ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神

文字の大きさ
30 / 160
英雄と聖女 編

030. それから…

しおりを挟む
 何となく、ユーゴはゼストの身に何が起こったのかを理解していた。
 ユーラウリアもアホっぽく見えるが、あれで女神の端くれ。人間のステータスを読むリテラシーは高いので、当然理解している。
 というか、さきほど本人がほとんど白状していた。
 それはスウィンもピアも聞いていたはずだが、理解していなかった。
 いや、現実を受け入れられなかったのだ。

「スウィン。ピア。そして、ネル。黙っていたけれど、これまで一緒に旅をしてきたゼストは、ボク、フィールエル・スティンピアが魔女の呪いで性別を変えられた姿なんだ。……黙っていてすまない」

 沈痛な面持ちで告白したフィールエル。

「ゼストさんがフィールエルさま…ゼストさんがフィールエルさま…ゼストさんがフィールエルさま…ゼストさんがフィールエルさま…ゼストさんが」

 スウィンは灰のように血の気が失せた顔で呟き続け、

「お兄ちゃんはお姉ちゃん? おにぇーちゃん? おねにーちゃん?」

 ピアに至っては混乱の極みから、新しい名称を模索しだす始末。

「まぁ。そうだったんですね」

 唯一、ネルだけがすんなりと許容できていた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 それから。
 脳がキャパオーバーになったらしいスウィンとピアは、揃って気を失った。
 神殿に残っていた魔獣は全て始末し、ヴァリオン教徒は全員縛り上げた。
 ちなみにこれはフィールエル一人で行い、ユーゴは疲れたと言って休息していた。非常食の干し肉ジャーキーを齧りながら。

 神殿の奥の隠し部屋には、避難していた神官たちがいた。
 多少の犠牲者が出ていたので、その亡骸は神官や職員総出で運んだ。
 いつの間にか、ユーラウリアは姿を消していた。

 フィールエルとネルは街へ降りる途中の光景に目を疑った。広大な聖都を埋め尽くすように、魔獣の死骸が散らばっていたからだ。
 王国軍一個師団を用いてやっという戦果だ。それも多数の戦死者が出るとして。
 フィールエル一人でも、一度にこんな大勢を相手にするのは難しい。それも、こんなに短時間で。
 改めて二人は、ユーゴの規格外の戦闘力におののいた。
 町が静かになったことに気付いた都の民が、恐る恐る一人、また一人と外へ出てきた。
 神殿から降りてきた美女二人を目敏く見つけた一人の住民。彼は古くから町に住んでいて聖女達の顔を見知っていた。

「聖女様だ! フィールエル様にネル様だ‼︎ この方たちが都をお救いになったんだ!!」

 その声を聞きつけた住民たちは快哉を叫び、やがてそれは聖都中に伝播していった。
 聖女達は否定したが、空に響くような歓声にかき消されてしまった。


 辺りが暗くなり、月が顔を出したところで、神殿で食事を摂ることにした一行。
 そこでフィールエルとネルは教主である大神官から謝辞を述べられていた。
 この時には既に、ユーゴから『俺のことは極力地味に話せ』と言われていたので、むず痒い思いをしながら聖女二人は神官からの礼を受け入れざるを得なかったのだ。
 スウィンとピアはずっと寝込んでうなされている。よほどショックだったのだろう。


 食後、神殿内の会議室でユーゴ、フィールエル、ネルは顔を突き合わせていた。
 そこでネルは己の事情を話した。前世の記憶があることや出生の秘密、これまでの半生と決意などを。
 ユーゴから地球から来たのは気付いていたと白状した。しかし、己の前世を封印していたネルにはもはや関係ないことと切り捨てていたのだ。
 ユーゴもフィールエルも、ネルの告白に驚いた。だが、二人して頷くと、

「実はな、ネル。俺たちは───」

 ユーラウリアの依頼のことを打ち明けた。

「そうだったんですね。わかりました。私にも、ユーゴさんのお手伝いをさせてください」

 協力を申し出たネルに、ユーゴはスペリオールウォッチを渡した。

「んで、お前はもうゼストじゃねぇんだな?」

 ユーゴはフィールエルに確認した。

「うん。これが本当の姿だ。…どこかおかしいか?」

 元の姿に戻った事で、身体のサイズも一回り小さくなった。ダブダブになった男物の服の服をつまみながら、彼女は自分の身体を見回している。
 性別変換という、尋常ではない状態に2年間もされていたのだ。完全に元に戻ったか心配になるのは致し方ない。

