スマートシステムで異世界革命

小川悟

文字の大きさ
44 / 224
第3章 大賢者の遺産

第12話 ワルジオの誤算

しおりを挟む
クレアさん達が納得してくれたので、ついでに孤児院の子供たちの面倒もお願いする。
水筒を届けたり、昼食の食材を提供したりすることなど、護衛任務のついでに日課に組み込んでくれることになった。

安心して解体作業を精力的にこなし始めた頃、ハロルドさん達が教会関係者との話し合いで、教会関係者を追い詰めていることなどアタルは思いもしなかった


   ◇   ◇   ◇   ◇


ハロルド達の面談で、予想外の展開になったことに呆然とするワルジオであった。

教会に戻ろうと内門を抜けたところで、ワルジオはこのまま教会に戻るのは不味いと気が付く。

「おい、馬車を商業ギルドに向かわせろ!」

ワルジオの発言で、助祭も今の状況を考えるのであった。

「ワルジオ司祭、商業ギルドに行ってどうされるのですか?」

人に頼るだけの助祭に苛立ちを覚えながらも、ワルジオは説明する。

「後ろに積んであるポーションを、商業ギルドに買い取らせるのだ。少しでもポーションの代金を回収しないと、教会に戻れないではないか。それぐらい考えろ!」

イライラとしながら助祭に命令する。

「し、しかし、司祭の指示で商業ギルドに卸すポーションは半減させて、値上げすると先日伝えたばかりですよ」

「だからこそ、商業ギルドは喜ぶだろう。ハロルドの評判が良くなるのは腹が立つが、エルマイスター家が町中のことを考えて、納品数を減らしたと言えば筋は通る。
教会も商業ギルドのことを考えて、必死にポーション作成して用意したと話せば、商業ギルドに恩も売れるはずだ」

助祭はなるほどと頷いたが、気になる事を更に質問する。

「しかし、商業ギルドへの通常の納品数は100本で、馬車には200本もありますが、すべて商業ギルドに納めるのですか?」

すべて説明しないと理解できない助祭に、また苛立つが我慢して説明する。

「冒険者ギルドの対応に問題があり、冒険者ギルドに納品する量を大幅に減らしたと言えば、商業ギルドで全部購入したとしても、ポーションを捌けるのは奴らも理解できるだろう。
値段が高くなっても数を捌けば、儲けが減ることも無くなるし、商業ギルドも立場が良くなるから感謝するだろう」

助祭は、この状況でも値上げを止めることなく、あくまで利益を追求するワルジオの考えに不安と尊敬が混じった気持ちで頷くしかなかった。

本当に商業ギルドがすべて買い取ってくれるのか疑問に思う助祭だったが、このワルジオ司祭なら何とかするだろうと思うのだった。

商業ギルドに馬車が到着すると、助祭は先に商業ギルドの建物に入り、ワルジオ司祭と急遽訪問したことを伝え、ギルドマスターに出迎えるように話すが、あいにくギルドマスターは不在で、数日前に自分と話をした副ギルドマスターが対応することになった。

しかし、教会の要求に相当不満に思っているだろう副ギルドマスターの対応で、大丈夫か不安に思う助祭だった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


商業ギルドの副ギルドマスターのソルンは、最近の教会の横暴に不満が溜まっていた。

王都でもギルド職員として、教会の尊大と思える態度に苦労してきたが、プレイルの町の副ギルドマスターになってすでに5年になり、2年前にこの町の教会のポーション管理部の責任者がワルジオ司祭になってから、教会の横暴は加速し始めた。

ワルジオ司祭はこの町に来てすぐに、ポーション卸価格の値上げを通告してきた。値上げをしたにも係わらず品質は少しずつ悪くなり、納品数を増やしてくれたのだが、商業ギルドがポーションを卸す商会から不満を言われることが多くなっていた。

そんな商会の不満の対応に苦労していたのに、数日前に助祭が更なる値上げと納品数の半減を教会の意向だと伝えに来たのだ。

そんな教会の横暴というより凶行に、怒りで怒鳴りつけそうになるのを必死に我慢した。
教会と揉めてはこの支部だけではなく、王都の商業ギルドにも迷惑が掛かり、自分の出世は永遠に無くなるから仕方ないと諦めるしかなかった。

ポーションの値上げと納品数の減少について、ポーションを卸している商会に説明と理解をお願いして回って、やっと一通り対応が終わって商業ギルドに戻ってくると、今度はワルジオ司祭が事前連絡なしに訪問してきたのである。

今度はどんな要求をしてくるんだ!

本来なら商業ギルドの正面まで司祭を出迎える必要があったが、既にそんな気力もなく、応接室ではなく会議室に通すように指示する。

助祭とワルジオ司祭が会議室に入って来たが、二人は不満そうにしている。会議室に入るとさらに不満そうな顔をしている。

不満に思っているのはこっちだよ!

