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めいでぃっしゅへようこそ! 編
126. ミュー
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寮の正面玄関の前に出たユーゴ。同時にドネルと兵たちも正門に到着した。
「よう、チビハゲオヤジ。来るのが意外と遅かったな」
「その声……まさか貴様、変態王か?」
兵の中から先頭へ出てきたドネルに声を掛けたユーゴ。
漆黒の鎧に包まれた彼を、ドネルが指差す。
「お前が探してんのは、俺で間違いねぇよ。でも変態王って言うな。このチビデブハゲオヤジ。」
「ふん、減らず口を叩きおって。そんな全身甲冑を着込んでおるという事は、ワシが兵を率いて来るのは予想しておったようだな。しかし、いくら貴様が強かろうと、この兵力の前にはひとたまりもあるまい。貴様も、貴様に加担したこの邸の者共も纏めてひっ捕らえてくれるわ!」
憤怒の形相で喚くドネルに、ユーゴは両手を上げて首をひねる。
「へー。どんな理由でだ? 俺たちは何も悪いことはしてねぇぜ」
「白を切っても無駄だ。貴様の雇い主と桃色の髪のメイドがこそこそ嗅ぎ回っておったのは調べがついておる。そいつらは町民への暴行罪、そしてワシの邸に忍び込んおった貴様は住居侵入、窃盗、侮辱、誘拐、その他諸々の罪。この邸におる者は貴様らを匿った隠匿罪だ。だが貴様だけはワシが直々に裁いてやる。逆らっても無駄だ。おとなしくお縄に付け」
「裁くって、お前にそんな権限あるのかよ。で、逆らったらどうなるんだよ?」
「貴様の目は節穴か。これが目に入らぬのか?」
ドネルがさっと右手を挙げると、これを合図に寮の敷地内に兵隊が雪崩込み、数十もの銃口をユーゴに向けた。
「いや~ん。アタシ、怖~い。変態貴族のドネルちゃまに殺されちゃう~」
ユーゴは両手をピーカブースタイルのように口元に持っていき、全身をくねくねさせてた。それもいかついヒーロー姿であるため、気色悪いことこの上ない。
「どうやら本当のうつけだったようだな。それとも銃を知らんのか? 痛い目に遭わんと理解できんらしい。仕方ない」
ドネルは直近の兵の一人に向けて命じる。
「おい。あの馬鹿の腿に一発、撃ち込んでやれ」
「はっ!」
兵は狙いをつけ、銃爪を引いた。
パンッ! という銃声を発し、弾丸は過たずユーゴの太腿へ命中した。だが───
キン。
甲高い金属音が虚しく響き、銃弾はエクスブレイバーの鎧に弾かれた。
「む……。何だと? 安物の鎧など貫通するはずだが……。運が良いな。どうやら入射角が悪かったらしい。おい、何発か同時に撃ってやれ。なに、死んだらそれまでだ」
爆竹のような発砲音が鳴り響く。しかし───
「な、なんだと……?」
冷や汗を流すドネル達の先には、傷ひとつ無いユーゴの姿。
「まさか、あの硬度は……ガルンダイト製の鎧なのか? しかし、あれは王家にしかないはず。それに銀色ではない……。何なのだ、あの鎧は?」
あり得ない現実に戦慄するドネルたちに、ユーゴは首をこきりと鳴らして告げる。
「んじゃそろそろ、俺は俺の仕事をさせてもらおうか」
ユーゴは【無限のおもちゃ箱】で亜空間の扉を開き、虚空からアーモンド型の何かを取り出した。
金属性の光沢を持ち、薬のカプセルのようにオレンジとスカイブルーの二色で塗り分けられているその物体は、成人男性が両手で抱き上げるほどの大きさである。
ユーゴはその物体に声をかける。
「目覚めろ、【ミュー】。お前の出番だ」
ユーゴの声に反応し、物体のオレンジ色の部分が先端から口を開ける。あたかも貝のように。
開口部には、一匹の小動物が眠っていた。
夕焼け空のようなオレンジ色の体毛に包まれたその動物は、見た目は猫に近い。
ミューと呼ばれたその生物はパチっと目を開くと、「ミュウ」と鳴いて伸びをした。
キョロキョロと辺りを見渡して御主人様を発見すると、その脚に己の体を擦り付けた。
「ミュー。起きたばかりで悪いが、やつらが待っている鉄製の武器を錆びつかせてくれ」
「ミュウ~」
「なに? 全部は無理だって? それなら、銃だけでも出来るか?」
