転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟

文字の大きさ
293 / 296
番外編② アーリンの残念なチート物語 学園改革と布教活動

第8話 土棲《ドワーフ》一族

しおりを挟む
門前で騒ぐのもどうかと考えて、迎賓館の応接室に場所を移す。
シャル王女はマルゴット姫を警戒している雰囲気があるけど、無理やり追い返すことはできないみたいで溜息をついていた。

応接室のソファに向かい合って座ると、まずはシャル王女がマルゴット姫や彼女の国のことを詳しく紹介と説明をしてくれた。

マルゴット姫はウェルロイトガル国の現国王の姫である。

ウェルロイトガル国は鍛冶と付与に長けた土棲ドワーフ一族の国で、その鍛冶や付与の技は秘匿されている。
独自の文化や風習があり、険しい山にあるウェルロイトガル国は鉱山として掘った坑道を利用した住居がほとんどで、他国から入国するには特別な許可がないと入ることができない。

閉鎖的な部分もあるが、古の大賢者から『知識の部屋』の作製と修理を任せれたので、世界中の国や町に土棲ドワーフ一族が住んでいるようだ。

ヴィンチザート王国にも土棲ドワーフ一族がいたけど、最近になりマルゴット姫がウェルロイトガル国から訪ねてきてテックスを紹介して欲しいと要求してきたらしい。

ヴィンチザート国王は魔法契約により説明も紹介もできないと断った。
しかし、理由は分からないがマルゴット姫はどうしてもテックスに会いたいようで、独自に王都の研修施設も尋ねたようだ。だが現状ではテックスの方針でヴィンチザート王国の住民しか研修施設を利用できない。だから研修区画にすら入ることができず、情報を集めて私に会いにきたらしい。

私は話を聞きながらも目を閉じてシャル王女の話を聞いて頷いているマルゴット姫のタプンと揺れるほっぺたから視線を外せなかった。

シャル王女の話が終わるとマルゴット姫は目を開いて私を見つめて口を開いた。

「そういうことでアーリン殿、私のお願いを聞いてもらえるだろうか?」

今日は勘弁してほしい……。

すぐにでもお風呂で癒されたいと思っていたのに、さらに重たい話などする気はない。しかし、あのほっぺたに心惹かれる……。

「どんなお願いか知りませんが、今日は遠慮してもらえますか?」

マルゴット姫は残念そうな表情を見せたけど、断ったわけではないからか渋々頷いてくれた。

「それなら早くお風呂で汗を流しましょう!」

シャル王女はマルゴット姫を帰らせようと思ったのか、すぐにお風呂に入ろうと言い出した。シャル王女も毎日のようにお風呂に入っている。それどころか一日に何度もお風呂に入り、そのまま迎賓館に泊まることも多くなっている。

「ま、まて、お風呂とは熱い湯に入ることだな!? 我が一族は熱い湯に入るのが大好きだ。頼む、私にもお風呂を入らせてくれ!」

マルゴット姫があまりにも真剣に頼むので詳しく話を聞く。

ウェルロイトガル国では坑道からお湯が出る場所がたくあるのでお風呂がたくさんあり、採掘で汚れた体をお風呂で洗うのから土棲ドワーフ一族がお風呂に入る習慣があるようだ。
だからお風呂の良さも知っていて、ヴィンチザート王国にお風呂文化がないので、本当にお風呂に入りたかったようだ。

それを聞いて魅惑のほっぺたへの執着もあり、私はマルゴット姫たちにお風呂に入ることを許可する。横でシャル王女が渋い顔をしていたけど、一緒にお風呂に向かうのであった。

マルゴット姫の予想を裏切るほどの大きさのお風呂に、ポヨンポヨンと跳ねて喜ぶ姿にシャル王女も笑顔を向けるのであった。

しかし、テンマ先生の作ったお風呂の魔道具を見るたびにしつこく質問してくるのは勘弁してほしい……。

「お風呂は疲れを癒す場所です。これ以上質問したら帰ってもらいますわ!」

マルゴット姫のほっぺたを両手で挟み込むようにして話す。

「ほめんにゃさい……」

怒りの籠った私の声にマルゴット姫はすぐに謝罪してくれた。

くぅ~、やっぱりこの感触はピョン吉に似てるわぁ~!

それから私は子供の手を引くようにマルゴット姫をエステ用の施術台に案内する。彼女は不思議そうに施術台を見ていたが、隣の施術台に私がうつ伏せで寝ると、同じように施術台に上がる。

すぐにエステ担当のメイドが私達にテンマ先生が作成したエステ用ジェルを塗り始める。

「ニョホホホ!」

マルゴット姫は初めての感触に変な声を出す。
私はこれまでも同じような声を出すご夫人やご令嬢を見てきたので、気にせずに施術を受けるのであった。

最初はあられもない声を出して何度も逃げ出そうとしていた彼女も、次第にエステの気持ち良さになれたのか、途中からは施術者に完全に身を任せていた。

マルゴット姫の従者の二人も最初は警戒していたけど、次第にマルゴット姫の肌がモチモチ&ツルツルなり、テンマ式リンスで髪に艶が出ているのを見て、彼女達もエステを受けたのである。

マルゴット姫が徐々に素直な雰囲気になったので、私は可愛いい妹ができた気になり、何かと面倒を見るのであった。

「アーリンさん、マルゴット姫は百歳を超えていますわよ。土棲ドワーフ一族は人族より寿命が3倍以上長いから勘違いしますけどね。ふふふ」

う、ウソォーーー!

妹のようにマルゴット姫の髪の毛を乾かしているとシャル王女から驚く話をされたのである。

「アーリン殿、手が止まっているぞ」

相変わらずマルゴット姫の話し方は子供っぽくないだけでなく、女性らしくもない。でも声や後ろを振り返り私を見つめる表情も子供らしい可愛らしさがある。

「前を向いてください!」

私は柔らかいほっぺに人差し指を使って前を向かせようとしたが、指はほっぺたに吸い込まれるように沈んでいく。

「わかった」

マルゴット姫は可愛らしい声で返事して素直に前を向く。私はすでに彼女の年齢のことを忘れて、再び髪の毛を乾かし始めるのであった。


しおりを挟む
感想 440

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。