ソルンは教会のせいで、この数日は精神的にも追い詰められていたので、すでに我慢する余裕は無くなっていた。

「それで、事前連絡もなく、ワルジオ司祭様が突然お越しになられたのは、どのような要件でしょうか?」

嫌味を込めて話するソルンに助祭が驚いて目を見開いている。

不機嫌な表情を隠すことなくワルジオ司祭が話をする。

「エルマイスター家が町中のポーションが減るのは良くないと、納品数を減らしてくれた。教会も商業ギルドの要求に少しでも答えようと、ポーション作成に努力したので、その報告に来たのだ」

それは吉報といえる話だったので、ソルンは不味いと思ったが、いまさら対応を変える余裕はなかった。

「それでは、いつも通りの値段と納品数を守って頂けるんですね?」

「そうではない。教会は無理して用意したのだから、値段は助祭が伝えた金額になる。だが、納品数は倍の200本にしてやる」

丁寧な対応する余裕はなかったが、商業ギルドに長年働いてきたソルンは頭の中で利益を計算して、問題点にも気が付く。

「確かに納品数が増えるのは助かりますが、倍の納品数を捌けるとは思いません。やはり、価格と納品数はいつも通りでお願いします」

ソルンがそう話すと、ワルジオ司祭の顔が真っ赤になったので、怒っているのはすぐに分かったが、ソルンはこれ以上教会の都合で振り回されたくない思いの方が強かった。

これで教会との関係は終わりかな……。

ソルンはそう考えたが、なぜかワルジオ司祭はまるで怒りを抑えるようにして、話を続けてくる。

「冒険者ギルドの納品数は減らしたままだ。今回の原因である彼らにはしっかりと罰を与える必要がある。商業ギルドの納品数が増えても捌けるのではないか。面倒なら手数料だけ取って冒険者ギルドに商業ギルドが卸してやれば、利益も立場も手にできるだろう」

ワルジオ司祭の提案は、胸糞悪い内容ではあるが、確かに商業ギルドの損になる話ではない。何か裏がありそうだと不安になるが、確証はないし商業ギルドに問題になるような事はなさそうである。

冒険者ギルドへの制裁なのか?

それなら商業ギルドは関係ない。商品さえ手に入れれば、元々ポーションは品薄で足りないくらいなので、何とかなるとソルンは考えた。

「わかりました。値上げした金額で200本買い取らせて頂きます。納品は何時になりますか?」

何故か助祭が露骨にホッとしている。

もしかして教会は何か困っていたのか?

今さら前言を撤回できないので、そのことは気にしないことにする。

「外の馬車に用意してある。すぐに納品するから対応してくれ」

ソルンは少し驚いたが、たしか今日がエルマイスター家へ納品日だと気が付く。

でも、200本は多すぎないか?

まるでエルマイスター家への納品分が全部流れてきた不自然さに不安になる。それでも買い取って損は無いと話を進めることにする。

「では、職員に受取りと検品させましょう。私は支払いの準備をしてまいります」

そう話して会議室を出ると、職員に受取りと検品を指示して、会議室にお茶とお菓子をもっていくように指示するのだった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


商業ギルドの副ギルドマスターのソルンが部屋を出て行くと、ワルジオは不満を助祭にぶつける。

「あいつは何様のつもりだ。今回は仕方がないから我慢してやったが、あいつは絶対に追い詰めてやる!」

激怒するワルジオに助祭も困惑するが、確かにソルンの対応には疑問を感じる。彼は教会と揉めるつもりなのかと不思議に思う。

エルマイスター家の対応といい、何か得体のしれない何かに追い詰められているのは、我々ではないのかと助祭は不安を感じるのだった。


暫くするとソルンが戻って来たのだが、支払いの金は持っておらず、手には2本のポーションを持っていた。

彼の眼は血走っていて、明らかに怒っているのが助祭には分かった。

「おい、これはどういうことだ!」

商業ギルドの副ギルドマスターが、教会を相手に怒鳴りつけてくるのが信じられなかった。ワルジオと助祭は突然の事に反応できず固まってしまう。

「なんで50本以上がただの薬草の入った水で、一番効果のあるポーションが水で薄めたいつもの半分しか効果のない物なんだ!」

助祭は心当たりがあり顔が真っ青になる。しかし、ただの薬草の入った水については心当たりがなく不思議に思う。

「そ、そんなことはありえん! 教会に文句を、」

バリンッ!

「ここに証拠があるだろうがぁ。こんな詐欺を働いてただで済むと思うなよ!」

ソルンは持っていたポーションを投げてきた。幸い当たらなかったが信じられない暴挙に、ワルジオも助祭も真っ青になり、反論することもできなくなった。

「教会だろうが、明らかな詐欺行為をしてただで済むと思っているのか。このことは王都の商業ギルド経由で大司教に抗議させてもらう!」

それを聞いてワルジオは焦り出す。大司教に抗議されては不味い、教会での立場が無くなってしまう。

「ま、待ってくれ。ポーション作成の、」

「待てませんね。1日だけ待つから司教に説明に来いと伝えろ!」

何とかワルジオは抗議しようとしたが、商業ギルドの警備員に殴られて話すことすらできなくなり、叩き出されるように商業ギルドから追い出されてしまった。

そんなワルジオを見て、助祭はポーション作成の助祭の話を思い出し、すべての責任をワルジオにどうやって押し付けるのか考えるのであった。
しおりを挟む
感想 156

あなたにおすすめの小説

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...