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第1章 ーオー・レーモンと隣国ー
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「私は貴方にずっと隠していた事があるの。」
「……?なんだよサリア、言ってみろ。」
バラードの優しい眼差しは、依然として変わらない。
私は親指と人差し指で固く結んだ紺色のリボンを摘む。
その指に力を込めるも、自分が自分を拒んでいる。
初めて明かす私の秘密ーもしこのはなしが何らかの方法で漏れてしまったら……国民は混乱し国が荒むのが目に見えている。
しかし、私はそのリスクを負ってでもバラードには言うべきだと判断した。
ここは私達以外誰もいないボートの上今しかない思った。
目を瞑りリボンを一気に引く。
「…… ……?!」
彼の目は見開かれ、口は唖然と開いていた。ボートを漕いでいた筋肉質な腕はだらんとその場にぶら下がる。
私の長い銀髪は踊るように解けていった。
私の角が露になる。
色々な思いが募る。
頭にはお父様、お母様、レイラ、オンディーヌの顔が次々と浮かんでは消える。
私はゆっくりと瞼を開く。
「これが、私の秘密です。」
「……なっ?!……これ、本物かよ……?!じゃあ、お前は……!?」
バラードが私の角にゆっくりと手を伸ばす。そして指先だけ一瞬触れて、力無く「本物だ」と呟いた。
「私はサリア・オー・レーモン。この国の元王女です。」
私は、すべて話した。
今まで起こったこと全てを。
召使い、オンディーヌに国を任せたことを。
「7日前のプリンセス誕生日のあの日そうして私はここへ来たの。今は召使いオンディーヌがこの国を動かしているわ。…… ……幻滅したでしょう。姉の為に国を見捨てる王女……。でもね、私は貴方になら話したいと思ったの。この国の真実を知っていて欲しかった……。」
彼は俯いている。
「…… ……!」
彼は声を殺して泣いていた。
「ど、どうして貴方が泣いているの?……こんなにも不甲斐ない王女で本当にごめんなさい……。国民を泣かせてしまうなんて…… ……うっ……」
私は自分のどうしようもない無力さに嗚咽が零れた。
「……よ……」
「え?」
「違ぇよ!!」
バラードは勢いよく私の両腕に掴みかかる。その衝動につられボートが大きく左右に揺れる。
彼の真っ直ぐな視線が私の瞳を捉える。
「今すぐ、行かなきゃダメだろ!!」
目の前に迫るバラードは短く息継ぎをして続ける。
「レイラ女王を助けにいけよ!…… ……俺も行く……恩返しさせてくれよ、俺達を救ってくれたパンドラ国王の娘はお前だろ?!俺の命を賭けさせてくれよ!」
「……!!!」
実に私は『感無量』という感覚に陥った。
大切な国民にそんなことさせられない、そう彼に言い聞かせようとしたが、きっと私がそう言ったところで聞く耳を持たないだろう。
それくらい、バラードの意志は固かった。
私は、またたくさん涙を流した。
それは7日前の冷たい涙とは違う、暖かい温もりを持つ涙をだった。
私は咽び泣きながら彼に『ありがとう』と伝えた。
「……?なんだよサリア、言ってみろ。」
バラードの優しい眼差しは、依然として変わらない。
私は親指と人差し指で固く結んだ紺色のリボンを摘む。
その指に力を込めるも、自分が自分を拒んでいる。
初めて明かす私の秘密ーもしこのはなしが何らかの方法で漏れてしまったら……国民は混乱し国が荒むのが目に見えている。
しかし、私はそのリスクを負ってでもバラードには言うべきだと判断した。
ここは私達以外誰もいないボートの上今しかない思った。
目を瞑りリボンを一気に引く。
「…… ……?!」
彼の目は見開かれ、口は唖然と開いていた。ボートを漕いでいた筋肉質な腕はだらんとその場にぶら下がる。
私の長い銀髪は踊るように解けていった。
私の角が露になる。
色々な思いが募る。
頭にはお父様、お母様、レイラ、オンディーヌの顔が次々と浮かんでは消える。
私はゆっくりと瞼を開く。
「これが、私の秘密です。」
「……なっ?!……これ、本物かよ……?!じゃあ、お前は……!?」
バラードが私の角にゆっくりと手を伸ばす。そして指先だけ一瞬触れて、力無く「本物だ」と呟いた。
「私はサリア・オー・レーモン。この国の元王女です。」
私は、すべて話した。
今まで起こったこと全てを。
召使い、オンディーヌに国を任せたことを。
「7日前のプリンセス誕生日のあの日そうして私はここへ来たの。今は召使いオンディーヌがこの国を動かしているわ。…… ……幻滅したでしょう。姉の為に国を見捨てる王女……。でもね、私は貴方になら話したいと思ったの。この国の真実を知っていて欲しかった……。」
彼は俯いている。
「…… ……!」
彼は声を殺して泣いていた。
「ど、どうして貴方が泣いているの?……こんなにも不甲斐ない王女で本当にごめんなさい……。国民を泣かせてしまうなんて…… ……うっ……」
私は自分のどうしようもない無力さに嗚咽が零れた。
「……よ……」
「え?」
「違ぇよ!!」
バラードは勢いよく私の両腕に掴みかかる。その衝動につられボートが大きく左右に揺れる。
彼の真っ直ぐな視線が私の瞳を捉える。
「今すぐ、行かなきゃダメだろ!!」
目の前に迫るバラードは短く息継ぎをして続ける。
「レイラ女王を助けにいけよ!…… ……俺も行く……恩返しさせてくれよ、俺達を救ってくれたパンドラ国王の娘はお前だろ?!俺の命を賭けさせてくれよ!」
「……!!!」
実に私は『感無量』という感覚に陥った。
大切な国民にそんなことさせられない、そう彼に言い聞かせようとしたが、きっと私がそう言ったところで聞く耳を持たないだろう。
それくらい、バラードの意志は固かった。
私は、またたくさん涙を流した。
それは7日前の冷たい涙とは違う、暖かい温もりを持つ涙をだった。
私は咽び泣きながら彼に『ありがとう』と伝えた。
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