ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神

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英雄と聖女 編

020. 神殿突入

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「じゃあしっかり捕まっていろよ。行くぞ」 

 シートベルトの説明をした後、ユーゴはエンジンのスタートスイッチを押した。
 エンジンの太い始動音。同時に、シャラランというジングル音がした。
 ジングル音はナビの起動音で、ナビは木目のインパネがくるんと回転して出現する構造だった。
 エンジン始動で、運転席と助手席間のセンターコンソールからリング状の金属パーツが現れた。ダイアルシフトだ。
 ユーゴがそれを右回転させてギアをドライブに入れると、自動的にパーキングブレーキが解除。
 ユーゴがアクセルを踏むと、車は緩やかにかつ滑らかに進んだ。
 この自動車は、例によって女神の依頼によって異世界を救ったご褒美の一つで、【アドヴェンチャー・ガンマ】と名付けられている。
 とにかく頑丈なこの車。かつては竜王という化け物のブレスや爪でも傷ひとつ付かず、電柱のように太く硬い尾を強かに打ち付けられてもへこみ一つ付かなかったという代物だ。
 未舗装の砂利道や草原は言うに及ばず、岩場や急勾配の坂道であっても難なく進む。
 SUVの外見を持つ、あらゆる難所をも踏破するためのスーパークロスカントリーなのだ。

 軽やかに疾走するアドヴェンチャー・ガンマ。遠くから目撃してしまった農夫は鍬を取り落とし、旅の吟遊詩人は二度見し、世間話をしていた老人たちは揃って腰を抜かしていた。
 正直、ユーゴとしてはなるべく目立つ真似はしたくなかった。噂が広まれば転移者探しに支障が出る可能性がない訳では無い。
 だが事ここに至っては仕方がない。出し惜しみしている場面ではないだろう。
 特にスピードは出してはいない。あまりスピードを出しすぎると、障害物を乗り越える時に大きくバウンドするからだ。精々、時速六十キロメートル程度だ。
 なのにスウィンはきゃあきゃあ悲鳴を上げ、「早い!」だの「危ない!」だのと騒いでいる。
 逆にピアは物珍しさと初めての乗車体験に目をキラキラさせていた。

「凄いな。もうこんな所まで。でもユーゴ。このまま行くと川がある。橋はまだずっと東だぞ。ここから街道沿いに進んだほうが良い」

 山などの地形と地図から現在地を割り出したゼストが、指示を出した。

「分かってる。でも橋を渡るにはかなり迂回しなきゃいけねえだろ? だからこっちで良いんだよ」

「え?」

 まもなく川が見えてきた。川幅はかなり広く、深さも確実に人の足が届かないほどだろう。
 そこにユーゴは。

 車ごと突っ込んだ。

「ぎゃあああああああああああああああああっ! 沈む! 沈むっ‼︎ 溺れちゃうぅぅぅっ!!」

「うるせぇな。大丈夫だ。沈まねぇよ」

 半狂乱で騒ぐスウィンに対して冷徹に突っ込むユーゴの言葉通り、確かに車体は沈まず、川面に浮いている。
 スイッチで推進力をタイヤから、実は車体の底に装備されていたスクリューに切り替え、車体は進んでいく。しかもかなり速い。

「水陸両用か……初めて乗ったよ」

「だから言ったろ? 大丈夫だって」

 ゼストは軽く驚きつつも、何となく予想していたようだ。
 ネルとピアは船のような馬車に目を輝かせ窓から渡河の景色を楽しみ、
 スウィンは泡を吹いて気絶していた。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 再び草原をひた走るクロスカントリーカー。
 まだ陽が頂点に至るには時間がある。

「あれか」

 前方に見えるひときわ高い山。その麓に大きな町が見えた。
 近づくほど、町の壊滅状態が明らかになってきた。その度、ゼスト達の緊張感がいや増していく。
 門は開け放たれており、やはり番兵は不在。
 町は惨憺たる有様だった。建築物は崩れていたが、運良く、歩道に道を塞ぐような大きな瓦礫は落ちていなかった。
 ユーゴは車を走らせ、そのまま街中を進んだ。
 言葉もない一行の前に、突如、前方に黒い影が物陰から現れた。
 ヒグマのような魔獣だ。ただし大きな角と、腹部にもう一つ大きな口があるが。

