津軽藩以前

かんから

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大光寺の戦い 天正四年(1576)正月

見果てぬ夢 19-5

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 沼田は一人、敵の様子を探るため農夫に扮する。大光寺城の兵らは意気揚々で、為信が攻め来るのを今か今かと待ち受けているようだ。かつて堀越騒動でしたように……民らにも石を投げさせ、枝葉を道に置かせるつもりだ。

 ……やすやすと攻め滅ぼすことはできないだろう。さすがは滝本、味方ならさぞ頼もしいこと。


 ……大浦軍は、大光寺を包囲したまま夜を迎えた。松明を大いに焚かせ、大軍であることを敵に示す。しかし、大光寺勢は怯まない。滝本は城兵を鼓舞し、意気を高めた。

 さて、次の日に移る。為信は第一陣と第二陣を城へ近づけさせ、太鼓など音のなる道具で挑発しようと仕掛ける。滝本は動かず。彼もまた”ならばこちらも”と法螺などを吹いて城から出てくるのかと身構えさせたり、笛に歌をのせて諳んじたりした。

 二日目も、刃を交えることなく終わる。

 三日目となり、空が少し怪しくなり始めた。ここらが頃合いだと為信は思い、北の兵以外のすべてに城への攻撃を命じた。

 大浦軍がこちらに動く。……勝負をかけてきたなと滝本は考えた。……よし、城をおとりとして、七百だけ分けて出陣する。林を抜け、為信の本陣を狙う……。

 城内にいた沼田はこの動きを知らせるため、本陣へと戻ろうとする。まんまと抜けることはできたが……滝本の急な動きについていけず、しかも為信の本陣も城へ向かって動いているため、正確な位置が分からない。

 第一陣と第二陣は何も知らないまま、大光寺城へと襲い掛かる。中の城兵は必死に抵抗し、互いに無傷ではいられなかった。火縄でも狙ってくる。
 乳井と小笠原は先頭に立ち、門を壊そうとかかる。……少しして門は破れたが、足の裏に石や草の棘が刺さる。多くの兵が痛みを訴えた。いくら草履をはいていたところで、激しく動くうちにやぶれさる。こうして勢いは削がれた。

 暗くなってきたので、一旦引き上げようと後ろへ下がろうとすると……突然大声をあげて、農夫らが鎌を携えて襲ってきた。慌てて逃げる兵らだが、城から出た後も追ってくる。一面に広がる田んぼに足を取られ、殺される者も多く出てしまう。
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