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閑話休題〜ヒーローカード
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「…ねぇ、聞いてくれる?」
「…まぁ、いいけど?」
俺は小学生の頃、駄菓子屋で販売していたヒーロー物のカードを集めてた。
ほぼクラスの男子の間で流行っていたし、逆に集めていないと仲間外れにされてしまう。
今のトレーディングカードに比べると印刷も雑で安っぽい物だけど、そんな事はお構いなくダブったカードは友達と交換し、それが友達との友情を深めていた。
また裏面に印刷されたヒーローのデータやストーリーの解説など読んでは友達とヒーロー談義するのも楽しかった。
ただスナック菓子のオマケでしか手に入らない野球カードやライダーカードと違い、食べきれないスナックを捨てるとか、無駄にお菓子を買わなくても済むからと小遣い全てカード購入に使う奴もいたくらいだ。
そんな昔の事をざっくり思い出したのは、最近自宅の押入れを整理した時に全く見覚えのないヒーローカードを見つけたからだ?
なんて名前なのかも分からず、手掛かりになるような風景などの背景は無くて、合成なのかバックは一面赤色、腰に手を当て直立不動でやや上を見ているヒーロー、ただ困った事におそらく変身ヒーローだと思うのだけど結構ガチなオタクな俺でもこのヒーローがなんて名前でどんな作品なのか全くわからないのだ?
普通表はカラー印刷、裏は説明文でヒーローの名前とか印刷されてるハズだけど、
【アタリ】と赤インクで印刷されてるだけだった?
とりあえずネットで調べたが該当するモノは見つからなかった、特撮に詳しいオタ友に見せてみたら…
「それローカルヒーローか、もしくは学祭とかで作った自主制作ヒーローかもよ?」
だそうだ?
そういえば子供の頃に仲の良い従兄弟の高校生の文化祭に行った事がある様な…8ミリフィルムで撮影するのが趣味と聞いたような?
あやふやなので久しぶりに連絡したら
「おう元気か?
久しぶりだな、今度遊びに来いよ、面白いモン見せてやるから。」
従兄弟は割と近くに住んでいるが最近まで忙しくて全く会っておらず、数年前に結婚して子供もいるとか親から聞かされていた。
まだ独身の俺に美人の奥さんや可愛いお子さんを自慢したいらしく訪問を強要された?
早速、休日に嫁手土産を持って従兄弟の家にお邪魔した、奥さんとお子さんは買い物に出掛けたとかで夕食は期待していいとか、結婚するなら料理が美味い嫁が良いとか最初から機嫌良く迎えてくれた。
「…実は見てもらいたいモノがあってさ?」
「……えっ、なんでコレお前が持ってんだ?」
例のヒーローカードを見せると従兄弟はかなり驚いていたが、
「コレさ、この中身俺なんたよ。」
なんでも高校時代に映画部だったそうで、学祭で上映した作品の一つがヒーローモノだったらしい。
「他にも青春ドラマみたいなのとか色々と作ったんだ。」
このヒーローの名前は学校名の『〇〇高校』から『〇〇レンジャー』と名付けて、このヒーローカードも写真部の協力で見に来ていたちびっ子に配っていたそうだ。
「じゃあ、その時に貰ったのかな?」
「……なのかな、大体アレから十年以上経つんだぜ?
お前この頃コッチにいなかっただろう、ほら叔父さんが再婚して…まぁ、叔母さんが亡くなった時にお前はまたコッチに戻って来てたけどさぁ?」
言いにくそうに話す従兄弟、俺は小学三年の頃に両親が離婚して母親に引き取らられ親権をもぎ取った母の実家で暮らす事になり、此処より離れた他県の田舎町で暮らしていた。
「あそこからお前だけ俺の高校の学祭に遊びに来るとか普通無いだろ、それにこのカード【アタリ】だしさぁ?」
小学校卒業を前に母が当時交際していた男性とデート中に交通事故で即死した、母方の祖父母は高齢で体力的にも経済的にも俺を育てるのは困難で父も以前から俺と暮らしたいと強く希望していたので中学入学のタイミングで元の家に戻ったのだ。
戻ったと言ってもそこには俺の知らない父の家族がいて、俺は突然妹と弟が出来た、母の実家ではかなり貧しい暮らしを押し付けられた気がしたが戻ってきた家では生まれ変わったくらい快適な暮らしが始まった、
新しい母は俺と仲良くする為にいじらしい程必死でコチラが申し訳ない気持ちで、妹たちもめちゃくちゃ可愛いし遠慮無く甘えてくるので実母が亡くなった悲しみに暮れてる暇が無かった。
「…そうそう、その作品のヒロインが嫁さんでさぁ、実はコレがキッカケで向き合い始めたんだよ。」
なんか唐突に惚気られたが【アタリ】カードの謎も聞いてないし、最初に聞いた『面白いモノ』も見せてもらっていないので従兄弟には悪いが話しを戻す。
「そうそうアタリなんだけど、アレさぁ~クラスの女子が作ったクッキーとかカルメラ焼きとかと交換してたんだわ~、だからアタリカードは多分全部回収したんだわ、繰り返し使用されるの防止する為にな。」
回収の際はアタリの印刷の無いカードに取り替えていたそうなのでお菓子と交換していない子供がいてもおかしくは無いと思うが、アタリカードの枚数分しかお菓子は用意していない、お菓子は余らなかったそうだ。
「…じゃあコレは回収したカードなんじゃん、ウチの押入れから見つかったのは謎だけど?」
従兄弟や俺がお互いの家に遊びに来たことは今まで一度も無い、会うのはほとんど父方の祖父母の家だし、訳分からんと匙を投げ始めた時だった。
「ただいまー。」
買い物から奥さんが帰って来たところで初めて奥さんとお子さんを紹介された。
紹介が終わると奥さんは俺たちにお子さんを任せて早速買ってきた食材て夕飯を作り始めた、なのでひとまずヒーローカードの件は置いといてお子さんとTVゲームをして遊んでいた…が?
「パパ、コレって〇〇マン?」
お子さんが俺の持ってきたヒーローカードを見つけて父親の従兄弟に見て見てとカードを振り翳した?
「えっとな、〇〇マンじゃないよ、〇〇レンジャーな。」
「え~ちがうよ~、〇〇マンだよ~。」
なんだ、従兄弟は幼い娘に過去に自分が演じたヒーローの動画でも見せたりしたのか、それとも奥さんだったり?
もしかして『面白いモノ』とはそれか?
従兄弟と娘ちゃんがキャッキャっと楽しそうに戯れあっていると夕食の支度が出来たようだ。
夕食もご馳走になり、お子さんは寝かしつけて今度は奥さん交えてカードや『面白いモノ』について話しを再開した。
「あのね私、もしかしたら以前に俺くんと会ってるかもしれないの。」
奥さんのお父さんは小学校の先生でどうやら俺がいたど田舎の学校で数年だけ教鞭を取られていたそうだ。
「あの場所、中学も同じ校舎でしょ、私が中学を卒業するまでの条件で教師の少ないあの学校に赴任してたの、家族一緒にね。」
凄い偶然だが、こんな山があってあんな川でザリガニ釣りをしたとか、駅の側まで行かないと漫画も買えないとか今度は奥さんと俺が『田舎あるある』で盛り上がり従兄弟の存在を忘れそうになった?
「確かに買い物には苦労したけど、唯一あの『駄菓子屋』があったじゃない、駄菓子だけは手に入ったわ。」
確かにザリガニ釣りの餌は駄菓子のよっちゃんイカ、カブトムシやクワガタ取りの罠に使ったのも駄菓子の安っぽい甘い水飴みたいな…商品名なんだっけ?
「おばあちゃん一人だけでやってた店だよね、まだ有るのかな?」
「それがね、私アッチの友達と時々あったりしてるの、コッチで暮らしてる友達もいるし…。」
奥さんが友達に聞いた話ではおばあちゃんが腰を悪くしてからはお店は閉めてしまったそうで、今は駅の側で商店をしている息子さんと暮らしているそう。
「駄菓子屋があった場所は今では『スローライフ』を満喫したいとかで都会からきた若い夫婦が暮らしてるって?」
どうやら『過疎化』が進まない様にと空き家を安くかしたり、役場で色々と村おこし活動してるそうだ。
そういえば母方の祖父母の家はどうなったのだろう、母の兄が管理してるのだろか?
「それでね、駄菓子屋さんを閉店する時に私ね、コッチで暮らしてる友達と久しぶりに行ってみたの。
その時に最後だからって来ていたお客さん全員でお店の商品をが買い尽くしたの…まぁ、中にはタダでもらったモノもあったんだけどね?」
そういうと奥さんは何やら段ボール箱を俺の前に持ってきた。
「コレ、女の私がもらってもあまり嬉しくないけど、この人が興味有るかなって貰ったの。」
「そうそうコレコレ、お前に見せたかった『面白いモノ』は!」
…それはビニール袋に入った【ソフビ人形】と紙の小袋数点、その他にベーゴマやメンコなどが入っていた。
「最後に来たのが女性だけだったのね、だからコレは本当に『売れ残り』だったの。」
もしかするとこんな物に詳しい人が見たら案外と【お宝】なのかもしれないが、それがわかる人はこの場にはいなかった。
「コレ開けてもいい?」
カードが入っているだろう小袋を皆んなで開くと、
「…コレってなんて怪獣?」
「ラドンだな、コッチはアンギラスだ、
どうやら『怪獣カード』な様だ?」
メンコも同じ頃に放送されてたアニメや特撮ヒーローが印刷されたモノだった。
…てっきりこの中にあのヒーローカードが混ざっているのではとか予想してあたがそんな事は無さそうだ。
そこへ…
「…パパたち…何してるの、アタシも~…」
娘ちゃんが眠そうな目を擦りながら起き出してきた、その手には何か抱き抱えている?
ヌイグルミかと思えば何とそれは…
「…ソレって〇〇レンジャー⁈」
娘ちゃんが持っていたのはソフビ人形、それがどう見てもあの『〇〇レンジャー』そっくりなのだ?
「それね、その中に入ってたのよ、…でね、何故かこの子ソレが気に入っちゃったみたいで…」
「そうなのか、オレは知らなかったぞ?」
「それよりもこんなのまで作ってたのか、学祭の企画で?」
「そんな予算なんてある訳無いだろ、第一に何でそんな田舎の駄菓子屋にそんなモン売られてたんだ?
なぁ、お前何か知ってるか?」
「全然、全く、コレコレぽっちも?
そっか、コレって〇〇レンジャーに似てたのね?
言われるまでわからなかったわ?」
他のソフビ人形もよく確認したところ、どうやら版権無視の『パチモン』の様だ。
例えるならウルトラマンと仮面ライダーを混ぜた様な、ガンダムとマジンガーを混ぜた様なデザインのモノばかりだった。
「…じゃあ、偶々偶然このパチモンヒーローと〇〇レンジャーのデザインが似てしまったの?」
「似てるってより、完全に一致だろ、このレベルは?」
俺たちはそこから色々と討論しだしたが正しい答えなんか出てこない、こうなるとアタリカードの事も更に分からなくなってきた?
「あ~ぁ、ヤメヤメ!
今日は思い出話しを肴にワイワイやるつもりだったんだゼ⁈
ハイ、この話しはこれでお終いだ!」
俺たちはこの件は封印して呑む事にした、娘ちゃんはトイレを済ませて再びおやすみに。
「…実はさぁ、友達があの映画をフィルムからDVDに収録してくれてさ、それを見せてやるつもりだったんだけど…やめとくか?」
「…だな。」
「お兄ちゃんズルい!
私も娘ちゃんに会いたかったのに~‼︎」
高校生の妹にメチャ文句言われた、彼女にとっても従兄弟は従兄弟な訳で、後日仕方ないので再度従兄弟の家に妹と小学生の弟持参でお邪魔した。
「…ボ、ボクはいいよ、別に…。」
インドア派で恥ずかしがりの弟だが、妹と差別無く半ば強引に同行させた。
思いの外喜んでくれたのは娘ちゃんだった、オジサンよりお兄ちゃんお姉ちゃんと遊んでもらえるのが嬉しいらしい。
そんな楽しい時間もあっという間に終わりを迎え、ついには娘ちゃんが、
「お姉ちゃん、お兄ちゃん、帰っちゃヤダァーー!」
と泣き出し、妹のスカートを掴んで離さない、また遊びに来るからと言い聞かせてなんとか解放してもらった。
最も車で30分ぐらいの場所だ、その気なら歩いて行けない距離でもない。
その後、意外な事にあのインドア派の弟が自転車でちょくちょく従兄弟宅へお邪魔する様になっていた?
「…ボク、娘ちゃんにお兄ちゃんって呼んでもらえるのが嬉しいんだ。」
キッカケは何であれ、コレはコレでハッピーな結果だと思うことにした。
「それでね兄さん、今日は娘ちゃんと従兄弟さんが作ったDVDを見たよ。
…でね、気がついたんだけど、アレって撮影したのってこの辺りじゃないかな?」
俺が仕事から帰ってくると弟は嬉しそうに話してくれた。
あの件は封印する事にしたので、DVDを見るかどうか従兄弟からも確認されたがもう少し間を開けたいと誤魔化していたのだ。
「あのね、映像の中に〇〇公園の池でボートに乗ってるところとか、そこの河川敷で戦ってるシーンとかあったんだ。」
自分の知っている場所が撮影されていた事でちょとだけ嬉しかったようだ、この場所が自分の家の近くだと娘ちゃんに自慢したらしい。
「それでね、今度は娘ちゃんが公園とかこの家に遊びに行きたいって言われたんだけど…どうしよう?」
なるほど、つまり俺から父さんたちに了解を取れって事だな?
その場で弟自身がいいよと言えないトコロは恥ずかしがり屋の弟らしい、来年は弟は中学、娘ちゃんは小学生だし、まぁ『《《お年
頃》》』って事なのだろう?
父に話すと
「アイツの娘ちゃんなら父さんから見れば『孫』も同じだ!」
父さんの謎理論はさて置き、義母も是非にと喜んで、
「義姉のお孫さんもいいけど、そろそろ私たちの孫の顔も見たいのよね?」
藪蛇なのは覚悟していたが、案外俺より弟くんがその期待に応えそうな気もする?
「えっ、娘ちゃん遊びに来るの⁈
じゃあ私、ケーキ焼こうかな?」
ケーキ作りが趣味の妹が張り切りだしてる、何だか和やかな雰囲気で当日を迎えようとしていた我が家。
だからそれは本当に不意打ちの様に襲って来たのだ?
その日は従兄弟家族三人で我が家を訪問された、てっきり娘ちゃんだけかと思ってあたのだけど、待ちきれなかった父が従兄弟にみんなで来いと煽った様だ?
