1 / 16
1話
しおりを挟む
とある世界――……穏やかに見えた地が、ある日突然滅亡した。否、吸収された。世界からすればごく僅かな点である、黒き花の存在に、世界一つが飲み込まれてしまった。しかし、すべてが飲み込まれる一歩手前、辛うじて抜け出した光が二つ、寄り添うように闇から飛び出していった。光は直後に、星の大海へ一瞬にして消えていった。
「……逃げた、逃げたな……せっかく、――――と思ったのに……逃がさない。どこまでも……どこへ行っても見つけ出してやる……」
闇に覆い尽くされた世界はその後、跡形もなく塵と消えた。その場には、小さな黒い光が妖しく輝いている。しばらくすると、その黒光も瞬時にしてその場から姿を消した。
後に、幾年、幾千年もの間、転々と世界を巡った光と闇の逃亡劇が繰り広げられる。いくつ目かの世界でようやく、光は落ち着くことができ、今までの逃亡から学んだ知恵の限り、闇が簡単に触れられない術も身につけていた。土地も安定し、平和な世界を築くことに成功し、再び穏やかに民が生活できるまでに成長していった。
しかし、運命には抗えない。また年月を経て、後の子孫たちが闇を討つ役割を担うこととなる――。
かの世界に付けられた名は『フルール・ミロワール』。『花鏡』の名を冠する幻想的な世界。生花に限らず、精巧にできた硝子や宝石の花々。金や銀細工の蝶の群れ。風と共に四季を告げる、空を舞う花……それらが自然現象として存在している。あらゆる美しいものをかき集めた宝石箱のような、その名に相応しくまさに理想郷の地と言えた。
世界は潤沢な魔力で満ち溢れ、動植物たちの生命を維持していた。人も同じく、ある程度の魔力を持ち合わせることで、不老不死にごく近い、美貌と長寿を得ることができた。「死」という概念すらも、現代とは大きく認識が異なるものとなっている。
至極平和に思える世界。しかし近い未来、それを脅かす災厄が降りかかって来るなど、誰も知る由もなく、刻一刻とじわり迫っているのであった。
――是れは、永い刻を経て紡がれた世界と愛の物語……――
「……逃げた、逃げたな……せっかく、――――と思ったのに……逃がさない。どこまでも……どこへ行っても見つけ出してやる……」
闇に覆い尽くされた世界はその後、跡形もなく塵と消えた。その場には、小さな黒い光が妖しく輝いている。しばらくすると、その黒光も瞬時にしてその場から姿を消した。
後に、幾年、幾千年もの間、転々と世界を巡った光と闇の逃亡劇が繰り広げられる。いくつ目かの世界でようやく、光は落ち着くことができ、今までの逃亡から学んだ知恵の限り、闇が簡単に触れられない術も身につけていた。土地も安定し、平和な世界を築くことに成功し、再び穏やかに民が生活できるまでに成長していった。
しかし、運命には抗えない。また年月を経て、後の子孫たちが闇を討つ役割を担うこととなる――。
かの世界に付けられた名は『フルール・ミロワール』。『花鏡』の名を冠する幻想的な世界。生花に限らず、精巧にできた硝子や宝石の花々。金や銀細工の蝶の群れ。風と共に四季を告げる、空を舞う花……それらが自然現象として存在している。あらゆる美しいものをかき集めた宝石箱のような、その名に相応しくまさに理想郷の地と言えた。
世界は潤沢な魔力で満ち溢れ、動植物たちの生命を維持していた。人も同じく、ある程度の魔力を持ち合わせることで、不老不死にごく近い、美貌と長寿を得ることができた。「死」という概念すらも、現代とは大きく認識が異なるものとなっている。
至極平和に思える世界。しかし近い未来、それを脅かす災厄が降りかかって来るなど、誰も知る由もなく、刻一刻とじわり迫っているのであった。
――是れは、永い刻を経て紡がれた世界と愛の物語……――
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる