ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神

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セイクリッド・マテリアル編

137. 思いがけないVIP客

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「ゼフィを疑うわけではないが……俄には信じがたいな」

 険しく眉間に皺を作って、カイトが呻いた。

「僕は信じるよ、ゼフィ。それよりも、僕は君のことが心配だ。君の侍女が有能なのは知っているが、首を突っ込むのは程々にしてくれないか」

「大丈夫よ、ロイ。私が直接なにかをしているわけじゃないし」

「ゼフィの大丈夫を聞くときは、必ず何かが起こりますわ」

 マルガレーテは過去の何かを思い出したのか、遠い目をした。

「話は承知しました。ではベレッタお嬢様は、ここで教会から身を隠しているのですね?」

 鉄太がベレッタに問うた。

「はい。このお邸はゼフィのお知り合いが所有するもので、ここでお世話になっています」

「分かりました。私にも腕利きの情報屋に当てがあります。何か情報を掴んだら、お報せします。他にもなにかご入用でしたら、遠慮なくおっしゃって下さい」

「サクマ卿……いえ、テッタさん。ありがとうございます。でも決して、ご無理はなさらないで下さい」

「いえ……お嬢様にはも輝星もお世話になりましたから」

 感激に瞳を潤ませるベレッタから赤面で目を逸らして、鉄太は頬をポリポリと掻いた。

「じゃあ俺、もとい私はこれで失礼します。ユーゴさん、行きましょう」

「おう」

 鉄太に促され、ユーゴは立ち去るために踵を返す。

「あ……」

 そんなユーゴに声をかける者が居た。
 中途半端に手を伸ばしたまま固まっている、ゼフィーリアだ。

「? まだ何か用か?」

「……いえ、何でもないわ。今日はわざわざお越しいただきありがとう。道中、お気をつけて。ごきげんよう」

 スカートの裾をつまんで淑女の礼をするゼフィーリアに手を上げて、ユーゴは鉄太とともに帰路についた。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 それから三日後。
 あいも変わらず令嬢を相手に接客を続けるユーゴへ、執事ボーイが声をかける。

「ユーゴさん、ご指名です。ご新規のお嬢様です」

「おう。どこの席だ」

「それが……VIP席です」

「VIP? 珍しいな」

 ユーゴの噂を聞きつけた令嬢が新規来店でユーゴを指名するのことはままあるが、それに加えていきなりVIP席を指定することは極めて稀だ。
 VIP席は店内奥にある広めの個室で、防音仕様になっている。室内には椅子が一脚とテーブルが一台。どちらも最高級のブランド物を設置してある。
 令嬢はこの密閉された空間で、お気に入りの騎士を独占できる───つまりVIPを利用した令嬢に付いた騎士は、他の令嬢からの指名を断ることができるということで、その分支払う料金も跳ね上がってしまう。
 タイミングよく、現在接客中の令嬢のお会計おでかけとなり、ユーゴはそのままご新規お嬢様が待つVIP席へと向かった。
 扉を開けた瞬間にユーゴの鼻腔を満たしたのは、バニラのような甘ったるい香り。
 どこかで嗅いだ覚えがあると思ったが、椅子に座って待っていた人物を見て、ユーゴはどこで掻いだのかを思い出した。

「三日振りかしら、勇悟?」

「あんた……確か、ゼフィーリア・バーグマンだったか?」

 そう。そこにいたのは、三日前に知り合ったバーグマン伯爵家の令嬢である。
 今日のゼフィーリアはフリルがあしらわれた、彼女の瞳と似た薄紫色のドレスと、頭には同色のヘッドドレスを着ている。
 ドレスのデザインは先日よりも派手で、イヤリングやペンダントなども多め。めかし込んだお出かけスタイルである。

「そうよ。皆と同じようにゼフィで良いわよ」

「初対面の時も思ったが、あんた距離の詰め方が結構エグいよな」

「よく言われるわ。でもここまでするのは勇悟だからよ」

 どういう意味だ?
 意図を図り兼ねる意味深な発言だが、ユーゴは敢えて触れないことにした。

「それにしても、よく俺が働いている店がわかったな。何を飲む?」

 メニューを聞きながら、ユーゴは尋ねた。

「ちょっと調べたらすぐ判ったわよ。ライラに頼むまでもなかったくらい、あなた有名人じゃない。あ、この後お仕事だから、アルコール以外で美味しいものをお願い」

「噂ってのは尾ひれが付くものだからな。信憑性は三分の一で考えたほうがいいぜ」

 VIP席には専用のバーカウンターがある。
 バーカウンターの棚から、ユーゴは三本の果実水の瓶を取り出した。それぞれオレンジ、レモン、パイナップルに似た風味で、それらを三分の一ずつクラッシュドアイスと共にシェイカーにいれて振る。
 そこでユーゴはあることに気づいた。

「仕事? あんた伯爵家の令嬢だよな。働く必要なんて無いだろ?」

「確かに働く必要なないわねー。実家は裕福だし。まぁ伯爵家うちレベルの貴族子女だと、ほとんどがお嫁に行くか社交界で男漁りしてるか遊び回っているかだし、私みたいなのは珍しいかも。でも普通のお嬢様生活って、意外と退屈なのよ。だから私は、そこの ”ひまわり座” で歌手として働いているわけ」

 そういえばホワイトホースの近くに大きな歌劇場があったこと、更に、ゼフィーリア・バーグマンが ”奇跡の歌姫” と呼ばれていることをユーゴは思い出した。
 ユーゴはカクテルグラスにシェイクした液体を注ぐ。酸味のある、やや甘めのノンアルコール・カクテルで、シンデレラ・カクテルに近い味になっている。

「美味しいわ、これ。ありがとう」

「ところで、俺によっぽど大きな用があるようだな。知り合ったばかりのやつに、決して安くはない費用をかけて会いに来るなんて、義理にしては不自然だ」

「あら、分からないわよ。もしかしたら私があなたに一目惚れして、のぼせ上がっているかもしれないじゃない」

 悪戯っぽい微笑を浮かべ、ゼフィーリアはもう一口、カクテルを飲んでいった。

「あんたの言い分を否定する根拠はないが、それはなんとなく違う気がする。そういう女は数多く見てきたが、あんたからはソイツらみたいな、浮ついた感じがしねぇんだよな」

 それを聞いたゼフィーリアは、途端に口を尖らせた。

「ふーん。数多くいたんだ。へぇ~」

「……? なんだ?」

 ゼフィーリアの拗ねたような反応に、ユーゴは困惑。
 まさか、本当に色恋絡みか? だとしたらまた面倒なことにならないよな?
 ユーゴの頭の中を駆け巡るクエッションマークの事などお構いなしに、ゼフィーリアは更に大きな疑問を衝突させる。

「まぁいいわ。たしかに私は勇悟に話があるの。貴方の正体について、ね。私は噂以上に貴方のことを知っている」

「俺のことを……?」

「高遠勇悟。九月十八日生まれ。五歳の時、母親とともに池袋のマンションへ引っ越す。中学は地元の学校へ進み、高校時代は格闘技に没頭していた。十七歳の時にお母さんが亡くなって、天涯孤独になった───と言っているけれど、実は血の繋がったお父さんは生きているし、母親違いの弟が二人いる」

「……てめぇ、何者だ?」

 ゼフィーリアはユーゴの質問に、妖しい笑みで答えた。

「さぁ? 当てて御覧なさい」
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