ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神

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セイクリッド・マテリアル編

139. ゼフィーリアの正体②

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「仕方がないとはいえ、をちょっと疑い過ぎじゃない?……てか勇悟も、そんなに赤くなるなら言わせなきゃ良かったのに」

「うるせぇな。しかし、まいったな。少々のことじゃ驚かないくらいの経験は積んでるつもりだったが……」

 ユーゴはVIP室の外から持ってきたスツールに腰掛けながら、バツが悪そうに言った。

「まさか地球での知り合いと、異世界でエンカウントするとはな……」

「それはこっちのセリフなんだけど。なんで勇悟がここにいるのよ?」

 さて、どう説明したものか。
 ゼフィーリアからすれば、ユーゴは恐らくこの世界で初めて会う地球人の筈だ。
 しかも今まで遭遇してきた被転送者たちと同じパターンだとすると、彼女自身、なぜこの世界にいるのか理由が解らないはず。
 逆に、いままでの被転送者たちと違う点として、ゼフィーリア───楓香はユーゴのことを既に知っている。
 さらに、これまでユーゴが見聞きした情報では、フィールエルやベルタリオたちとは異なり、ゼフィーリアは荒事とは無縁の生活を送ってきたはずだ。
 徒に不安を煽るような話は軽々にすべきではないだろう。【古き神々】の手が、必ずしもゼフィーリアに伸びるとは限らないのだから。
 これらを加味して、与える情報の取捨選択をしなければならない。

「そうだな……信じられるかは分からないが、俺は地球とは環境も常識も違う、いわゆる異世界を渡り歩いているんだ」

「異世界を、渡り歩く……? それってどういうこと?」

「それについて説明はする。しかしその前に、俺も気になっている事を訊いていいか?」

「いいわ。なに?」

「お前が俺の知っている藤本楓香で間違いないことは、確信した。だがそれは “中身” の話で、肉体や周囲の認知も含めて、その存在は楓香とは異なる “ゼフィーリア” という人間のものだ。俺は似たような境遇の人間に心当たりがある。お前がそいつらと似た事情にあるとすれば……言いにくいが、楓香、お前死んだのか?」

 問われたゼフィーリアは静かに瞼を閉じ、カクテルに口をつけた。

 ”前世の自分の死”

 藤本楓香としての記憶が蘇って以来、何度も考えたことだ。
 ”藤本楓香”の最後の記憶。
 夢とは思えないほどリアルなこの世界。
 ゼフィーリアとして生きている実感。

「……たぶん、そう。私……いえ、藤本楓香は二十二歳の時に、交通事故に遭って死んだのだと思う。この世界でゼフィーリア・バーグマンとして生まれて、その事を思い出したのは七歳の時よ。最初は錯乱寸前だったわ。いきなり別の人間の記憶が頭の中に出てくるんだもの。でもこの世界が【セイクリッド・マテリアル】の世界って認識したら、徐々に受け入れられるようになって、しばらくしたら落ち着いたわ」

「【セイクリッド・マテリアル】? なんだそりゃ?」

「なんだそりゃって……勇悟、それがわかっててこの世界で生きてきたんじゃないの?」

「いや……全く意味がわからん。なんの話だ?」

 二人はお互いに首を捻った。

「【セイクリッド・マテリアル】は、ゲームよ。乙女ゲームのタイトルの一つ」

「乙女ゲーム?」

「そういや貴方、ゲームとかしなかったわよね。乙女ゲームっていうのは、主人公の女の子キャラクターが、男の子ばかりの攻略対象と恋愛してエンディングまで進めていくっていう、運命選択型のゲームのこと。シナリオを進めていく過程で出てくる選択肢のどれを選ぶかによって、主人公の行動が変わって物語の結末も変わる。【セイクリッド・マテリアル】っていうゲームの世界観に、この世界は瓜二つなの。マール───マルガレーテもロイもカイトも、そのゲームに出てくる登場キャラクターに名前も見た目も同じ。当然、この私───ゼフィーリア・バーグマンも登場人物の一人。まぁモブ中のモブだったけど。ベレッタなんて主人公なんだから」

