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飢幸餓の謎
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沙月の様子に気付いた水琴が、恐る恐る彼女に声をかける。
「沙月…? 具合悪いの? 顔青いけど…」
「え…? あ…ううん、違うの…その…実は私も…飢幸餓が言葉を話しているのを聞いていた、から…」
「沙月ちゃん!? それ…昨日は聞かなかったけど…!」
「ごめんなさい! 昨日は、優星が倒れたこともあって、少し気が動転してて…それに…」
「? "それに"?」
慌てて弁解していた沙月が突然口を噤んだことで、静かな空気が流れる。バツの悪そうな表情で、沙月は重々しく言葉を紡いだ。
「その…昨日の飢幸餓たちが…優星のことを、"明星と勘違いしていた"…から…」
「明星、"さま"…と…?」
(ん? "様"?)
沙月の言葉に驚いた火弥の反応に疑問を持つ優星だったが、すぐさま李土が話を切り替えた。
「知能としては、飢幸餓はかなり低い。特徴が若干近いものでも間違える可能性もあるだろう。奴らは何て言ってたんだ? 優星」
「あ、はいっ! えっと…"発見"、とか"処理する"…とか…片言だったんですけど、そんな感じのことを言ってた覚えが…それに"ターゲット"とか…」
「…何だか妙に従順な僕のようだね…誰かがその飢幸餓たちを操ってる感じだ」
「飢幸餓を操るなんて…」
樹の推測に、頭を捻る面々。再び李土が、一つ手を叩いて場の空気を引き戻した。
「すまない、話を大きく逸らしてしまったな。今ここで悩んでいても進まない。まずは優星に我々のことをしっかり話して、それから今の報告について議論しよう」
「そうですね…ちょうど飢幸餓の件も出ましたし、そろそろあのことも話せますね」
「あぁ。そしたら、少し移動しようか。その方が皆も動きやすいだろう」
「わかりました。では準備しますね、リーダー」
そう言って愛美が席から立ち、部屋の中央へ移動する。そして、昨日と同様に左耳にかけているイヤーフックを外しペンデュラムへ変化させた。
その様子を、気を失って見ることができていなかった優星は好奇の目で見ていた。愛美はペンデュラムを掲げ、静かに詠唱を始めた。
「"煌金"──…金星の輝きを導きに、外界には写しを見せ、我々をある場所へ移せ。天星の誇りにかけ…ここに発動せん! "移空廻廊"!」
愛美が高らかに唱えると、その場の空気が一瞬ぐにゃりと捻れる感覚に陥った。今まで感じたことのない感覚に、身体がおかしくなるのでは、と思ったところですぐにその違和感は治まった。優星がほっと胸を撫で下ろすと、辺りの景色に目を見開いた。つい先ほどまで、全員で生徒会室の長机を囲んでいたというのに、今は、家具等何もない、夜空の中のような、広大でまっさらな紺碧の空間に立っていた。
「沙月…? 具合悪いの? 顔青いけど…」
「え…? あ…ううん、違うの…その…実は私も…飢幸餓が言葉を話しているのを聞いていた、から…」
「沙月ちゃん!? それ…昨日は聞かなかったけど…!」
「ごめんなさい! 昨日は、優星が倒れたこともあって、少し気が動転してて…それに…」
「? "それに"?」
慌てて弁解していた沙月が突然口を噤んだことで、静かな空気が流れる。バツの悪そうな表情で、沙月は重々しく言葉を紡いだ。
「その…昨日の飢幸餓たちが…優星のことを、"明星と勘違いしていた"…から…」
「明星、"さま"…と…?」
(ん? "様"?)
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「知能としては、飢幸餓はかなり低い。特徴が若干近いものでも間違える可能性もあるだろう。奴らは何て言ってたんだ? 優星」
「あ、はいっ! えっと…"発見"、とか"処理する"…とか…片言だったんですけど、そんな感じのことを言ってた覚えが…それに"ターゲット"とか…」
「…何だか妙に従順な僕のようだね…誰かがその飢幸餓たちを操ってる感じだ」
「飢幸餓を操るなんて…」
樹の推測に、頭を捻る面々。再び李土が、一つ手を叩いて場の空気を引き戻した。
「すまない、話を大きく逸らしてしまったな。今ここで悩んでいても進まない。まずは優星に我々のことをしっかり話して、それから今の報告について議論しよう」
「そうですね…ちょうど飢幸餓の件も出ましたし、そろそろあのことも話せますね」
「あぁ。そしたら、少し移動しようか。その方が皆も動きやすいだろう」
「わかりました。では準備しますね、リーダー」
そう言って愛美が席から立ち、部屋の中央へ移動する。そして、昨日と同様に左耳にかけているイヤーフックを外しペンデュラムへ変化させた。
その様子を、気を失って見ることができていなかった優星は好奇の目で見ていた。愛美はペンデュラムを掲げ、静かに詠唱を始めた。
「"煌金"──…金星の輝きを導きに、外界には写しを見せ、我々をある場所へ移せ。天星の誇りにかけ…ここに発動せん! "移空廻廊"!」
愛美が高らかに唱えると、その場の空気が一瞬ぐにゃりと捻れる感覚に陥った。今まで感じたことのない感覚に、身体がおかしくなるのでは、と思ったところですぐにその違和感は治まった。優星がほっと胸を撫で下ろすと、辺りの景色に目を見開いた。つい先ほどまで、全員で生徒会室の長机を囲んでいたというのに、今は、家具等何もない、夜空の中のような、広大でまっさらな紺碧の空間に立っていた。
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