「お久しぶりです、叔父さん!」
「元気そうだな、まぁ上がれ。」
まるで波平に挨拶するノリスケの様とは思っても言えず、俺を含めた大人組は昼間からとりあえずビールで乾杯を始めてしまう。
そして妹がリーダーを務める子供組はロケ場所の公園へボート乗りに出かけた、お弁当持って娘ちゃんきっとお兄ちゃんお姉ちゃんに遊んでもらえて大満足して戻って来るだろう…
「そういえば俺くんは何処の高校だったのかな、私たちの後輩じゃないのよね?」
「あっ、バカ、やめろって!」
従兄弟が止める間もなく酔ってるのか彼の嫁さんが悪気のない質問を俺にしてきた、さも当然の如く…。
「はぁ、ここから電車で30分程の工業高校ですが何か?」
「ハハハ、コイツ、モノ作りが好きなんだわ、今の会社金属加工だっけ?」
すかさずフォローする従兄弟だけだ、
「いや、それは一昨年まで、今は家電量販店だけど。」
…俺は中学の時にコチラに戻ったが、どういう訳か親の離婚で田舎の学校に転校、そして母の事故死で戻って来た事が面白可笑しく悪意を持って広められた可能性が有った。
「ちょっと母親の件でよく思ってなかった人がいたらしくてさ、変な噂広められてたんだ。」
「何それ、酷くない!」
直接イジメこそ無かったが無視され早々と地元の公立から少し離れた私立校に転校し、高校も地元では無くてここから離れた高校へ通ったのだ。
「…もうその件は解決済みでね、噂を広めた人からは誤解だったと謝罪してくれたよ。」
父が上手く誤魔化してくれた、本当は学校や警察、町会会長がなかに入ってくれたのだが、何とも後味の悪い事だった。
「たたいまぁー!」
とにかく話題を変え、今度こそ楽しく呑んでいると何故か子供組が帰ってきた、まだ早過ぎないか?
「お弁当、食べられなかったんだ。」
「ボートに乗りたかったのだけどね…あっ、窓とか開いてたら鍵かけてね?」
「…つまんない…」
「どうした、公園で何かあったのか?」
…仮に公園で何かあっても河川敷とかでもお弁当はたばられたのでは?
「なんかね、不審者が出たとか、怪しい人が子供を攫おうとしたとかでお巡りさんがたくさんいて、公園が立ち入り禁止になっちゃったの、だから…」
「なんかコスプレっぽい格好だって、ちょっと怖いから…」
妹はかなりご立腹だが娘ちゃんの前なので我慢してるのが分かるのは俺が兄だからだろうか?
それは仕方ない、娘ちゃんに何かあっては大変だし、弟が心配になるのも当然だ。
「…じゃあさ、皆んなで従兄弟サンたちが出てるDVD見ない?」
弟の提案で急遽リビングで上映会となる、今は娘ちゃんの機嫌を療さないと…
しかし、それは意外な方向に向かってしまった。
「あっ、パパだ!」
ヒーローに変身したパパを見て少し機嫌が良くなった娘ちゃん。
「従兄弟さんってアクションすごくないですか?」
見え見えに従兄弟を褒めまくる弟。
「うん、この頃鍛えてたんだ、バスケ部でね…」
映画部だろ、えっ、掛け持ちしてたの?
「そうなんですね、カッコいいです。」
「でも大会とかすぐ負けちゃうのよ、だから映画部に逃げて来てたのよね。」
くすくす笑いながら真相を教えてくれる嫁さん。
それからヒーローとヒロインが協力して悪役と闘う場面がテンポ悪く映し出される。
何を見せられてる感は仕方ない、娘ちゃんを喜ばそうと必死な弟が微笑ましく頼もしかった。
…のだが?
「…ねぇ、今変なの映ってなかった?」
丁度母と奥さんが台所で何か軽くつまめるモノを作ってくれている時だった。
画面はヒーローものから恋愛ものに変わり、役者も別の生徒に交代したようだ。
二つのストーリーを撮影班と演技班を入れ替えてるそうだ。
妹は娘ちゃんを膝の上に乗せて御満悦だったが、ある場面を見て何かを見つけた様だ。
「池の中に人がいたみたいなんだけど?」
場面は恋人たちが公園の池でボートに乗り、池の中央辺りで愛を語り合っているところなんだが、殆ど動かないので静止画のようだ。
「…お話しの途中だから最後まで見続けよう、シラけるからさぁ?」
俺は娘ちゃんの事を考え、その場は敢えて気にしない事にした、もし怖がって娘ちゃんが泣いたら大変だ?
なので後日従兄弟からDVDを借りて見ることにしよう
その日は俺と従兄弟と妹の三人で俺の部屋で落ち着いて鑑賞する事になった。
「この間は嫁がすまなかったな、酔っ払っていたとはいえ、何であんな事聞いたんだって叱っといたから。」
「別に気にしてないから。」
奥さんも何でそんな事を言ったのか、本人もよくわからないそうだ?
DVDの中身は前半は従兄弟や奥さんが特撮ヒーロー物を熱演していた、問題は後半の学園恋愛ドラマの方だった。
「…でお前は何を見たんだ?」
場面はあの公園の池で主役とヒロインがボートに乗って
「えっと、もう少し先よ、…そう、池の中にね……あっ、止めて!」
そう言うと停止ボタンを押し、画面ギリギリの所に注目した、するとボートが通り過ぎた池の中に腰から上を出して誰か立っている、そして場面が切り替わりボートを降りた恋人たちは公園から河川敷に移動し…この先は特に変わったところはなかったので再生を止めた。
しかし、その人物は透けて向こうが見えていた、明らかに普通では無かった…
「何だ、こんなの今まで気が付かなかったぞ?
こんなの撮影の時にいれば絶対気が付くし、学祭でもっとデカい黒板くらいのスクリーンで見てたんだぞ、気が付かないなんて…?」
やや早口で、自分に言い訳するように従兄弟は声を荒げた、実際にこの部分を撮影した訳だが本当に今まで気が付かなかったのだから。
そして、その場面を改めて見直して俺は息を呑んだ…
「…兄さん、もしかして…この人って知ってる人だった?」
妹が心配そうに俺の顔をのぞいた、それほど顔色が悪かったらしい?
「…ん、いや、ありえない…だから別人だ?」
…だってあの頃、この人は…?
「いいから言えよ、変に誤魔化さないでくれ。」
俺の歯切れの悪い答えに多少苛立ってるとも心配しているとも取れる様子の従兄弟に仕方なく本当のことを話す。
「…幼馴染なんだ、実母の…あの村でよく遊んでくれたんだ…多分何も無ければ…俺の新しい父親になってたかもしれない… でも…。」
「でも、なんだよ?」
急かす従兄弟に
「…大丈夫、兄さん?
気分悪いなら無理しないで。」
心配してくれる妹。
「亡くなったよ、オフクロと一緒に…自動車事故でな。」
「…ソレって…」
「…」
もうそれ以上言葉が続かない妹と黙ってしまった従兄弟。
「…なぁ、コレってフィルムからDVDに撮り直したんだろ、元のフィルムも映り込んでるのかな?」
従兄弟たちが引いたお陰で俺の頭が冷めた。
「…そうか、うん、なるほどな!
元のフィルムは今、当時の部長がDVDに編集するんで部室から借りてきたんだ、まだ返してなければ…」
「その部長さんの所にまだあるのね?」
従兄弟は須具様スマホを取り出して何処かに電話した。
「ども、初めまして!」
もうその日の夕方にはその部長さんの家に皆んなで押しかけていた。
とても意外だったのは、何と俺の家から歩いて行けなくもない距離に部長さんの家があった事だ⁈
「すいませんお騒がせして…」
「いや、そんなに畏まらないでいいよ、…実はさぁ、僕も色々気にしてる事があってね?」
部長さんは従兄弟とは同級生だというが、とても同じ年齢には見えないくらいに若々しい、多分従兄弟の数倍イケメンなのと飄々とした印象をあげるからだろう?
「まぁ検証の為にも順番に見ていこうか!」
「…順番…ですか?」
部長さんの家は俺や従兄弟の家に比べると三倍~五倍ぐらい有りそうな立派な豪邸で、この辺りでは有名な『地主』のお宅なので今更ながら驚いている。
多分だけど俺は何度かこの家の前を通り過ぎた事もあると思う。
「実はさぁ、君たちだけって訳じゃないんだよね、『何か見えた』と言ってきたのはさぁ~。」
彼の趣味の部屋だという広い部屋に通された、シアタールーム兼編集室だそうだ?
「連絡を貰えて嬉しかったよ~。
最近はあまり皆んなが構ってくれないからさぁ?
