア、無理すんなよ?」
「ありがとう、バラード。…… ……北の森は……ここかしら?」
バラードが船を止めた海岸より先に広がるのはー
「果てしない森……」
海岸の砂浜から少し離れた場所は、見渡す限りの木々。その木は1本1本がとても長く、オー・レーモンでは見たことがない木々が生い茂っている。
「ここからまた、北へ少し歩く。そうしたら着くぞ。」
彼はそう言って私よりも1歩先を歩いていった。
私達は少し会話をしながら森の中をひたすらに歩いた。
船酔いが酷かったので、バラードからよく頭痛や船酔いに効く漢方薬を貰い少しの柔軟と休憩を摂るとかなり良くなってきた。
体調も万全になりバラードに持って貰っていた荷物を自分で持つ。
歩きながら彼が言う。
「なあサリア、王宮での生活ってどんな感じだったんだ?俺全く想像できなくてよ。」
「うーん、そうね。朝起きたら朝食を食べてから稽古をして、読書をして、勉強をして、かしら?住んでいる場所は違えどやっていることは貴方とあまり変わらないのよ?」
私は自分でそう言って、その懐かしさに少し微笑んだ。
「なんか意外だな。もっとギラギラして豪華なものだと思ってたぜ。」
へえー、とバラードは感嘆の声を上げる。
「じゃあバラード、私達がオー・レーモンに帰ってきたらみんなで王宮に行きましょう!」
バラードの表情はぱあっと、子供のように明るくなった。
そして何度も私に「本当にいいのか?」と聞く。
「もう、もちろんよ!バラードなら喜んで王宮に招待するわ!」
2人で他愛のない話をしながら北の森を目指し歩き続けた。
日の出が目に染みる。
これから私達のたびが始まるのだと考えると胸が高鳴る。世界中の誰にも聞こえないくらい小さな声で、レイラに伝えるー
「……レイラ、待っていてね。」
その呟きは眩しすぎる朝日に溶けて消えていった。
「サリア!出航したはいいが、これからどこへ向かう?!」
バラードも日の出を遮る為に片手で目元を軽く覆う。
「……そうね、私達2人だけではとてもじゃないけれど人数が足りないわ!私は、もっと仲間が欲しい!!」
海を突き進む船の音に掻き消されぬよう大きな声で叫ぶ。バラードは太陽の良く似合う笑顔で、了解!と叫んだ。
少ししてから舵が安定し、バラードは船を自動操縦に切り替えた。
「バラード、これからどこへ行くの?」
彼は作っておいたサンドイッチを大口でかぶりつきながら答える。
「北の森だ。」
「……北の森?」
私はバラードの過去の話を思い出す。難民だった頃の彼が立ち寄った際、払い返されてしまった森だ。
「……それって、大丈夫なのかしら?また追い出されてしまうかもしれないわ。」
バラードはサンドイッチを口に詰め込み一気に水筒に入れてあった水で流し込む。
「でもな、そこにはすげえ強力な護術士がいるんだ。お前は剣術士、あの魚捌きを見れば分かるぜ。そんで俺も実は剣術士なんだ。いつも海海で剣術なんかここ最近やってなかったがな。」
「そうなのね!それは、危険を冒してでも行く価値はあるかもしれない……!!」
剣術士2人では相当やっていけない。
たしか、オー・レーモンの治安維持部隊の構成も、部隊の3分の1は護術士だったはずだ。それくらい御術士は大切な存在だ。
「強え護術士のいるとこは強えんだぜ!頑張ろうな、サリア!!」
バラードが一緒だと、とても心強かった。
オー・レーモン港から北へ30キロメートル。朝日は正午を過ぎた西の空へ傾きつつあった。
私は久々に地上に立つような感覚に陥った。軽くよろけると、バラードが大丈夫か?と身体を支えてくれる。「私がしっかりしなければ」、と船で酔った脳を叩き直す。
「こんなに長い時間船に乗ったのは初めてだったな。サリア、無理すんなよ?」
「ありがとう、バラード。…… ……北の森は……ここかしら?」
バラードが船を止めた海岸より先に広がるのはー
「果てしない森……」
海岸の砂浜から少し離れた場所は、見渡す限りの木々。その木は1本1本がとても長く、オー・レーモンでは見たことがない木々が生い茂っている。
「ここからまた、北へ少し歩く。そうしたら着くぞ。」
彼はそう言って私よりも1歩先を歩いていった。
私達は少し会話をしながら森の中をひたすらに歩いた。
船酔いが酷かったので、バラードからよく頭痛や船酔いに効く漢方薬を貰い少しの柔軟と休憩を摂るとかなり良くなってきた。
体調も万全になりバラードに持って貰っていた荷物を自分で持つ。
歩きながら彼が言う。
「なあサリア、王宮での生活ってどんな感じだったんだ?俺全く想像できなくてよ。」
「うーん、そうね。朝起きたら朝食を食べてから稽古をして、読書をして、勉強をして、かしら?住んでいる場所は違えどやっていることは貴方とあまり変わらないのよ?」
私は自分でそう言って、その懐かしさに少し微笑んだ。
「なんか意外だな。もっとギラギラして豪華なものだと思ってたぜ。」
へえー、とバラードは感嘆の声を上げる。
「じゃあバラード、私達がオー・レーモンに帰ってきたらみんなで王宮に行きましょう!」
バラードの表情はぱあっと、子供のように明るくなった。
そして何度も私に「本当にいいのか?」と聞く。
「もう、もちろんよ!バラードなら喜んで王宮に招待するわ!」
2人で他愛のない話をしながら北の森を目指し歩き続けた。
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