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天星界のこと
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「愛美たちからも聞いているだろうが、俺たちは天星界という異世界から来た人間だ。そこまではいいな?」
「はい…」
「よし、そしたらまずは、その天星界のことから話そうか。天星界は、俺たちが今いる地球…我々は地星界と呼んでいるんだが、ここより遥か上空に位置しているんだ。まるで鏡合わせのようにな」
「鏡合わせ…」
「そう。そしてこの二つの世界は、見た目も暮らしている生物も、ほぼ変わりない。存在する国名も全く同じだ。違いがあるとすれば、天星界の方が時間経過が早いこと。簡単に言えば、地星界より何百年という未来を生きていることになる。そして…"霜星力"が、こちらの世界にしかない、エネルギーとも、生命力とも言える存在」
「そうせいりょく…?」
優星は、きょとんと首を傾げた。それを見た李土は、愛美に目配せで合図をした。愛美は頷き、優星の方へ体の向きを変える。
「優星くん。昨日、飢幸餓に襲撃された時、沙月ちゃんが戦っていたでしょう? その時、何の武器を使っていたのは覚えてる?」
「あ、はい。確か…いつの間にか大鎌を持ってて…」
「あの鎌も、その霜星力を使って具現化させているものなのよ」
愛美の言葉を引き継いで、沙月が続けた。
「私たち天星人には、必ず霜星力が備わっていてね。それぞれの能力に合わせて、自在に操ることができるの」
「そして、その霜星力は、天星界全体に溢れている。地星界には、全く存在しない力というわけね」
「はぁ…」
未だ話に飲み込めていない様子で、優星はぽつりと相槌をうった。そこで李土が再び口を開いた。
「…まあ、力のことは、今後の"実戦"を通してわかってくれればいいだろう。追い追い、そちらのことも説明しないといけないしな」
「あの…昨日も聞きそびれてしまったんですけど、さっきも仰っていた"飢幸餓"って…何者なんですか…?」
「そうだな。それも今説明しておこうか。…飢幸餓は、本来天星界にしか存在しない、異形の者だ。その正体は、実はこちらでもはっきり証明されていない。ただ強いて言うなら、"幸せに飢え奪う"者、とされている」
「幸せに…?」
一瞬、狐につままれたような表情をした優星だったが、すぐに真剣な眼差しで姿勢を正し李土を見ていた。李土も話を続ける。
「そう…これまで飢幸餓に襲われた人物を調べたところ、襲われる前まで、周囲から羨ましがられるほどの幸せを感じていた、と言われているんだ」
「そんな…でもそれは見ただけじゃはっきりしないんじゃ…」
「だからこそ、余計に不可解なんだ。ただ、はっきりしていることは、飢幸餓は強い霜星力で倒せる。さっき話していた沙月の鎌のように、霜星力で具現化させた武器なら確実に掃討できるんだ」
「霜星力が弱点…なのか…」
「そういうことになるな。話し合いなんかもってのほか…できるはずもないしな。奴らは言葉も話せない」
「え、昨日、喋ってましたよ? 途切れ途切れでしたけど…」
「なんだと…!?」
「え?(あれ、言わないほうがよかったかな…)」
優星の言葉に、一瞬空気がざわつき、李土を始め視線が優星に集まる。ただ、一人だけその時の反応が違っていた。
沙月だけ、少し青ざめた表情で俯いていた。
「はい…」
「よし、そしたらまずは、その天星界のことから話そうか。天星界は、俺たちが今いる地球…我々は地星界と呼んでいるんだが、ここより遥か上空に位置しているんだ。まるで鏡合わせのようにな」
「鏡合わせ…」
「そう。そしてこの二つの世界は、見た目も暮らしている生物も、ほぼ変わりない。存在する国名も全く同じだ。違いがあるとすれば、天星界の方が時間経過が早いこと。簡単に言えば、地星界より何百年という未来を生きていることになる。そして…"霜星力"が、こちらの世界にしかない、エネルギーとも、生命力とも言える存在」
「そうせいりょく…?」
優星は、きょとんと首を傾げた。それを見た李土は、愛美に目配せで合図をした。愛美は頷き、優星の方へ体の向きを変える。
「優星くん。昨日、飢幸餓に襲撃された時、沙月ちゃんが戦っていたでしょう? その時、何の武器を使っていたのは覚えてる?」
「あ、はい。確か…いつの間にか大鎌を持ってて…」
「あの鎌も、その霜星力を使って具現化させているものなのよ」
愛美の言葉を引き継いで、沙月が続けた。
「私たち天星人には、必ず霜星力が備わっていてね。それぞれの能力に合わせて、自在に操ることができるの」
「そして、その霜星力は、天星界全体に溢れている。地星界には、全く存在しない力というわけね」
「はぁ…」
未だ話に飲み込めていない様子で、優星はぽつりと相槌をうった。そこで李土が再び口を開いた。
「…まあ、力のことは、今後の"実戦"を通してわかってくれればいいだろう。追い追い、そちらのことも説明しないといけないしな」
「あの…昨日も聞きそびれてしまったんですけど、さっきも仰っていた"飢幸餓"って…何者なんですか…?」
「そうだな。それも今説明しておこうか。…飢幸餓は、本来天星界にしか存在しない、異形の者だ。その正体は、実はこちらでもはっきり証明されていない。ただ強いて言うなら、"幸せに飢え奪う"者、とされている」
「幸せに…?」
一瞬、狐につままれたような表情をした優星だったが、すぐに真剣な眼差しで姿勢を正し李土を見ていた。李土も話を続ける。
「そう…これまで飢幸餓に襲われた人物を調べたところ、襲われる前まで、周囲から羨ましがられるほどの幸せを感じていた、と言われているんだ」
「そんな…でもそれは見ただけじゃはっきりしないんじゃ…」
「だからこそ、余計に不可解なんだ。ただ、はっきりしていることは、飢幸餓は強い霜星力で倒せる。さっき話していた沙月の鎌のように、霜星力で具現化させた武器なら確実に掃討できるんだ」
「霜星力が弱点…なのか…」
「そういうことになるな。話し合いなんかもってのほか…できるはずもないしな。奴らは言葉も話せない」
「え、昨日、喋ってましたよ? 途切れ途切れでしたけど…」
「なんだと…!?」
「え?(あれ、言わないほうがよかったかな…)」
優星の言葉に、一瞬空気がざわつき、李土を始め視線が優星に集まる。ただ、一人だけその時の反応が違っていた。
沙月だけ、少し青ざめた表情で俯いていた。
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