あっ、映像関係はもう諸々準備出来てるからね~‼︎」
こちらの気持ちを知ってか知らずか、楽しそうに話し捲る彼を、
「…相変わらずそんな調子だからだよ、こっちは部長と違って忙しいんだよ。」
と、嗜めるとも言えなくもない様子の従兄弟。
「コイツはさ、趣味で映像編集とかハマって仕事にしてる様な変人なんだわ。」
「変人は酷いなぁ~、元相棒にそれはないよー⁇」
無邪気に喜んでる様子の部長さんにやれやれという感じの従兄弟だが、その遣り取りは何処か楽しそうで高校当時からおそらくこんな感じで仲が良かったのが伺える。
「…よっと、先ずは編集前の8ミリフィルムから見てもらうよ。」
既に準備していた映写機、初めて見たが思っていたより小さい物だ。
「フィルムは部費で購入した安い物だから温製は別なんだよ。」
部屋は照明が消えてスクリーン代わりの白い壁に映像が映し出された。
音声無しの『無声映画』が始まった…
「あのDVDはね、複数の8ミリフィルムを一つにまとめた物だから、問題の部分が写ってるフィルムだけ映写するね!」
それは助かる、前半の従兄弟の活躍シーンをまた見るのは勘弁して欲しかったからだ?
「ちなみに、この二人なんだけど初めから付き合ってたそうなんだわ、その割には演技が硬いよねぇ、普段通りに振る舞えばもっと良いシーンだったのになぁ?」
と部長さんの解説に従兄弟は、
「えぇっ、初耳だよ?
そうか、アイツら付き合ってたのか!」
少し場の空気が緩んだ。
…そして、
「…あ、あれ、この辺だよね?」
「何も映ってないな、なんでだ?」
妹と従兄弟が不思議がる、俺たちがDVDで見たハズのモノが映っていなかったのだ。
…でも、俺はなんとなく予感していた?
「それではボクがフィルムをビデオテープにまとめたモノを見てみるかい?」
「ビデオテープ?」
「そ、VHSカセットだよ。
僕らが学生の頃は学園の視聴覚室だとビデオテープの方が上映会を行うのにめちゃくちゃ楽だったんだよ!」
文化祭では視聴覚室は映画部以外にも映画作りをしたクラスや倶楽部もいる訳で、ビデオデッキにテープを入れるだけなら人数もごく数人で済むそうだ。
「DVDが当たり前になるのはしばらく後だからね!
当時を思い出すよ~。」
「俺たちが見たDVDはそのビデオテープをコピーした物なんですか?」
「えっと、テープからDVDにコピーする際にパソコンでノイズ消去したり、音声のズレとか修正したんだ。
で、君たちが見たのはその修正版をマスターにしてコピーした物だね。」
どうやら他にも同じ物が映画部OBたちに配られている様だ?
「…ビデオテープの方にも映ってないわ?」
「おいおい、まさか部長がDVD編集で幽霊差し込んだのか?」
…その可能性、俺も疑った、しかし…
「見損なわないでくれたまえ!
みんなが魂込めて作った作品にそんな事はしないさ!」
この後に編集済みのDVDも確認したが、問題のシーンには何も映っていなかった⁈
「…さて実はね、君たちが見たDVD以外にも数枚コピーしていてさぁ~、渡した元映画部部員から妙な物が映し出されたとクレームがきてね、先日返品されたDVDがあるんだけど…見るかい?」
「なんだよコレ⁈」
「…映ってるけど…私たちが見た場所とは違ってるわ⁉︎」
…そう、俺たちが見たDVDには、あの人らしき人物が池の中にいた。
「そうなんだね、コッチのは池の側のベンチに半透明雲の人物が座っているんだよ。
そしてね、実はもう一枚あってさ、コレも見てくれるかな?」
そう言うと、DVDをもう一枚嬉しそうに取り出す部長さん。
「…まだあるのかよ⁈」
「コレで最後だよ、 一応ね?」
…そうか、映画部現の部員やOBらが規模すればこの元部長さんはいくらでも複製してくれるだろう?
「コレは僕らの先輩の作品でね、どうやら我が校の映画部はあの公園をロケ地にするのが伝統の様だね。」
そう言うと部長さんの表情はそれまでと違って真剣そうだ?
映し出された映像は公園のブランコや滑り台など遊戯施設を、段ボール箱を大小重ねたり繋げたりした様なハリボテなロボットが、意図的なのかドタバタと暴れ回っているシーンが映された?
「…コレって【〇〇レンジャーロボ】じゃないか、俺たちは登場させなかったけど?」
「実はね、元々映画部の処女作品はこの【小怪獣コアラ対〇〇ロボ】って怪獣特撮モノだったんだそうで、ゴジラとかウルトラマンみたいな作品を真似てたらしいんだ。」
部長さんの話では当時の部長が怪獣映画が好きでこの様な作品を作り出したらしく…
「…この後に小怪獣コアラがロボとの戦いに敗れて公園の池に沈むらしい…でもそのシーンは撮影出来なかったそうなんだ。」
「…そういえば、肝心なコアラがまだ登場してませんね?」
コアラと聞いて可愛い着ぐるみでも登場するのかと思った妹が口を開くと…
「…撮影出来なかったそうだよ。」
「…出来なかった?」
どうやら従兄弟も知らなかった様で部長さんに聞き返すと、
「…よく水中から怪獣が出てきたりするシーンがカッコいいからと監督を務めた当時の部長が真似してそんなシーンを取り入れたそうだ。
…でも池の水を吸った着ぐるみが重くなって、思う様に動けなくなるとは思ってなかったらしい。」
そこまで聞いた所で映像は公園から河川敷に切り替わり、ロボと子供たちが楽しそうに遊んでるシーンが映し出されていた。
そこでみんなの表情が険しくなった、ロボの横に一人の男性がいて共に子供たちと遊んでいるのだが…
「…オジサン…若いけどあの人に間違いない!」
そこに映し出されたのは、子供の頃に母の実家のど田舎に連れて行かれ、すぐに友達が出来ず寂しい思いをしていた俺に優しくしてくれたあのオジサンだった。
「この人は当時副部長だった人でね、責任取って退学した部長の代わりに映画部を廃部から守ってくれたそうだ。」
「…やっぱり、廃部になる様なコトが起こったんだな?」
「うん、先ずは公園側に無許可で池の中に入った事、更に撮影の為に着ぐるみなんか着て池に入った事…自主映画の撮影自体は普段から大目に見て貰えてたけど、池に入るのは流石に不味かった、幸い死人は出なかったけど…着ぐるみを着た部員が溺れてね、本来大人の腰ぐらいの深さだから普通なら溺れたりしないハズなんだけど…」
着ぐるみを着ていた事で思う様に動けなかった、素人が真似しては危険だった、もしそれで亡くなっていたら…
「よくそれで廃部を免れたな?
部長が責任を取ったとはいえ…?」
確かに問題を起こしたのだから責任取って映画部が廃部になるのは当然の流れだが?
「実はね、その頃はまだ部では無くて同好会だったんだ、だから顧問も居なくて、明確に責任を取る人物が部長…同好会だから会長ね、
そこで妥協案を考えたらしい、同好の友を守るためにね。」
…どうやら部長さんは詳しい事情を知っている様だが、まるで俺たちを揶揄う様に情報を小出しにする。
「…おい、人が悪いぞ!
クソ面倒な事はやめろ、言いたい事が有るなら早く言えよ!」
怒っている様で実は怖くなってきた従兄弟が声をかけて荒げてある?
「こっちはお前と違って大切な女もあのDVDを見ているんだぞ、何の為にココに来たと思ってるんだ⁈
アレを見た所為で呪われたりしたらと思うとだな⁉︎」
「あれ、『ほんとうに撮れた心霊動画』鑑賞会じゃないのはボクだって理解はしてるよ⁈
アレだろ、映像から何か手掛かりを見つけたいんだよね?」
このヒトはどこまで本気で喋っているのだろうか?
さすがに不安になってきたが?
「あの、ワタシ話して良いデス?」
もう待てない様子の妹、何を言い出す?
