ある古書店販売員の日常。

猫寝 子猫

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その十五 チラ○、オカシて下さい!

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 新品のDVDを扱っている手前、各メーカーさんから毎月新作発売のポスターやチラシが届く。

 アダルトコーナーを形造る意味でも、重要なアイテムだ。

 実際にチラシをコレクションしているハードなファンやコレクターもいる訳で、届いたら直ぐにチラシ置き場へ。

 古いモノと交換して、減っていかないモノも撤去する。

 アダルトDVDに限らず、グラビア写真集の販促ポスターもこの辺りに置いて、欲しい方はご自由にお持ち下さい、ってな状態にしてある。


 「この間のさん、「幼馴染モノ」やるみたいですよ?
 お! チャンも「幼馴染モノ」だ!」


 チラシの発売予定を見てテンション上げてるオオタくん。

 「幼馴染モノ」とは、

 どうしてもDTを卒業したい彼女無し男子が、幼馴染の女の子に頼み込んで初体験を果たすイチャ甘なシリーズだ。

 幼馴染の女の子が処女か、非処女で随分とプレイも変わるが、

 ラストは女の子が以前から好意も持っていたから付き合う事になるとか、避妊せずに発射したので責任取って付き合うとか、そんな感じだ。


 「予約するの、オオタ君?

 多分、撮影会やるかもよ?」


 「か、カメラ!ネコさん、デジカメ貸して下さい!」

 撮影会はスマホ撮影禁止で有る!
 
 「本気? 
別にいいけど。」


 別にAV女優さんだけが撮影会をする訳ではなく、エッチなポーズはしてもエッチな事はしないグラビアアイドルさんのイメージDVDも販売している。

 まだTV番組等には出演してはいないが、こういった場所でファンを増やしているのだ。


 もっとも、秋葉原の様な場所と違って、ウチのお店はちょっと微妙な立地に有るから、有る意味なファンが憑きやすいかも?


 「あ、あの…  オカシて下さい!」
 
 「は?」

 珍しい事にアダルトコーナーに女性客が?

 別に成人されていれば、問題は無いので有るちゃっ有るんだけど?

 声がした方を見ると姿の女性客がいた?

 「お嬢さん、もっと自分を大事にして下さい。」

 つい口に出てしまったが、隣りにいたオオタ君はハイエロ粒子が湧き上がり始めている?

 「す、すいません!
 ココならお話し聞いて頂けるかと思いまして⁈」

 「ボ、ボクで良ければお相手しますっんグゲっ!」

 絶対勘違いしているオオタ君を物理的に沈黙して、自分が応対する。

 俺が身長170ぐらいなのでそれ程大きく見えないが、女性にしては大柄で大体165ぐらいは有りそうで何かスポーツでも…あっ!

 アレか⁈

 「何か興行イベントのチラシですか?」

 「えっ⁈ は、そ、そうです!
 今度、ソコの区民体育館で…」

 そういえば、この店に来る途中で、電柱とかに確かポスターを見た様な?


 「あ、すいません!

 えっと、私「女子プロレスラー」なんですけど、今度デビュー戦なので、そのチラシを置かせてもらえないかとお願いに来たんですけど、駄目でしょうか?」

 おやおや、やっぱり。

 「一階の会計レジの所で、言われて来たのですか?」

 「えっ? いえ、直接コチラに来ましたけど、何か不味かったですか?」

 「ココ、アダルトコーナーですよ?
 女性として平気ですか?」

 と言われて、改めてあちこち彼女?

 「えっ!ええっ⁈

 だって先輩が4階でお願いしろって言われたんで⁈」

 なるほど、ワザとか。

 「一階の会計場にいたのが、店長なんですよ。そこでオッケーならにならなかったかな?

 アレですよね、ポスターとか、他の階にも置きたいですよね?」


 「えっ、あっ!

 そ、そうですよね?」

 「ちょい待ってて、内線で確認するから。
 
 でも、アダルトに置いて大丈夫?

 確かにグラビアアイドルの撮影会とか行っているけど、AVの販売がメインなんだよ?」


 「う?
 でも、大丈夫です!

 リングコスチュームも水着も左程変わらないし、やっている事も同じのぶつかり合いだし!」

 「ソレも先輩に言われたの?」

 「ハイ! 困ったら、そういえば分かって貰えるからって?」

 君が分かってないな?


 「ぶつかり合いって、よく意味を考えてごらんよ?

 あ、店長、すいません、実はですねー……

 ~ハイ、ハイ、ではその様に。」
 
 店長にオッケーを出してもらって、彼女の方に目を向けると、顔を紅くして、ガタガタ震えていた?

 「あ、あ、あの、違います!違いますから~!

 私、まだ処女ですからー!」

 




 
 「落ち着いた?」

 沈黙していたオオタ君を再度物理的に再起動させて、レジを任せてから、彼女を下階の自販機コーナーで落ち着かせる。

 「烏龍茶でいい?」

 「はぁ~、すいません。」

 「チラシ、各階に置いていいから。
 あとポスターもエレベーター内に貼っていいってさ。」

 「本当ですか!
 ありがとうございます!」

 「ん~? 余計な事かもだけど、まさか先輩からイジメられてる?」

 「あ!いえ⁈ 
 そ、そんな事は無いです!

 ちょっと、られてるだけです。」
 

 女子プロレスの告知ポスターとか、チラシの配布とか新たな客層を獲得出来るかもしれないと進言してみたトコロ、店長が快諾してくれた。

 チョロいとか言わないでくれよ、実は一階のレジ中のカウンター下には各階の防犯カメラを確認出来るモニター(スピーカー付き)が設置されていて、大体の様子や会話は知られているんだ。

 完全に彼女へ同情してるよ、その通りだけど、それだけではないんだ。

 「ここの店長、この町内の町会役員なんだ、この辺りのイベント事には協力的なんだよ。」

 納涼盆踊りとか有ると寄付とかしてるし、年末とか夜中に

 「火の用~心、確かめましょう~。」
 
 って、カンカン拍子木を鳴らして夜回りなどもしている。


 地域活性化に繋がる事には理解が有るのだ。


 「出来れば、今度はお客様として来て下さいよ。」

 「あ、ハイ!絶対来ます!」




 

 「あ、聞いたよ?
 女子プロの人が来たんですよね?
 有名な人なの?」

 「新人、今回がデビュー戦らしいよ。」

 誰に聞いたか、シオタさんが例のチラシを持って話しかけて来た。

 割とミーハー?

 「その内、お客様として来てくれるんじゃないかな?」

 知らないけど?

 
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