DIDN’T

Mehoko0095

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真犯人

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 次の日、学校に行ったら笹木の机に花が手向けられていた。あのパトカーが隣を通ったのは、そして悪い予感がしたのは偶然ではなかったらしい。
 あの後、桃香はたわいもない話だよ、という前置きをしてからこんな話をしてくれた。
「笹木くん、この間山田くんのテストをカンニングしていた生徒がいたって先生に言って怒られたみたい。本当は、笹木くんがカンニングしてたのが後にバレてね。テストの解答がまるっきり一緒だったんだって。」
 麦茶を一口飲んでから桃香は話を続けた。
「山田くんが言うには、笹木くんは今年に入ってから何か追い詰められてたみたいで、何がある度に難癖付けてきて困るって言ってた。受験のせいかな、みんなピリピリしてるもんね。山田くんは私立にもう合格してるし、笹木くんから見たら余裕のあるように見えてむしゃくしゃしてたのかな。」
 桃香の話をぼんやり回想していたところ、担任が皆に体育館に集まるように言った。立ち上がって体育館で整列した。もう何の話か分かる気がした。笹木の話だろう。それしかない。
 体育館に着くと、教頭が皆の前に立ち、マイクで話し始めた。
「皆知ってのことだと思うが、昨日笹木が亡くなった。場所は体育館裏、ナイフで胸を突いたことによる失血死だ。笹木は遺書を残していた。」
 そして間をおくと、教頭は話を続けた。
「笹木は昨日山田の靴箱に犯行予告を入れたのは自分だと書いている。受験による圧力に耐えきれなくてやってしまったのだそうだ。だが放火はしていない、と書いてある。自死を選んでしまったのは誰かを恨んでのことやいじめのことではないそうだ。」
 黙祷の時間があって、その後生徒は皆散り散りに教室に帰っていった。笹木がいない教室はに帰ると、何だか寂しく感じられて、昔笹木としたいたずらや遊びのことを考えてしまい、どうしても授業が頭に入らなかった。
 その一週間後、受験の日が来た。一日かけてテストを受けて、面接があった。テストはほどほどの手応えだったが、面接は自信がなかった。帰る道すがら、もっとよい受け答えがあったのではないかと空を掴む思いだった。
 俺はどうにか志望校に合格した。笹木も同じ高校を志望していた―もし生きていたなら、同じ学校に進学出来ていたのではないか、としみじみ悲しく思い、合格者一覧を見た。
 俺は中学生最後の日、卒業式のその日に笹木の机を見ながらつぶやいた。
「笹木、山田の家に放火したのは、確かに俺だったよ。」
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