「お祓いに行きませんか?」
「…まぁ、いいけど?」
俺は小学生の頃、駄菓子屋で販売していたヒーロー物のカードを集めてた。
ほぼクラスの男子の間で流行っていたし、逆に集めていないと仲間外れにされてしまう。
今のトレーディングカードに比べると印刷も雑で安っぽい物だけど、そんな事はお構いなくダブったカードは友達と交換し、それが友達との友情を深めていた。
また裏面に印刷されたヒーローのデータやストーリーの解説など読んでは友達とヒーロー談義するのも楽しかった。
ただスナック菓子のオマケでしか手に入らない野球カードやライダーカードと違い、食べきれないスナックを捨てるとか、無駄にお菓子を買わなくても済むからと小遣い全てカード購入に使う奴もいたくらいだ。
そんな昔の事をざっくり思い出したのは、最近自宅の押入れを整理した時に全く見覚えのないヒーローカードを見つけたからだ?
なんて名前なのかも分からず、手掛かりになるような風景などの背景は無くて、合成なのかバックは一面赤色、腰に手を当て直立不動でやや上を見ているヒーロー、ただ困った事におそらく変身ヒーローだと思うのだけど結構ガチなオタクな俺でもこのヒーローがなんて名前でどんな作品なのか全くわからないのだ?
普通表はカラー印刷、裏は説明文でヒーローの名前とか印刷されてるハズだけど、
【アタリ】と赤インクで印刷されてるだけだった?
とりあえずネットで調べたが該当するモノは見つからなかった、特撮に詳しいオタ友に見せてみたら…
「それローカルヒーローか、もしくは学祭とかで作った自主制作ヒーローかもよ?」
だそうだ?
そういえば子供の頃に仲の良い従兄弟の高校生の文化祭に行った事がある様な…8ミリフィルムで撮影するのが趣味と聞いたような?
あやふやなので久しぶりに連絡したら
「おう元気か?
久しぶりだな、今度遊びに来いよ、面白いモン見せてやるから。」
従兄弟は割と近くに住んでいるが最近まで忙しくて全く会っておらず、数年前に結婚して子供もいるとか親から聞かされていた。
まだ独身の俺に美人の奥さんや可愛いお子さんを自慢したいらしく訪問を強要された?
早速、休日に嫁手土産を持って従兄弟の家にお邪魔した、奥さんとお子さんは買い物に出掛けたとかで夕食は期待していいとか、結婚するなら料理が美味い嫁が良いとか最初から機嫌良く迎えてくれた。
「…実は見てもらいたいモノがあってさ?」
「……えっ、なんでコレお前が持ってんだ?」
例のヒーローカードを見せると従兄弟はかなり驚いていたが、
「コレさ、この中身俺なんたよ。」
なんでも高校時代に映画部だったそうで、学祭で上映した作品の一つがヒーローモノだったらしい。
「他にも青春ドラマみたいなのとか色々と作ったんだ。」
このヒーローの名前は学校名の『〇〇高校』から『〇〇レンジャー』と名付けて、このヒーローカードも写真部の協力で見に来ていたちびっ子に配っていたそうだ。
「じゃあ、その時に貰ったのかな?」
「……なのかな、大体アレから十年以上経つんだぜ?
お前この頃コッチにいなかっただろう、ほら叔父さんが再婚して…まぁ、叔母さんが亡くなった時にお前はまたコッチに戻って来てたけどさぁ?」
言いにくそうに話す従兄弟、俺は小学三年の頃に両親が離婚して母親に引き取らられ親権をもぎ取った母の実家で暮らす事になり、此処より離れた他県の田舎町で暮らしていた。
「あそこからお前だけ俺の高校の学祭に遊びに来るとか普通無いだろ、それにこのカード【アタリ】だしさぁ?」
小学校卒業を前に母が当時交際していた男性とデート中に交通事故で即死した、母方の祖父母は高齢で体力的にも経済的にも俺を育てるのは困難で父も以前から俺と暮らしたいと強く希望していたので中学入学のタイミングで元の家に戻ったのだ。
戻ったと言ってもそこには俺の知らない父の家族がいて、俺は突然妹と弟が出来た、母の実家ではかなり貧しい暮らしを押し付けられた気がしたが戻ってきた家では生まれ変わったくらい快適な暮らしが始まった、
新しい母は俺と仲良くする為にいじらしい程必死でコチラが申し訳ない気持ちで、妹たちもめちゃくちゃ可愛いし遠慮無く甘えてくるので実母が亡くなった悲しみに暮れてる暇が無かった。
「…そうそう、その作品のヒロインが嫁さんでさぁ、実はコレがキッカケで向き合い始めたんだよ。」
なんか唐突に惚気られたが【アタリ】カードの謎も聞いてないし、最初に聞いた『面白いモノ』も見せてもらっていないので従兄弟には悪いが話しを戻す。
「そうそうアタリなんだけど、アレさぁ~クラスの女子が作ったクッキーとかカルメラ焼きとかと交換してたんだわ~、だからアタリカードは多分全部回収したんだわ、繰り返し使用されるの防止する為にな。」
回収の際はアタリの印刷の無いカードに取り替えていたそうなのでお菓子と交換していない子供がいてもおかしくは無いと思うが、アタリカードの枚数分しかお菓子は用意していない、お菓子は余らなかったそうだ。
「…じゃあコレは回収したカードなんじゃん、ウチの押入れから見つかったのは謎だけど?」
従兄弟や俺がお互いの家に遊びに来たことは今まで一度も無い、会うのはほとんど父方の祖父母の家だし、訳分からんと匙を投げ始めた時だった。
「ただいまー。」
買い物から奥さんが帰って来たところで初めて奥さんとお子さんを紹介された。
紹介が終わると奥さんは俺たちにお子さんを任せて早速買ってきた食材て夕飯を作り始めた、なのでひとまずヒーローカードの件は置いといてお子さんとTVゲームをして遊んでいた…が?
「パパ、コレって〇〇マン?」
お子さんが俺の持ってきたヒーローカードを見つけて父親の従兄弟に見て見てとカードを振り翳した?
「えっとな、〇〇マンじゃないよ、〇〇レンジャーな。」
「え~ちがうよ~、〇〇マンだよ~。」
なんだ、従兄弟は幼い娘に過去に自分が演じたヒーローの動画でも見せたりしたのか、それとも奥さんだったり?
もしかして『面白いモノ』とはそれか?
従兄弟と娘ちゃんがキャッキャっと楽しそうに戯れあっていると夕食の支度が出来たようだ。
夕食もご馳走になり、お子さんは寝かしつけて今度は奥さん交えてカードや『面白いモノ』について話しを再開した。
「あのね私、もしかしたら以前に俺くんと会ってるかもしれないの。」
奥さんのお父さんは小学校の先生でどうやら俺がいたど田舎の学校で数年だけ教鞭を取られていたそうだ。
「あの場所、中学も同じ校舎でしょ、私が中学を卒業するまでの条件で教師の少ないあの学校に赴任してたの、家族一緒にね。」
凄い偶然だが、こんな山があってあんな川でザリガニ釣りをしたとか、駅の側まで行かないと漫画も買えないとか今度は奥さんと俺が『田舎あるある』で盛り上がり従兄弟の存在を忘れそうになった?
「確かに買い物には苦労したけど、唯一あの『駄菓子屋』があったじゃない、駄菓子だけは手に入ったわ。」
確かにザリガニ釣りの餌は駄菓子のよっちゃんイカ、カブトムシやクワガタ取りの罠に使ったのも駄菓子の安っぽい甘い水飴みたいな…商品名なんだっけ?
