ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神

文字の大きさ
47 / 160
千獣の魔王 編

047. ズルいぞ

しおりを挟む
「つまり、戦争が始まってしまうから、俺に協力する余裕がないってことか」

「そういうことになるな。一度やると言ったことを反故にするのは心苦しいが…」

「まぁ戦争だしな。片手間でこっちに協力して、戦争が疎かになって国も国民も滅びましたじゃ、目も当てられねぇしな。わかった、こっちの事は気にするな。だが、お前には念のためにこれを渡しておく」

 ユーゴはベルタリオにスペリオールウォッチを渡し、使い方を説明した。

「すまんのう。せめてもの詫びとして、ヨウゲン国へ向けて、すぐに出発できるよう手配しよう」

「助かる。それじゃあ、達者でな」

 ユーゴは官邸を出て宿に向かい、聖女と冒険者たちを集めて、事の成り行きを説明した。

「戦争だって⁉︎  やはりか……」

「そんな……」

 聖女二人は悲痛な声を上げた。
 リリとレイアは、突然の事態に困惑している。

「魔人どもの進行速度から考えれば、もう明日にもこの街が戦火に巻き込まれてもおかしくない。それで、俺たちは今からヨウゲンに向けて出発する」

 ユーゴの宣言に、しかしフィールエルとネルは異を唱える。

「待ってくれユーゴ。ボクはこの状況を見過ごせない。魔人が攻めてきていると言うならば尚更だ」

「私もです。戦争となれば、傷つき、苦しむ人たちが出てきます!」

 絶対言うと思った。
 ユーゴは聖女二人に関してこの反応を予測していた。
 そこで今度は冒険初心者二人に水を向ける。この2人ならば我先にと逃げ出すだろうから、ユーゴの案に賛成するはずだ。
 ユーゴはこの二人をダシにして、この国から離脱を図るつもりでいた。だが───


「お前らはこんな危険な場所、一刻も早く出たいよな?」

「ううん。私たちも、何かできることあるなら協力したい。だって困っている人が助けるのが、冒険者の心得だもん」

「私はどっちでもいいけど、まぁリリが言うなら。それに、戦争に協力してもし勝ったら、何か報酬が出るかもでしょう」

 意外な答えに目を剥いて驚くユーゴ。特にリリの義侠心は想定外だった。

「私、ベルーナ遺跡のダンジョンで、ユーゴを裏切ったことを後悔しているんだ。もうあんな思いはしたくないから」

「お前ら……」

「もちろん、ユーゴに目的があることは、重々承知している。だから、ボクたちには構わず、先に進んでくれ。きっと無事に追いつくさ」

「はい。私たちのことは、どうかお気になさらずに」

 聖女2人はそんなことを言いながらも、何かを訴える瞳を向けてくる。
 その意図に気づいた冒険初心者たちも、目をウルウルさせて上目遣いでユーゴを見る。

「……ズルいぞ、お前ら」

 ユーゴは観念して項垂れた。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「何! それは誠か⁉︎」

 再び官邸を訪れたユーゴは、ベルタリオに戦争を協力すると申し出た。当然予想だにしていなかったベルタリオは飛び上がらんばかりに驚いた。

「ん。あー、まぁ。うちの子たちがなぜかやる気に満ちているからな」

 と言って、ユーゴは部屋の隅で待機している女性陣を振り向いた。

「ね、ねぇ、レア。あの人、ベルタリオって名前だよ。もしかしてあの【千獣の魔王ベヒモス】なんじゃ……」

「メナ・ジェンドの国王…じゃなくて大統領でその名前なら間違いないわ。なんでユーゴがあんな大物と知り合いなのよ⁉︎」

 まさか初日に、この国のトップと会うことになるとは夢にも思わなかった女性陣。
 リリとレイアはガクブルで抱き合っている。

「…………」

「…………」

 だが、聖女二人はユーゴ耐性がついていたので、フィールエルは「驚いたら負け」、ネルは「驚くのは修行が足りないから」と言う境地に達していた。

 ユーゴは彼女たちを紹介した。だが、ベルタリオは顔を曇らせた。

「そなたらの申し出は純粋に嬉しい。しかし、わが国の争いに、他国の者を巻き込むわけにはいかぬ」

「大統領。ご心配には及びません。我らはミラール教の信徒」

「救いを求めるものがいれば、いついかなる場所でも手を差し伸べましょう」

 フィールエルとネルが厳かな空気をまとって言った。
 それを見てユーゴは思った。まるで聖女みたいだと。

「私たちは大したことはできませんが、何か力になれれば」

「冒険者には国とかあんまり関係ないしね」

 聖女たちに続いて冒険初心者の二人も協力を申し出た。
 彼女らの心意気にベルリオは微笑みを浮かべた。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 場所を官邸の会議室に移し、ユーゴ達とメナ・ジェンド獣王国の幹部は作戦会議を始めた。
 ベルタリオまずフィールエルの【聖戦】についての解説を求めた。こと魔族との戦いにおいては、比類なき対抗手段だからだ。
 フィールエルは全員を見渡して説明を始める。