「ユーゴ。止めてくれ。ここはボクが!」

「おいお前ら! しっかりどっかに掴まってろよ!」

「「「「 え? 」」」」

 ユーゴがアクセルをぐっと踏み込むと、車体が前方に飛ぶように加速した。

「邪魔だ! 退けオラァァァァァァァァ!!!!!」

 ドン。

 という音と、軽い衝撃。
 ユーゴ以外の全員が振り返ると、リアガラスの向こうでは、ヒグマ型の魔獣がピクリともせず斃れていた。

「「「「 …… 」」」」

 皆、唖然としている。
 クロスカントリーカーであっても、普通は押し負け、逆に弾き飛ばされていたかもしれない。
 しかしアドヴェンチャー・ガンマはいやしくもゴッドメイド。
 ユーゴにもよく理解できない不思議パワーで邪魔するアレコレをドン! しちゃうのだ。
 耳慣れぬ機械音を不審に思ったのか、形も大きさもバラバラな魔獣がわらわらと出現してきた。

「ヒャッハーッ‼︎」

 だが、それらを容赦なく跳ね飛ばし、あるいは空を飛ぶ魔獣をネオアルファで撃ち落としながら、町を突き進んだ。
 もう何も言うまい。ゼスト一行は黙って見守った。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 ユーゴ達は町の外れ、山を登り神殿まで続く長い階段の手前まで到着した。

「お前たち。先に進め」

「ユーゴさん⁉︎ 貴方はどうなさるのですか⁉︎」

 ユーゴの指示に、ネルは飛び上がらんばかりに驚いた。

「ネル。お前は町を救いたいんだろ? どうやら建屋の中に、かなりの人数が籠城しているみたいだな。それは俺が一人で何とかする。お前はゼストと一緒に行け」

「でも……」

「ゼスト。この先の神殿に、黒っぽい服を来た女がいる。お前の目的の魔女だ。多分な。ネルと一緒に行ってやれよ」

 降車したユーゴは、異空間からもう一丁、ネオアルファとは別の拳銃を取り出しながら告げた。
 町の至る所から、更に魔獣が湧き出てきた。
 ネルの目には絶望が絶え間なく押し寄せてくるように写った。
 ユーゴはネオアルファより一回り大きな黒い拳銃を右手に構え、その銃爪を引いた。
 一瞬強い光が放たれると、魔獣の群れ───その一部から小規模の爆発が起こった。

 大群の一部にぽっかり穴が空いたように、爆心地では魔獣が黒炭になり、または爆散していた。

「見ての通りだ。お前らは邪魔だ」

「ユーゴさん。貴方という方は……!」

 涙を堪えながらネルは、ゼストに告げる。

「ゼストさん。行きましょう」

「……分かった。急ごう。ユーゴ。死なないで欲しい」 

「誰に言ってんだよ。さっさと行けよ」

 威嚇するように歯を剥き、「しっしっ」と手を払うユーゴ。

「ユーゴ。貴方……。ううん。また会いましょう」

「ピア、信じてるからね!」

 スウィンとピアも思いを呑み込み、激励の言葉をかけた。

「ああ」

 ユーゴは短く答え、ゼスト一行を見送った。
 まさか俺がこんなベタベタな展開をすることになるなんてな───そうひとりごちながら、ゼスト達に上空から襲いかかろうとする魔獣を撃ち落とした。

「まぁいいか。そんじゃあ、魔獣ども。お前らに怨みはねぇが、駆逐させてもらうぞ」

 ユーゴは二丁拳銃を構え不敵に言い放った。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 階段を駆け上がりながら、ネルはユーゴを想っていた。
 突っ慳貪にしていたが、あれはユーゴなりの照れ隠しだ。彼は偶に露悪的な発言をして、人と距離を置こうとする。
 彼の過去に何があったのかは判らない。
 だが、彼の優しさを無駄にしてはいけない。
 一度振り返ったネルは、ユーゴに群がっている魔獣の多さに膝から崩れ落ちそうだった。
 しかしぐっと堪えて、代わりに大声を出す。

「ユーゴさん! 私、貴方に伝えたいことがあります! だから、どうかご無事に!」

 激戦の最中にあってもユーゴはネルを振り返り、ニヤリと笑みを浮かべて首肯した。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ゼストとスウィンの神聖術で背中に風を吹かせて推進力の足しにしながら、長い長い階段を登っていく。
 ネルの【祈癒】は伝承では傷の治癒としてしか伝わっていないが、実際には筋肉疲労なども回復できるようで、その扶けもあって、最速で神殿に辿り着いた。
 死臭漂う中を奥に進み、大広間まで来た時、ゼスト達に声がかけられた。

「あら。意外と早かったわね」

【契約の魔女】、マリアだった。



──────to be continued

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