「おばあちゃん一人だけでやってた店だよね、まだ有るのかな?」
「それがね、私アッチの友達と時々あったりしてるの、コッチで暮らしてる友達もいるし…。」
奥さんが友達に聞いた話ではおばあちゃんが腰を悪くしてからはお店は閉めてしまったそうで、今は駅の側で商店をしている息子さんと暮らしているそう。
「駄菓子屋があった場所は今では『スローライフ』を満喫したいとかで都会からきた若い夫婦が暮らしてるって?」
どうやら『過疎化』が進まない様にと空き家を安くかしたり、役場で色々と村おこし活動してるそうだ。
そういえば母方の祖父母の家はどうなったのだろう、母の兄が管理してるのだろか?
「それでね、駄菓子屋さんを閉店する時に私ね、コッチで暮らしてる友達と久しぶりに行ってみたの。
その時に最後だからって来ていたお客さん全員でお店の商品をが買い尽くしたの…まぁ、中にはタダでもらったモノもあったんだけどね?」
そういうと奥さんは何やら段ボール箱を俺の前に持ってきた。
「コレ、女の私がもらってもあまり嬉しくないけど、この人が興味有るかなって貰ったの。」
「そうそうコレコレ、お前に見せたかった『面白いモノ』は!」
…それはビニール袋に入った【ソフビ人形】と紙の小袋数点、その他にベーゴマやメンコなどが入っていた。
「最後に来たのが女性だけだったのね、だからコレは本当に『売れ残り』だったの。」
もしかするとこんな物に詳しい人が見たら案外と【お宝】なのかもしれないが、それがわかる人はこの場にはいなかった。
「コレ開けてもいい?」
カードが入っているだろう小袋を皆んなで開くと、
「…コレってなんて怪獣?」
「ラドンだな、コッチはアンギラスだ、
どうやら『怪獣カード』な様だ?」
メンコも同じ頃に放送されてたアニメや特撮ヒーローが印刷されたモノだった。
…てっきりこの中にあのヒーローカードが混ざっているのではとか予想してあたがそんな事は無さそうだ。
そこへ…
「…パパたち…何してるの、アタシも~…」
娘ちゃんが眠そうな目を擦りながら起き出してきた、その手には何か抱き抱えている?
ヌイグルミかと思えば何とそれは…
「…ソレって〇〇レンジャー⁈」
娘ちゃんが持っていたのはソフビ人形、それがどう見てもあの『〇〇レンジャー』そっくりなのだ?
「それね、その中に入ってたのよ、…でね、何故かこの子ソレが気に入っちゃったみたいで…」
「そうなのか、オレは知らなかったぞ?」
「それよりもこんなのまで作ってたのか、学祭の企画で?」
「そんな予算なんてある訳無いだろ、第一に何でそんな田舎の駄菓子屋にそんなモン売られてたんだ?
なぁ、お前何か知ってるか?」
「全然、全く、コレコレぽっちも?
そっか、コレって〇〇レンジャーに似てたのね?
言われるまでわからなかったわ?」
他のソフビ人形もよく確認したところ、どうやら版権無視の『パチモン』の様だ。
例えるならウルトラマンと仮面ライダーを混ぜた様な、ガンダムとマジンガーを混ぜた様なデザインのモノばかりだった。
「…じゃあ、偶々偶然このパチモンヒーローと〇〇レンジャーのデザインが似てしまったの?」
「似てるってより、完全に一致だろ、このレベルは?」
俺たちはそこから色々と討論しだしたが正しい答えなんか出てこない、こうなるとアタリカードの事も更に分からなくなってきた?
「あ~ぁ、ヤメヤメ!
今日は思い出話しを肴にワイワイやるつもりだったんだゼ⁈
ハイ、この話しはこれでお終いだ!」
俺たちはこの件は封印して呑む事にした、娘ちゃんはトイレを済ませて再びおやすみに。
「…実はさぁ、友達があの映画をフィルムからDVDに収録してくれてさ、それを見せてやるつもりだったんだけど…やめとくか?」
「…だな。」
「お兄ちゃんズルい!
私も娘ちゃんに会いたかったのに~‼︎」
高校生の妹にメチャ文句言われた、彼女にとっても従兄弟は従兄弟な訳で、後日仕方ないので再度従兄弟の家に妹と小学生の弟持参でお邪魔した。
「…ボ、ボクはいいよ、別に…。」
インドア派で恥ずかしがりの弟だが、妹と差別無く半ば強引に同行させた。
思いの外喜んでくれたのは娘ちゃんだった、オジサンよりお兄ちゃんお姉ちゃんと遊んでもらえるのが嬉しいらしい。
そんな楽しい時間もあっという間に終わりを迎え、ついには娘ちゃんが、
「お姉ちゃん、お兄ちゃん、帰っちゃヤダァーー!」
と泣き出し、妹のスカートを掴んで離さない、また遊びに来るからと言い聞かせてなんとか解放してもらった。
最も車で30分ぐらいの場所だ、その気なら歩いて行けない距離でもない。
その後、意外な事にあのインドア派の弟が自転車でちょくちょく従兄弟宅へお邪魔する様になっていた?
「…ボク、娘ちゃんにお兄ちゃんって呼んでもらえるのが嬉しいんだ。」
キッカケは何であれ、コレはコレでハッピーな結果だと思うことにした。
「それでね兄さん、今日は娘ちゃんと従兄弟さんが作ったDVDを見たよ。
…でね、気がついたんだけど、アレって撮影したのってこの辺りじゃないかな?」
俺が仕事から帰ってくると弟は嬉しそうに話してくれた。
あの件は封印する事にしたので、DVDを見るかどうか従兄弟からも確認されたがもう少し間を開けたいと誤魔化していたのだ。
「あのね、映像の中に〇〇公園の池でボートに乗ってるところとか、そこの河川敷で戦ってるシーンとかあったんだ。」
自分の知っている場所が撮影されていた事でちょとだけ嬉しかったようだ、この場所が自分の家の近くだと娘ちゃんに自慢したらしい。
「それでね、今度は娘ちゃんが公園とかこの家に遊びに行きたいって言われたんだけど…どうしよう?」
なるほど、つまり俺から父さんたちに了解を取れって事だな?
その場で弟自身がいいよと言えないトコロは恥ずかしがり屋の弟らしい、来年は弟は中学、娘ちゃんは小学生だし、まぁ『《《お年
頃》》』って事なのだろう?
父に話すと
「アイツの娘ちゃんなら父さんから見れば『孫』も同じだ!」
父さんの謎理論はさて置き、義母も是非にと喜んで、
「義姉のお孫さんもいいけど、そろそろ私たちの孫の顔も見たいのよね?」
藪蛇なのは覚悟していたが、案外俺より弟くんがその期待に応えそうな気もする?
「えっ、娘ちゃん遊びに来るの⁈
じゃあ私、ケーキ焼こうかな?」
ケーキ作りが趣味の妹が張り切りだしてる、何だか和やかな雰囲気で当日を迎えようとしていた我が家。
だからそれは本当に不意打ちの様に襲って来たのだ?
その日は従兄弟家族三人で我が家を訪問された、てっきり娘ちゃんだけかと思ってあたのだけど、待ちきれなかった父が従兄弟にみんなで来いと煽った様だ?
「お久しぶりです、叔父さん!」
「元気そうだな、まぁ上がれ。」
まるで波平に挨拶するノリスケの様とは思っても言えず、俺を含めた大人組は昼間からとりあえずビールで乾杯を始めてしまう。
そして妹がリーダーを務める子供組はロケ場所の公園へボート乗りに出かけた、お弁当持って娘ちゃんきっとお兄ちゃんお姉ちゃんに遊んでもらえて大満足して戻って来るだろう…
「そういえば俺くんは何処の高校だったのかな、私たちの後輩じゃないのよね?」
「あっ、バカ、やめろって!」
従兄弟が止める間もなく酔ってるのか彼の嫁さんが悪気のない質問を俺にしてきた、さも当然の如く…。
「はぁ、ここから電車で30分程の工業高校ですが何か?」
「ハハハ、コイツ、モノ作りが好きなんだわ、今の会社金属加工だっけ?」
すかさずフォローする従兄弟だけだ、
「いや、それは一昨年まで、今は家電量販店だけど。」
…俺は中学の時にコチラに戻ったが、どういう訳か親の離婚で田舎の学校に転校、そして母の事故死で戻って来た事が面白可笑しく悪意を持って広められた可能性が有った。
「ちょっと母親の件でよく思ってなかった人がいたらしくてさ、変な噂広められてたんだ。」
「何それ、酷くない!」
直接イジメこそ無かったが無視され早々と地元の公立から少し離れた私立校に転校し、高校も地元では無くてここから離れた高校へ通ったのだ。
「…もうその件は解決済みでね、噂を広めた人からは誤解だったと謝罪してくれたよ。」
父が上手く誤魔化してくれた、本当は学校や警察、町会会長がなかに入ってくれたのだが、何とも後味の悪い事だった。
「たたいまぁー!」
とにかく話題を変え、今度こそ楽しく呑んでいると何故か子供組が帰ってきた、まだ早過ぎないか?
