ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神

文字の大きさ
100 / 160
めいでぃっしゅへようこそ! 編

100. 交換条件

しおりを挟む
 闘技場は、天蓋のない石造りのドーナツ状をしており、その内側は階段状の観覧席になっている。
 中央には石畳の敷かれた平坦な舞台。ここで戦士たちが戦うのだ。
 まだ開会前のようで、入り口には観覧希望の長蛇の列が出来ている。
 その列には加わらず、関係者らしき者をユーゴは捕まえた。槍を持った兵士風の装いをした男だ。似たような格好の者たちが居るので、関係者だろうという読みだった。
 果たして彼は関係者だった。
 だが彼に参加したい旨を告げると、驚きの答えが返ってきた。

「なに? 参加費が必要なのか?」

 ユーゴの言葉に、兵士は顔をしかめた。

「当たり前だ。それに参加費があったとしても、今日はチャンピオンシップ。年に一度の盛大な祭りだ。飛び入り参加は不可能だ」

「そこを何とかならないか?」

「ならん。無理なものは無理だ。さぁ帰った帰った」

 兵士が虫を払うように手を振った。

「ま、仕方ないか……」

 しぶしぶ諦めて立ち去ろうとした時、ユーゴたちに話しかける者が居た。

「おい、そこのお前。このチャンピオンシップに参加したいのか?」

 声をした方を振り向くと、そこには、高価そうな拵えの服を着た小男が立っていた。

「ド、ドネル様」

 兵士が驚いて小男の名を呼んだ。
 ドネルと呼ばれた男は、下膨れの顔の中央についた大きな団子鼻が特徴的で、睨めつけるようにユーゴを見ている。

「ああ。参加したい」

「貴様は、この国の者ではないな? 闘技場のルールを知らないのは、この国の男では非常識に過ぎる。隣国からの留学生か?」

「まぁ。そんなところだ」

「このチャンピオンシップに飛び入りで参戦したいと言うからには、ただの命知らずではあるまい。多少は腕っぷしに自信があるのだろうな」

「少なくとも、ここ百戦は無敗だな」

「ほう……」

 感心とも猜疑とも取れぬため息を漏らしたドネルは、ユーゴの後ろに控えるフィールエル達に視線をやった。

「そこの女たちは貴様の連れか?」

「あ? そうだが……?」

「そうか」

 確認したドネルは、にやりと厭らしさが滲んだ笑みを浮かべ、再び少女たちを視た。
 ぞわり。
 フィールエルもネルもパレアも雪も、全身を舐め回されるような悪寒を感じた。
 まるでドネルの眼球から放たれる視線が粘着性を帯びており、ねちっこく絡みついてこられているような。

「ワシはこの剣闘武会運営委員の一人であるドネル・ガリオーリというものだ。ちょうど一人、参加者に欠員が出てな。どうするか思案しておるところだった。その空いた枠に、お前を押し込んでやっても良い」

「本当かよ?」

「ああ。ただし、二つ条件がある。一つ目は、本戦の前に行われる余興戦に参加し、そこで対戦相手を倒すことだ。これは本戦に参戦する各地のチャンピオンたちを納得させるためのものだ。つまり、それだけの実力を示し、神聖なるチャンピオンシップに参戦する資格があると、チャンピオンたちを納得させねばならん」