 ゼフィーリアの回答は、ユーゴをさらなる混乱へと招いた。

「どういうことだ……?」
 
 ユーゴは腕組して、小声で呟いた。ゼフィーリアに対してではなく、独り言として。
 この世界が乙女ゲームの世界で、楓香は死後、そのキャラクターの一人として生まれ変わった?
 ユーゴとしては初めて遭遇するパターンだった。
 もしかして自分が知らなかっただけで、今まで訪れた世界も何らかのゲームの世界だったのではないだろうか。
 ……いや、違う。この世界だけ特殊なんだ。
 ユーゴはユーラウリアの言葉を思い出した。
 この世界───仮に【セイクリッド・マテリアル界】と名付ける───は、何度もループを繰り返す閉鎖的な世界なのだと。
 このセイクリッド・マテリアル界と地球での乙女ゲームとの関連は分からないが、全く無関係というわけではないだろう。
 しかしそうと断定するには、今は判断材料が少なすぎる。
 次にあの女神に会ったら、問い詰めるしかない。

「俺はセイクリッドなんちゃらなんて知らずに、この世界へ迷い込んだんだ。俺たちは別の世界へ移動していたはずだが、目的地が何故かズレてしまってな」

「そうなのね。っていうか、?勇悟ひとりじゃないの?」

「ん? ああ、一緒に旅をしているがいる」

「それってもしかして、サクマ卿じゃない? この間始めてサクマ卿の事を知ったけど、名前とか見た目とか、もろに日本人よね」

 自説に自信たっぷりのゼフィーリアは、テーブルに身を乗り出して言った。

「残念。鉄太は旅の道連れじゃない。日本人かどうかは俺の口からは言えないな。本人に訊いてみろよ」

 鉄太自身は己の出自を隠してはいないが、かといってユーゴからバラすのも筋違いである。

「わかった、そうするわ。それで、異世界を渡り歩いているっていうのは、どういうこと? それに勇悟、急にいなくなって今まで何をしていたの?」

 ユーゴはとある偶発的な事故により、地球を離れる羽目になってしまった。
 突発的だったため、事情を知らないものからすれば、失踪したように思われても仕方がないことなのかもしれない。

「仕事中の事故で、こことは違う異世界へ飛ばされてな。その後、女神なんて存在と知り合って、今はソイツの頼まれごとで色んな世界を渡ってるんだ。今回の任務は、地球から異世界へ来た人間を探し出すことだ。ちょうどお前みたいなやつをな」

「女神ぃ?」

「まぁそこは信じなくてもいい。自分の目で見なきゃ信じられないだろうし……いや、アイツは見たところで信じられないか」

 ユーゴの脳裏に、陽キャなギャル女神がエッグポーズで映った。

「? よく分からないけれど、私みたいな人を探してるって、どういうことなの?」

「詳しいことは俺も分からねぇが、どうやら連絡を取れるようにしておきたいようだな。被転送者ってのは珍しいみたいだし」

「そうなのね。そういえば女神? と知り合いなら、なぜ私がこの世界に生まれ変わったのか、勇悟は解る?」

「いや、俺には解らないな」

「そう……」

「ああ、そうだ。この話の流れで、ついでにこれを渡しておくか」

「え、なにこれ。スマートウォッチ?」

「似たようなもんだが、ちょっと違う。使い方は───」

 ユーゴの説明を受け、スペリオールウォッチを左手に装着したゼフィーリアは、それを見つめながらニマニマと頬を緩めている。

「……なんだよ、その顔は?」

「いや、勇悟からのプレゼントって、あんまり記憶に無かったから」

「これはそういうんじゃねーよ。っていうか、お前がここに来た目的は、俺が高遠勇悟だって事を確認することだろ? それが終わったんならもう帰れよ。こう見えて俺は、意外と忙しいんだ」

「うん。それは目的の三分の一ね。貴方が勇悟だって確認できたことで、2つ目の話を伝える覚悟ができたわ」

「なんだよ」

「一年前のクーデター事件。あれの本当の真相を話そうかと思って」

「本当の……真相?」

「うん。クーデター事件の真相。その真相よ」
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