「お弁当、食べられなかったんだ。」
「ボートに乗りたかったのだけどね…あっ、窓とか開いてたら鍵かけてね?」
「…つまんない…」
「どうした、公園で何かあったのか?」
…仮に公園で何かあっても河川敷とかでもお弁当はたばられたのでは?
「なんかね、不審者が出たとか、怪しい人が子供を攫おうとしたとかでお巡りさんがたくさんいて、公園が立ち入り禁止になっちゃったの、だから…」
「なんかコスプレっぽい格好だって、ちょっと怖いから…」
妹はかなりご立腹だが娘ちゃんの前なので我慢してるのが分かるのは俺が兄だからだろうか?
それは仕方ない、娘ちゃんに何かあっては大変だし、弟が心配になるのも当然だ。
「…じゃあさ、皆んなで従兄弟サンたちが出てるDVD見ない?」
弟の提案で急遽リビングで上映会となる、今は娘ちゃんの機嫌を療さないと…
しかし、それは意外な方向に向かってしまった。
「あっ、パパだ!」
ヒーローに変身したパパを見て少し機嫌が良くなった娘ちゃん。
「従兄弟さんってアクションすごくないですか?」
見え見えに従兄弟を褒めまくる弟。
「うん、この頃鍛えてたんだ、バスケ部でね…」
映画部だろ、えっ、掛け持ちしてたの?
「そうなんですね、カッコいいです。」
「でも大会とかすぐ負けちゃうのよ、だから映画部に逃げて来てたのよね。」
くすくす笑いながら真相を教えてくれる嫁さん。
それからヒーローとヒロインが協力して悪役と闘う場面がテンポ悪く映し出される。
何を見せられてる感は仕方ない、娘ちゃんを喜ばそうと必死な弟が微笑ましく頼もしかった。
…のだが?
「…ねぇ、今変なの映ってなかった?」
丁度母と奥さんが台所で何か軽くつまめるモノを作ってくれている時だった。
画面はヒーローものから恋愛ものに変わり、役者も別の生徒に交代したようだ。
二つのストーリーを撮影班と演技班を入れ替えてるそうだ。
妹は娘ちゃんを膝の上に乗せて御満悦だったが、ある場面を見て何かを見つけた様だ。
「池の中に人がいたみたいなんだけど?」
場面は恋人たちが公園の池でボートに乗り、池の中央辺りで愛を語り合っているところなんだが、殆ど動かないので静止画のようだ。
「…お話しの途中だから最後まで見続けよう、シラけるからさぁ?」
俺は娘ちゃんの事を考え、その場は敢えて気にしない事にした、もし怖がって娘ちゃんが泣いたら大変だ?
なので後日従兄弟からDVDを借りて見ることにしよう
その日は俺と従兄弟と妹の三人で俺の部屋で落ち着いて鑑賞する事になった。
「この間は嫁がすまなかったな、酔っ払っていたとはいえ、何であんな事聞いたんだって叱っといたから。」
「別に気にしてないから。」
奥さんも何でそんな事を言ったのか、本人もよくわからないそうだ?
DVDの中身は前半は従兄弟や奥さんが特撮ヒーロー物を熱演していた、問題は後半の学園恋愛ドラマの方だった。
「…でお前は何を見たんだ?」
場面はあの公園の池で主役とヒロインがボートに乗って
「えっと、もう少し先よ、…そう、池の中にね……あっ、止めて!」
そう言うと停止ボタンを押し、画面ギリギリの所に注目した、するとボートが通り過ぎた池の中に腰から上を出して誰か立っている、そして場面が切り替わりボートを降りた恋人たちは公園から河川敷に移動し…この先は特に変わったところはなかったので再生を止めた。
しかし、その人物は透けて向こうが見えていた、明らかに普通では無かった…
「何だ、こんなの今まで気が付かなかったぞ?
こんなの撮影の時にいれば絶対気が付くし、学祭でもっとデカい黒板くらいのスクリーンで見てたんだぞ、気が付かないなんて…?」
やや早口で、自分に言い訳するように従兄弟は声を荒げた、実際にこの部分を撮影した訳だが本当に今まで気が付かなかったのだから。
そして、その場面を改めて見直して俺は息を呑んだ…
「…兄さん、もしかして…この人って知ってる人だった?」
妹が心配そうに俺の顔をのぞいた、それほど顔色が悪かったらしい?
「…ん、いや、ありえない…だから別人だ?」
…だってあの頃、この人は…?
「いいから言えよ、変に誤魔化さないでくれ。」
俺の歯切れの悪い答えに多少苛立ってるとも心配しているとも取れる様子の従兄弟に仕方なく本当のことを話す。
「…幼馴染なんだ、実母の…あの村でよく遊んでくれたんだ…多分何も無ければ…俺の新しい父親になってたかもしれない… でも…。」
「でも、なんだよ?」
急かす従兄弟に
「…大丈夫、兄さん?
気分悪いなら無理しないで。」
心配してくれる妹。
「亡くなったよ、オフクロと一緒に…自動車事故でな。」
「…ソレって…」
「…」
もうそれ以上言葉が続かない妹と黙ってしまった従兄弟。
「…なぁ、コレってフィルムからDVDに撮り直したんだろ、元のフィルムも映り込んでるのかな?」
従兄弟たちが引いたお陰で俺の頭が冷めた。
「…そうか、うん、なるほどな!
元のフィルムは今、当時の部長がDVDに編集するんで部室から借りてきたんだ、まだ返してなければ…」
「その部長さんの所にまだあるのね?」
従兄弟は須具様スマホを取り出して何処かに電話した。
「ども、初めまして!」
もうその日の夕方にはその部長さんの家に皆んなで押しかけていた。
とても意外だったのは、何と俺の家から歩いて行けなくもない距離に部長さんの家があった事だ⁈
「すいませんお騒がせして…」
「いや、そんなに畏まらないでいいよ、…実はさぁ、僕も色々気にしてる事があってね?」
部長さんは従兄弟とは同級生だというが、とても同じ年齢には見えないくらいに若々しい、多分従兄弟の数倍イケメンなのと飄々とした印象をあげるからだろう?
「まぁ検証の為にも順番に見ていこうか!」
「…順番…ですか?」
部長さんの家は俺や従兄弟の家に比べると三倍~五倍ぐらい有りそうな立派な豪邸で、この辺りでは有名な『地主』のお宅なので今更ながら驚いている。
多分だけど俺は何度かこの家の前を通り過ぎた事もあると思う。
「実はさぁ、君たちだけって訳じゃないんだよね、『何か見えた』と言ってきたのはさぁ~。」
彼の趣味の部屋だという広い部屋に通された、シアタールーム兼編集室だそうだ?
「連絡を貰えて嬉しかったよ~。
最近はあまり皆んなが構ってくれないからさぁ?