「僕の【聖戦】は、ご存知の通り、対魔族戦において、人々に魔族に抗えだけの力を授ける神聖術だ。本来魔人は巨大な魔力で自身を強化し、並の武器では傷ひとつつかない強靭な肉体と鉄をもたやすく引き裂く力をつける。【聖戦】はその魔力を無効化する力を戦うものに惑わせる。効果の持続時間はボクが唱える【聖戦】の祝詞を聞いてから、被術者が眠るか意識を失うかするまでだ。つまり、術をかけられるのはボクの声が聞こえる範囲と言うことになる。ただしリスクはある。術が切れた後は、とてつもない疲労感に襲われる」

「なるほど。それで【聖戦】をかけられる回数は?」

「ボクの神聖力の総量に関わらず、一日一回です」

「わが国の戦闘員はほとんどが獣人や鳥人だが、効果に違いは?」

「被術者が魔族でなければ問題ありません」
「魔族に直接【聖戦】をかけるとどうなる? 弱ったりはせぬのか?」

「残念ながら、全く効果はありません」

「ふむ。あくまで魔族に対抗するための補助神聖術ということか」

「そうです」

「そうか。わかった、ありがとう」

 ベルタリオは、続いてネル、リリ、レイアにも何ができて何ができないのかを聞いた後、進行を軍の参謀へバトンタッチした。
 参謀はまず現状の説明をした。
 各地の情報によると、魔神軍は東から第一波の五万。
 次に北。国境を超えたフルータル王国側からも、約五万がベルトガルドに向けて進行中。
 さらに、メナ・ジェンドの南から南東にかけての沿岸部に冥海軍が展開している。その数は海面に見えるだけでも一万。海中に潜っているものを含めると約三万と言う試算だ。
 作戦の概要として、まず毎日開戦前に兵士を町の広場の前に集め、フィールエルが【聖戦】を発動。
 ベルトガルドの各師団は要所で防衛。戦闘力の高い最高幹部たちが魔人たちの数を減らすべく迎撃。
 負傷者は街の中心部へと後退させ、ネルがそれを回復。
 リリは素早さを活かし、伝令や補給部隊へ回す。
 レイアは呪怨術で呪いの罠が仕掛けられると言うので、魔族の予想ルートへ罠を仕掛けることとなった。
 ある程度作戦が固まりつつあるところへ、伝令が入ってきた。

「報告します。冥海軍を監視しているものより入電。パレア・シンクロが冥海軍内に出現しました。転移術式と思われます。また、パレア・シンクロンの手に、【海神槍トリニティ】を確認したとのことです」

 伝令の内容に、ユーゴ以外の全員に緊張が走った。

──────to be continued

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

お読みいただき誠にありがとうございます。
この作品が
「面白い」 「続きが読みたい」 「推してもいい」
と少しでも思って頂けた方は、

①お気に入り 登録
②エールを送る(アプリ版のみ)
③感想を書く
④シェアする

をして頂ければ、作者のモチベーションアップや作品の向上に繋がります。
※お気に入り登録して頂きますと、新エピソードが投稿された際に通知が届いて便利です。
アマチュアである作者は皆様に支えられております。
この作品を皆様で盛り上げて頂き、書籍化やコミカライズ、果てはアニメ化などに繋がればいいなと思います。
この作品を読者の皆様の手で育てて下さい。
そして「この作品は人気のない時から知ってたんだぜ?」とドヤって頂けることが夢です。
よろしくお願いいたします。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

50歳元艦長、スキル【酒保】と指揮能力で異世界を生き抜く。残り物の狂犬と天然エルフを拾ったら、現代物資と戦術で最強部隊ができあがりました

月神世一
ファンタジー
​「命を捨てて勝つな。生きて勝て」 50歳の元イージス艦長が、ブラックコーヒーと海軍カレー、そして『指揮能力』で異世界を席巻する! ​海上自衛隊の艦長だった坂上真一(50歳)は、ある日突然、剣と魔法の異世界へ転移してしまう。 再就職先を求めて人材ギルドへ向かうも、受付嬢に言われた言葉は―― 「50歳ですか? シルバー求人はやってないんですよね」 ​途方に暮れる坂上の前にいたのは、誰からも見放された二人の問題児。 子供の泣き声を聞くと殺戮マシーンと化す「狂犬」龍魔呂。 規格外の魔力を持つが、方向音痴で市場を破壊する「天然」エルフのルナ。 ​「やれやれ。手のかかる部下を持ったもんだ」 ​坂上は彼らを拾い、ユニークスキル【酒保(PX)】を発動する。 呼び出すのは、自衛隊の補給物資。 高品質な食料、衛生用品、そして戦場の士気を高めるコーヒーと甘味。 ​魔法は使えない。だが、現代の戦術と無限の補給があれば負けはない。 これは、熟練の指揮官が「残り物」たちを最強の部隊へと育て上げ、美味しいご飯を食べるだけの、大人の冒険譚。

勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
クロード・ディスタンスは最強の魔法使い。しかしある日勇者パーティーを追放されてしまう。 勇者パーティーの一員として魔王退治をしてくると大口叩いて故郷を出てきた手前帰ることも出来ない俺は自分のことを誰も知らない辺境の地でひっそりと生きていくことを決めたのだった。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

処理中です...