「いや、別に変じゃねぇけど…」

 ゼストの服を着ているフィールエルは、誰もが振り向く美女である。
 年下なので今のところ興味はないが、もう少し大人になったらユーゴもくらっとくるような色香を持つに違いない。

「……あんまり、じろじろ見られると、さすがのボクも恥ずかしいんだけど」

「あ、ああ。悪い。そういや、お前の前世は何なんだ? フィールエル」

 気恥ずかしさを誤魔化すため、話題を変えた。

「ボクか? ボクは女子高生だったよ。高校3年生。17歳のピチピチさ。ボクはネルと違って、生まれ変わった瞬間から、朧気ながら前世の記憶があった。だから人格としては連続しているんだ」

「 LJK か。人格が連続してるってことは、前世からそんな感じってことか。お前、もしかして女子校じゃねぇだろうな? もしそうだったら、ラブレターたくさんもらってたクチだろ」

「よくわかったな。というか、 LJK ってなんだ?」

高3LAST女子J高生Kのことらしい。2020年代の初めの方はそう言ってたな。まぁそれはどうでもいいか。それで、これからお前らはどうするんだ?」

「ボクは元の姿に戻るという目的も果たしたし、ネルも神殿に送り届けた。差し当たって予定はないが、一度フルータル王国の国王陛下に事情を報告しなければならないな」

「私はまだ何も……。この神殿の復興をお手伝いしたいですし、一度教主様とお話します」

「ユーゴはどうするんだ? ……も、もし良かったら、ボクと一緒に王都に行かないか?」

 顔をあかくしながらフィールエルが誘いをかけてきた。それを見たネルは、不安そうに顔を曇らせた。
 
「さて、どうするかな。今日は疲れたし、ひとまず寝て、明日考えるかな」

 ユーゴの言葉を機に、各自教会に与えられた部屋へと戻った。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 夜も更けた頃。ネルは急に目を覚ました。
 なぜか心が落ち着かない。
 毛布を跳ね除け、ガウンを羽織ったネルは部屋を飛び出した。
 ユーゴの部屋に急ぐネルと、途中のドアが開いて飛び出してきた人間がぶつかりそうになった。フィールエルだった。

「ネル。まさかキミも……」

「私、なんだか嫌な予感がするんです……」

 二人はユーゴの部屋の前まで来ると、扉をノックした。だが返事はない。
 顔を見合わせた二人。フィールエルがドアノブに手をかけ回した。

「「…………っ⁉︎」」

 部屋の中にはユーゴの姿はなく、もぬけの殻だった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 テリカの町から南東に徒歩で一日ほど進んだ場所にある町、ソラカ。
 そこを目指してユーゴは歩いていた。

 数日前。誰にも悟られずにユーゴは神殿を出た。
 彼は一人で行くことを決めたのだ。目の前でネルが怪物の餌食になった時に。
 いままで幾つも世界を渡り歩いてきた。仲間を喪ったのも一度や二度ではない。その度に己の未熟さ、力の無さを悔いてきた。
 力を増し、修羅場をくぐり抜けることでそんな悲劇は少なくなっていた。だがそれが慢心を招いた。
 今回はたまたま【事象革命パーフェクトリライト】があった。しかしあの能力は条件が厳しく、いまのユーゴにはおいそれと使えない。
 やはり一人のほうが楽だ。
 そうしてユーゴは荷物を担ぎ直し、再び歩き出した。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 聖都ミロンドを襲ったヴァリオン教過激派、およびそれを率いていた魔女マリアを退けた日から数日後。
 再建を始めた神殿の門に、旅立ちの準備を終えた二人の女性がいた。
 一人は美しい顔立ちで、桃色の長い髪をポニーテールにして黒いリボンでまとめた長身の女騎士。
 もう一人は可憐な顔に優しそうな微笑みを受けべ、大きな杖を持つ修道女。
 彼女達はこれから旅を始める。
 目的地はない。
 だが、追いかける人はいる。
 彼女達を助けるだけ助けておいて、ろくに礼を言わせず勝手に消えた不届き者。しかも彼女達の心に鮮烈な想いを起こさせておいて。
 
「さぁ、行こうか、ネル」

「はい。フィールエル様」

 胸中にそれぞれの思いを抱き、彼女達は旅立った。
















しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...