あっ、映像関係はもう諸々準備出来てるからね~‼︎」
こちらの気持ちを知ってか知らずか、楽しそうに話し捲る彼を、
「…相変わらずそんな調子だからだよ、こっちは部長と違って忙しいんだよ。」
と、嗜めるとも言えなくもない様子の従兄弟。
「コイツはさ、趣味で映像編集とかハマって仕事にしてる様な変人なんだわ。」
「変人は酷いなぁ~、元相棒にそれはないよー⁇」
無邪気に喜んでる様子の部長さんにやれやれという感じの従兄弟だが、その遣り取りは何処か楽しそうで高校当時からおそらくこんな感じで仲が良かったのが伺える。
「…よっと、先ずは編集前の8ミリフィルムから見てもらうよ。」
既に準備していた映写機、初めて見たが思っていたより小さい物だ。
「フィルムは部費で購入した安い物だから温製は別なんだよ。」
部屋は照明が消えてスクリーン代わりの白い壁に映像が映し出された。
音声無しの『無声映画』が始まった…
「あのDVDはね、複数の8ミリフィルムを一つにまとめた物だから、問題の部分が写ってるフィルムだけ映写するね!」
それは助かる、前半の従兄弟の活躍シーンをまた見るのは勘弁して欲しかったからだ?
「ちなみに、この二人なんだけど初めから付き合ってたそうなんだわ、その割には演技が硬いよねぇ、普段通りに振る舞えばもっと良いシーンだったのになぁ?」
と部長さんの解説に従兄弟は、
「えぇっ、初耳だよ?
そうか、アイツら付き合ってたのか!」
少し場の空気が緩んだ。
…そして、
「…あ、あれ、この辺だよね?」
「何も映ってないな、なんでだ?」
妹と従兄弟が不思議がる、俺たちがDVDで見たハズのモノが映っていなかったのだ。
…でも、俺はなんとなく予感していた?
「それではボクがフィルムをビデオテープにまとめたモノを見てみるかい?」
「ビデオテープ?」
「そ、VHSカセットだよ。
僕らが学生の頃は学園の視聴覚室だとビデオテープの方が上映会を行うのにめちゃくちゃ楽だったんだよ!」
文化祭では視聴覚室は映画部以外にも映画作りをしたクラスや倶楽部もいる訳で、ビデオデッキにテープを入れるだけなら人数もごく数人で済むそうだ。
「DVDが当たり前になるのはしばらく後だからね!
当時を思い出すよ~。」
「俺たちが見たDVDはそのビデオテープをコピーした物なんですか?」
「えっと、テープからDVDにコピーする際にパソコンでノイズ消去したり、音声のズレとか修正したんだ。
で、君たちが見たのはその修正版をマスターにしてコピーした物だね。」
どうやら他にも同じ物が映画部OBたちに配られている様だ?
「…ビデオテープの方にも映ってないわ?」
「おいおい、まさか部長がDVD編集で幽霊差し込んだのか?」
…その可能性、俺も疑った、しかし…
「見損なわないでくれたまえ!
みんなが魂込めて作った作品にそんな事はしないさ!」
この後に編集済みのDVDも確認したが、問題のシーンには何も映っていなかった⁈
「…さて実はね、君たちが見たDVD以外にも数枚コピーしていてさぁ~、渡した元映画部部員から妙な物が映し出されたとクレームがきてね、先日返品されたDVDがあるんだけど…見るかい?」
「なんだよコレ⁈」
「…映ってるけど…私たちが見た場所とは違ってるわ⁉︎」
…そう、俺たちが見たDVDには、あの人らしき人物が池の中にいた。
「そうなんだね、コッチのは池の側のベンチに半透明雲の人物が座っているんだよ。
そしてね、実はもう一枚あってさ、コレも見てくれるかな?」
そう言うと、DVDをもう一枚嬉しそうに取り出す部長さん。
「…まだあるのかよ⁈」
「コレで最後だよ、 一応ね?」
…そうか、映画部現の部員やOBらが規模すればこの元部長さんはいくらでも複製してくれるだろう?
「コレは僕らの先輩の作品でね、どうやら我が校の映画部はあの公園をロケ地にするのが伝統の様だね。」
そう言うと部長さんの表情はそれまでと違って真剣そうだ?
映し出された映像は公園のブランコや滑り台など遊戯施設を、段ボール箱を大小重ねたり繋げたりした様なハリボテなロボットが、意図的なのかドタバタと暴れ回っているシーンが映された?
「…コレって【〇〇レンジャーロボ】じゃないか、俺たちは登場させなかったけど?」
「実はね、元々映画部の処女作品はこの【小怪獣コアラ対〇〇ロボ】って怪獣特撮モノだったんだそうで、ゴジラとかウルトラマンみたいな作品を真似てたらしいんだ。」
部長さんの話では当時の部長が怪獣映画が好きでこの様な作品を作り出したらしく…
「…この後に小怪獣コアラがロボとの戦いに敗れて公園の池に沈むらしい…でもそのシーンは撮影出来なかったそうなんだ。」
「…そういえば、肝心なコアラがまだ登場してませんね?」
コアラと聞いて可愛い着ぐるみでも登場するのかと思った妹が口を開くと…
「…撮影出来なかったそうだよ。」
「…出来なかった?」
どうやら従兄弟も知らなかった様で部長さんに聞き返すと、
「…よく水中から怪獣が出てきたりするシーンがカッコいいからと監督を務めた当時の部長が真似してそんなシーンを取り入れたそうだ。
…でも池の水を吸った着ぐるみが重くなって、思う様に動けなくなるとは思ってなかったらしい。」
そこまで聞いた所で映像は公園から河川敷に切り替わり、ロボと子供たちが楽しそうに遊んでるシーンが映し出されていた。
そこでみんなの表情が険しくなった、ロボの横に一人の男性がいて共に子供たちと遊んでいるのだが…
「…オジサン…若いけどあの人に間違いない!」
そこに映し出されたのは、子供の頃に母の実家のど田舎に連れて行かれ、すぐに友達が出来ず寂しい思いをしていた俺に優しくしてくれたあのオジサンだった。
「この人は当時副部長だった人でね、責任取って退学した部長の代わりに映画部を廃部から守ってくれたそうだ。」
「…やっぱり、廃部になる様なコトが起こったんだな?」
「うん、先ずは公園側に無許可で池の中に入った事、更に撮影の為に着ぐるみなんか着て池に入った事…自主映画の撮影自体は普段から大目に見て貰えてたけど、池に入るのは流石に不味かった、幸い死人は出なかったけど…着ぐるみを着た部員が溺れてね、本来大人の腰ぐらいの深さだから普通なら溺れたりしないハズなんだけど…」
着ぐるみを着ていた事で思う様に動けなかった、素人が真似しては危険だった、もしそれで亡くなっていたら…
「よくそれで廃部を免れたな?
部長が責任を取ったとはいえ…?」
確かに問題を起こしたのだから責任取って映画部が廃部になるのは当然の流れだが?
「実はね、その頃はまだ部では無くて同好会だったんだ、だから顧問も居なくて、明確に責任を取る人物が部長…同好会だから会長ね、
そこで妥協案を考えたらしい、同好の友を守るためにね。」
…どうやら部長さんは詳しい事情を知っている様だが、まるで俺たちを揶揄う様に情報を小出しにする。
「…おい、人が悪いぞ!
クソ面倒な事はやめろ、言いたい事が有るなら早く言えよ!」
怒っている様で実は怖くなってきた従兄弟が声をかけて荒げてある?
「こっちはお前と違って大切な女もあのDVDを見ているんだぞ、何の為にココに来たと思ってるんだ⁈
アレを見た所為で呪われたりしたらと思うとだな⁉︎」
「あれ、『ほんとうに撮れた心霊動画』鑑賞会じゃないのはボクだって理解はしてるよ⁈
アレだろ、映像から何か手掛かりを見つけたいんだよね?」
このヒトはどこまで本気で喋っているのだろうか?
さすがに不安になってきたが?
「あの、ワタシ話して良いデス?」
もう待てない様子の妹、何を言い出す?
「お祓いに行きませんか?」
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