「ああ、それで大丈夫だ。もう一つは?」

「二つ目は、お前がもし負けた場合、そこの女どもはワシの奴隷として貰い受けるぞ」

「な……っ!?」

 そのあまりの要求に、一行は言葉を失った。

「当然だろう。チャンピオンシップで優勝すれば莫大な賞金が手に入る。参加費もなしでそれに挑もうというのだ。それくらいのリスクを背負ってもらわねばな」

 パレアの通訳で、聖女二人も事の重大さが理解できた。

「ちょっと! アタシ達は物じゃないのよ。バカじゃないの!?」

「私は、それで構いません」

 パレアに噛みつかれたドネルに、ネルが決然と言い放った。

「ネル、お前……」

「私はユーゴさんを信じています」

 ひとまず軽挙をたしなめようとしたユーゴに、ネルは真摯な眼差しを向けて告げた。

「ボ、ボクも信じているぞ、ユーゴ。だからボクもそれで良い!」

「も、もちろん、アタシもよ!」

「私もです」

 フィールエル、パレア、雪も慌ててユーゴへの信頼をアピールしたが、ユーゴとしては、おいそれと呑める条件ではない。

「あのな、別にここで変に高いリスクを負って賞金を狙わなくても、他に安全に稼ぐ方法はあると思うぞ?」

 妙な方向にヒートアップしだした少女たちを諫めるようとしたユーゴだが、

「大丈夫です。ユーゴさんならやれます!」

「なんだユーゴ。自信がないのか?」

「アタシが信じてるって言ってるんだから、大人しくやりなさいよ!」

「旦那さまの勇姿、雪に見せてくださいまし」

 励ましたり挑発したりけしかけたりプレッシャーをかけたりと、好き勝手な反応を見せる少女たちに、ユーゴは「ええ~……?」と鼻白むしかない。
 何なの、コイツら……?

「くくく。どうやら多数決で決まったようだな。では、ユーゴといったな。貴様の参加を認めよう。───おい、この男を控室まで連れて行け。それと、しっかりとをしておけよ」

 台詞の後半は兵士風の男に向けて命令し、ドネルは立ち去っていった。

「……ったく。どうなっても知らねぇぞ」

 この成り行きに頭をかきつつ、ユーゴはぼやいたのだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 控室には、緊張した面持ちで出番を待つ男たちが居た。
 誰も彼もが、貧相な体つきである。
 身体が慄えているものも居たが、どこか恐怖に耐えるような表情であるので、とても武者震いには見えない。

「こいつらが各地のチャンピオンってやつか?」

 ユーゴは、案内係となった兵士風の男に訊いた。

「いや、お前と同じ余興戦の参加者たちだ」

「は? バトルロイヤルでもすんのか?」

「すぐに判るさ。───では今からこの闘技場での試合の説明を始める。闘士同士は武舞台で戦闘を行う。武器の使用は認められるが、飛び道具は認められない。勝敗は相手を殺すか気絶させるかによって決まる。また、相手を場外に落とすか降参させるかでも、その試合は終了となる。ただし、これは本戦においてのルールであって、お前たち余興戦のルールは非常にシンプルだ。相手を殺すか、お前たち全員が殺されるかのどちらかだ。そしてもし勝利した暁には、ユーゴという者には全十七名で行われる本戦への参加資格を、それ以外の者達には奴隷身分からの開放を約束しよう。ではお前たち、協力しあって、せいぜい死なないよう頑張れよ」

 そしてユーゴを含めた十人の出場者達に、新品ではあるがあまり上等ではない造りの剣が渡された。
 何となくだが、ろくでもない事態が待ち受けている予感をユーゴは感じた。
 そして十人全員で舞台に上がり、反対側の入口に柵が上がって、のしのしとそこから現れたを見てその予感が正しいことを知った。

「なるほど。趣味が悪ぃな」

 成人男性の全身ほどの太さと長さをもつ四本の足を動かし、舞台に上がったその生物。
 ユーゴの記憶の中に近い生物を探し出せば、ライオンになるだろう。
 ライオンを一回り大きくした身体には、黄色の体毛が顔面以外の全身を覆い、その眼光は明らかに血に飢えている。

「つまり、全員でコイツを殺るか、コイツに殺られるかってわけか」

 闘技場の見世物としては、まぁこんなところかと溜息を吐き、ユーゴは剣を構えた。

「いいぜ。かかって来い」


小説追記文

──────to be continued

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

お読みいただき誠にありがとうございます。
この作品が
「面白い」 「続きが読みたい」 「推してもいい」
と少しでも思って頂けた方は、

①お気に入り登録
②エールを送る。
③感想を書く
④シェアする
⑤いいね

をのどれかをして頂ければ、作者のモチベーションアップや作品の向上に繋がります。

※お気に入り登録して頂きますと、新エピソードが投稿された際に通知が届いて便利です。
アマチュアである作者は皆様に支えられております。
この作品を皆様で盛り上げて頂き、書籍化やコミカライズ、果てはアニメ化などに繋がればいいなと思います。
この作品を読者の皆様の手で育てて下さい。
そして「この作品は人気のない時から知ってたんだぜ?」とドヤって頂けることが夢です。
よろしくお願いいたします。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...