津軽藩以前

かんから

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野崎村焼討 元亀一年(1570)初冬

密談 9-4

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 為信は考えた。……譜代の臣と他国者の違いに限らず、力のある者が見いだせればさぞ喜ばしいことか。正直これまで目を内側にやるのを疎かにしていた。それは元々彼らが“婿殿”という蔑視により協力的ではなかったことが原因だ。
 
 為信の力が認められた今、改めて家来の力量を把握するいい機会かもしれない。

 「来年は必ず大きな戦が起こる。新しい戦いの仕方にも対応できるように、兵の訓練をしようと思う。その時に譜代の家来には、小笠原以上の活躍をすることを期待する。」

 兼平は“よきお考えかと存じます” と相槌をうつ。森岡も同意する。

 「働きが良き者には、それ相応の立場も与え、格を引き上げようと思う。」

 
 中央では織田家が徹底した能力主義を敷いているという。新しい戦の時代はきっと、能力高く変化に対応できる者が勝つ。火縄を入手できれば勝ちというわけではない。ないならないで、あるものでどう強くできるか、考えることのできる者が上にいるべきだ。

 為信は続ける。

 「なるべく実戦に近い形で……雪降る前に行いたい。そうだな……ひとつの村ごと借り切って、演習を行いたい。」

 戦はなにも平原ばかりで行われるわけではない。浜辺があれば、森林もある。なかでも民家ほど厄介なものはない。いくらでも隠れることができ、民衆に紛れることもできる。誤って民を討てば……その土地からの支持は得にくい。

 しかし……どこでやるか。兼平は即答こそしなかったが、ひとつ案をだす。

 「野崎村はいかがでしょう。」

 近くに川と森があり、様々な訓練ができる。特にこの村の家々は寂れており、火攻めをしたとしても新たに立て直せばよい。民にしても、新しい家が与えられてさぞ満足することだろうと。

 「殿。では準備が整い次第、皆に伝えましょう。」

 だが、ざわと為信は止めた。ある心積もりを持つ。
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