プラチナの星空

琴花翠音

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"明星"は霧に紛れる

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 ――…あれは、幻聴だったのだろうか…幻聴であってほしい……まさか、彼が星神器を持っているなんてこと、あってほしくなかった…

「沙月?」
「はっ…!?」
「大丈夫? ぼうっとしてたけど…」
「ゆうせ…ううん、大丈夫! ちょっと考え事してただけ!」
「? そっか」
「……」

 沙月は思い悩んでいた。優星の星神器の名を聞いたその時から、それが嘘であってほしいと、何度も何度も頭の中で呟き続けた。

(……だってそれは…その名の武具は…っ)

 まるで幼子が何かに怯えるように、しかし周りに悟られないように、沙月は震える自身の腕を抑えた。そして誰にも聞こえないか細い声で、「明星…」と、ずっと探し求めている彼の名を口にしていた。そんな彼女をよそに、優星の星神器を発現させる儀式は着々と進められていく。再び愛美がペンデュラムを振れば、今度は優星の頭上に、人一人が通れるほどの直径の光の輪が浮かび上がる。

「あと少しで終わるから、辛抱してね、優星くん」
「大丈夫です、お願いします!」
「――…新たな守人、新たな星の神たる器…その名を『星雨』。未来を担う彼の者の思いに呼応せよ。今ここに、共に戦うその姿を示したまえ…――」

 先ほどとは違う詠唱を唱える愛美。その言葉に合わせ、優星の頭上にあった光の輪がゆっくりと降りていく。彼の体が輪を通り、周囲で光が舞い踊っているようにも見える。そして、光が地面へ吸い込まれるように消えると、優星の胸元、ちょうど鎖骨の下あたりに仄かな青みを帯びた光が浮かび上がった。さらに、彼が普段身につけているつるぎ型のペンダントが、ひとりでに宙へ浮かび持ち主の目の前で止まった。

「――……っ?」

 不思議そうに、恐る恐る触れようとするやいなや、突然ペンダントがまばゆく輝きだした。そして光の球になったかと思えば、それは優星の胸元へ吸い込まれるようにして彼の中へ入り込んだのだ。

「う、わ…っ!? 何…っ」
(あれ……? 痛くない…というか、今光が入っていったところ……)

 優星は初めの、沙月と屋上で飢幸餓と遭遇した時のことを思い出した。あの時、突然謎の光に覆われ、瞬く間に飢幸餓の群れが一掃された後。火傷のような、酷い痛みに襲われ意識を手放してしまったこと。その痛みが現れた部分と、光が入り込んでいった位置がほぼ同じであることに、優星は気付いた。そしてぼんやりと考えている彼のもとに、李土が歩み寄る。

「……これで、お前の星神器のスタイルが確定したな。気になるなら、胸元のボタンを外して自分の目で確かめておいた方がいい」

 李土は自分の胸元を指で示しながら、優星にそうするように促した。
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