「ミュウ!」
元気よく返事したミュウは、滑らかにユーゴの身体を駆け登る。
そのまま左肩に乗ると、ドネルの私兵達をじっと眺めた。
「ミュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!」
ミューがひときわ大きな鳴き声を上げた。
すると炎のように煌めく霧が生じ、兵士たちを包み込んだ。
「な、なんだ……?」
「銃が……錆びついている!?」
「何が起こっているんだ!?」
自分たちが目撃する不可解な現象に、兵士たちは恐慌をきたす。
さもありなん。剣よりも強く、己が頼りにしている兵器がみるみる朱い錆を浮き上がらせ、朽ちていっているのだから。
この生物の名は神造生物兵器【μ】。
女神の依頼達成の報酬の一つであるミューは、もちろんただの生命体ではない。
神の手で造られた、謂わば神獣であり、類稀なる能力を有している。
ミューの能力。それは “元素の操作” である。
一日五回という回数制限や、操作する元素の量により範囲や効果が変化するが、強力無比といえよう。
今回ミューは兵の周囲に漂う酸素を操って、鉄を酸化させたのだ。
ボロボロと崩れていき、虫食いだらけになった無用の長物を所在なく眺める兵士たち。そんな彼らをドネルが叱責する。
「貴様ら、何をしておるか!!」
「し、しかしドネル様。突然、銃が……」
「わけが分からぬ事を、いつまでも考えておる者があるか! 呆けとらんでヤツを捉えんか! 銃が無ければ剣があるだろうが!」
ドネルの言葉に銃を棄てて剣を抜いた兵士たちは、ユーゴを睨みつける。
ユーゴが彼らを睥睨していると玄関の扉が開き、聖女二人と巫女が飛び出してきた。
「ユーゴ、無事か!? ……なんだその動物?」
「拾った。そんなことより正面の防衛は任せたぞ」
「拾った? また適当な事を……。まぁいい、了解だ」
フィールエルは館に飾ってあった模造剣を、ネルは愛用の杖を、雪は打刀と小太刀を二刀流で、それぞれ構えた。
「全員捕らえろ!」
ドネルの号令で兵士たちが突撃してくる。
「雪は正面も衞れ。神聖術の使えないネルは左、フィールエルは右へ散って雪をフォローを頼む」
「かしこまりました、旦那様」
三人は三方向へ進み出て防衛ラインを築き、襲いかかる兵士達との戦闘が始まった。
「よう、チビハゲオヤジ。来るのが意外と遅かったな」
「その声……まさか貴様、変態王か?」
兵の中から先頭へ出てきたドネルに声を掛けたユーゴ。
漆黒の鎧に包まれた彼を、ドネルが指差す。
「お前が探してんのは、俺で間違いねぇよ。でも変態王って言うな。このチビデブハゲオヤジ。」
「ふん、減らず口を叩きおって。そんな全身甲冑を着込んでおるという事は、ワシが兵を率いて来るのは予想しておったようだな。しかし、いくら貴様が強かろうと、この兵力の前にはひとたまりもあるまい。貴様も、貴様に加担したこの邸の者共も纏めてひっ捕らえてくれるわ!」
憤怒の形相で喚くドネルに、ユーゴは両手を上げて首をひねる。
「へー。どんな理由でだ? 俺たちは何も悪いことはしてねぇぜ」
「白を切っても無駄だ。貴様の雇い主と桃色の髪のメイドがこそこそ嗅ぎ回っておったのは調べがついておる。そいつらは町民への暴行罪、そしてワシの邸に忍び込んおった貴様は住居侵入、窃盗、侮辱、誘拐、その他諸々の罪。この邸におる者は貴様らを匿った隠匿罪だ。だが貴様だけはワシが直々に裁いてやる。逆らっても無駄だ。おとなしくお縄に付け」
「裁くって、お前にそんな権限あるのかよ。で、逆らったらどうなるんだよ?」
「貴様の目は節穴か。これが目に入らぬのか?」
ドネルがさっと右手を挙げると、これを合図に寮の敷地内に兵隊が雪崩込み、数十もの銃口をユーゴに向けた。
「いや~ん。アタシ、怖~い。変態貴族のドネルちゃまに殺されちゃう~」
ユーゴは両手をピーカブースタイルのように口元に持っていき、全身をくねくねさせてた。それもいかついヒーロー姿であるため、気色悪いことこの上ない。
「どうやら本当のうつけだったようだな。それとも銃を知らんのか? 痛い目に遭わんと理解できんらしい。仕方ない」
ドネルは直近の兵の一人に向けて命じる。
「おい。あの馬鹿の腿に一発、撃ち込んでやれ」
