DIDN’T

Mehoko0095

文字の大きさ
4 / 5

遭遇

しおりを挟む
 丘の下のコンビニで、カップ麺と肉まん、それと炭酸飲料を買って家に帰ろうと自転車に乗り、横断歩道を渡ろうと信号待ちをしていた時のことだった。
「あ、新宮くん。今帰り?」
 十字路の右から鳥羽(とば)桃香が歩いてきた。先生が帰宅せよと言ったすぐ後に学校を出たにしては少し遅い時間だ。
「桃香、帰るの遅くないか?」
 信号を見て、青になるのを待っているふりをしながら桃香に聞く。桃香は俺の家のすぐそばに住んでいて、学校では知られないようにしているが俺の幼馴染だ。
「帰りが遅くなったのには訳があってね。新宮くん、途中まで一緒に帰ろうよ。話してあげる。」
 そう言いながら桃香は得意のにんまり顔をした。白くて柔らかい頬が魅力的だ。
「いいけど、何かあったのか?帰りが遅くなった理由って何。」
 信号が変わったので横断歩道を桃香に合わせて歩いて渡る。そもそも俺の家は学校から家までは対して遠くないので、自転車は必須ではなかった。
「先生が、帰りなさいって言ったでしょ。あの後教室を出たら笹木くんが先生と歩いててね。なんか話してた内容からすると、山田くんの話で。笹木くん、怒られてたみたい。詮索するなとか何とか言われてた。」
「そうなんだな。それで?」
 桃香は肩をすくめ、それだけ、と言った。
 今は学校を出て三十分後。道に他の生徒の姿はなく、車が時折行き交う程度だった。丘を登りながら桃香は話を続けた。
「山田くん、気に入ってた小説が焼けちゃって悲しいって。それに教科書とか、色々無くなっちゃったって。火元の特定してもらったら、玄関だったんだって。マッチが火の原因みたいだよ。つまり、放火、だよね。」
「山田の家、ざっくりとしか覚えてないけど私道を入った先だよな。目撃者とかいないのか?」
「それが、いなくてね。あのあたり、家がまばらだし。それにしてもあの日は風が強かったよね。延焼して、何軒か焼けてるんでしょ。不幸は重なるものだね。」
 そう言って桃香はこちらを見た。
「笹木くん、新宮くんのこと怪しんでる。でしょ?何でか分かる?」
 まじまじとこちらを見る桃香の顔に耐えられず、目を背けて口を開いた。
「わからない。俺は何にも恨んでも羨んでもないんだけれど、山田のことなんか。それより今は勉強の方に興味が大事だし。」
「実はね、笹木くん、本当は―」
 桃香が口を開いて言いかけたその瞬間、パトカーがサイレンを鳴らして丘の上から走ってきた。明らかに何か急いでいるように見えて、何かまた起きたのではないか、という気がした。
「とにかく、今日家に来て。話の続きがあるから。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...