プラチナの星空

琴花翠音

文字の大きさ
24 / 26

星を包む金銀の光雨

しおりを挟む
「じゃあ優星くん、そのまま肩の力を抜いて、目を瞑って。浮かび上がってくる言葉を素直に受け入れてね」
「あ、はいっ」
「…よし、始めてくれ、愛美」

 愛美に言われたとおり、優星は肩の力を抜き、目を瞑った。それを確認した李土は愛美へ合図し、彼女も詠唱を始める。

「――…眠れるになりし武具よ。ここに新たな星守ほしもりの戦士が名乗りを上げる。その勇敢な意志に応え、その名、その姿をの者に示せ…――」

 愛美によって丁寧に紡がれた言葉に反応し、優星の足下から、光の粒がふわりとゆっくり舞い上がる。そして徐々にその光は、優星の体を包み込むように回り出した。視界を光が遮り、愛美たち生徒会のメンバーが見えなくなっていく。完全に光で覆われた優星は、浮遊感のような、水中に沈んでいくような不思議な感覚に胸が高鳴っていた。そして空を仰ぐように、ぼんやりと先ほどの愛美の詠唱を振り返っていた。

(…って、そのまま星神器のことだよな…星守…ってどういうことなんだろう……俺の、星神器は――…)

――『星雨ショウウ』。

「…えっ!?」

 突然頭の中に、自分とは別の声で、聞き慣れない単語が流れ込んでくる感覚。それに驚き、気付いたときには自分を包み込んでいた光は消え、尻餅をつく形で陣の中に落ちていた。生徒会メンバーも、その優星の姿に愛美や沙月は心配そうに駆け寄り、他の面々も少し驚いた表情を見せた。さほど時間が経っていないことはわかるが、一体何が起こっているのか、理解が追いつかない状況である。しかしいつまでも尻餅をついている訳にもいかず、優星は慌てて立ち上がり、背筋を伸ばした。

「優星くん、気分は悪くなってない? 大丈夫?」
「ふらついたりしない?」
「あ、あぁ大丈夫…です…急なことで驚いちゃって…」
「…それでどうだ? 何か浮かんできた言葉とかあるか?」

 こんな時でもやはり冷静な李土は、優星に問いかける。その問いにいまいちピンとこなかった優星だったが、思い出したようにはっきりとその名を告げた。

「あっ! 誰の声かわからないんですけど、急に頭の中でって聞こえて…」
、だと…?」
「? はい」
「……まずいな…」
「え…?」
「あぁ、いや、何でもない。そしたら、そのが優星、お前の星神器の名だ。これから、完全な武具として発現させていく。これが終われば、次は戦闘に慣れるための訓練だ。いいか?」
「…っはい! よろしくお願いします!」

 一瞬、李土の表情に曇りが見えた気もするが、その時は特に気にせず次の課程へ進んでいった。しかしその時、李土だけでなく、その場にいた優星以外の全員が、焦りと不安の入り交じった表情をしていたことを、優星はまだ知らなかった。そして何より沙月が、微かに肩を震わせていることも、知る由もなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...