「はっ!」
兵は狙いをつけ、銃爪を引いた。
パンッ! という銃声を発し、弾丸は過たずユーゴの太腿へ命中した。だが───
キン。
甲高い金属音が虚しく響き、銃弾はエクスブレイバーの鎧に弾かれた。
「む……。何だと? 安物の鎧など貫通するはずだが……。運が良いな。どうやら入射角が悪かったらしい。おい、何発か同時に撃ってやれ。なに、死んだらそれまでだ」
爆竹のような発砲音が鳴り響く。しかし───
「な、なんだと……?」
冷や汗を流すドネル達の先には、傷ひとつ無いユーゴの姿。
「まさか、あの硬度は……ガルンダイト製の鎧なのか? しかし、あれは王家にしかないはず。それに銀色ではない……。何なのだ、あの鎧は?」
あり得ない現実に戦慄するドネルたちに、ユーゴは首をこきりと鳴らして告げる。
「んじゃそろそろ、俺は俺の仕事をさせてもらおうか」
ユーゴは【無限のおもちゃ箱】で亜空間の扉を開き、虚空からアーモンド型の何かを取り出した。
金属性の光沢を持ち、薬のカプセルのようにオレンジとスカイブルーの二色で塗り分けられているその物体は、成人男性が両手で抱き上げるほどの大きさである。
ユーゴはその物体に声をかける。
「目覚めろ、【ミュー】。お前の出番だ」
ユーゴの声に反応し、物体のオレンジ色の部分が先端から口を開ける。あたかも貝のように。
開口部には、一匹の小動物が眠っていた。
夕焼け空のようなオレンジ色の体毛に包まれたその動物は、見た目は猫に近い。
ミューと呼ばれたその生物はパチっと目を開くと、「ミュウ」と鳴いて伸びをした。
キョロキョロと辺りを見渡して御主人様を発見すると、その脚に己の体を擦り付けた。
「ミュー。起きたばかりで悪いが、やつらが待っている鉄製の武器を錆びつかせてくれ」
「ミュウ~」
「なに? 全部は無理だって? それなら、銃だけでも出来るか?」
「ミュウ!」
元気よく返事したミュウは、滑らかにユーゴの身体を駆け登る。
そのまま左肩に乗ると、ドネルの私兵達をじっと眺めた。
「ミュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!」
ミューがひときわ大きな鳴き声を上げた。
すると炎のように煌めく霧が生じ、兵士たちを包み込んだ。
「な、なんだ……?」
「銃が……錆びついている!?」
「何が起こっているんだ!?」
自分たちが目撃する不可解な現象に、兵士たちは恐慌をきたす。
さもありなん。剣よりも強く、己が頼りにしている兵器がみるみる朱い錆を浮き上がらせ、朽ちていっているのだから。
この生物の名は神造生物兵器【μ】。
女神の依頼達成の報酬の一つであるミューは、もちろんただの生命体ではない。
神の手で造られた、謂わば神獣であり、類稀なる能力を有している。
ミューの能力。それは “元素の操作” である。
一日五回という回数制限や、操作する元素の量により範囲や効果が変化するが、強力無比といえよう。
今回ミューは兵の周囲に漂う酸素を操って、鉄を酸化させたのだ。
ボロボロと崩れていき、虫食いだらけになった無用の長物を所在なく眺める兵士たち。そんな彼らをドネルが叱責する。
「貴様ら、何をしておるか!!」
「し、しかしドネル様。突然、銃が……」
「わけが分からぬ事を、いつまでも考えておる者があるか! 呆けとらんでヤツを捉えんか! 銃が無ければ剣があるだろうが!」
ドネルの言葉に銃を棄てて剣を抜いた兵士たちは、ユーゴを睨みつける。
ユーゴが彼らを睥睨していると玄関の扉が開き、聖女二人と巫女が飛び出してきた。
「ユーゴ、無事か!? ……なんだその動物?」
「拾った。そんなことより正面の防衛は任せたぞ」
「拾った? また適当な事を……。まぁいい、了解だ」
フィールエルは館に飾ってあった模造剣を、ネルは愛用の杖を、雪は打刀と小太刀を二刀流で、それぞれ構えた。
「全員捕らえろ!」
ドネルの号令で兵士たちが突撃してくる。
「雪は正面も衞れ。神聖術の使えないネルは左、フィールエルは右へ散って雪をフォローを頼む」
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