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六道地蔵場巡り〜地域限定の風習?

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 実はアレから気になって、自分でもネットで【地蔵巡り】と言う単語を検索してみた。

 すると、なんかたくさん有ったよ!

 やはり霊場を巡礼する習わしの事の様だ。

 関東にもその霊場が有るらしく、その多くは【六道地蔵菩薩霊場巡り】と言うモノらしい。

 他にも、八ヶ所巡りや八十八ヶ所巡りなどあった。

 有名な所だと京都や鎌倉にも有るらしい?


 ココで言う【六道】とは、毎回漫画からの引用で悪いのだけど、【聖闘士星矢】で乙女座のシャカが放つ必殺技【六道輪廻】を知っていれば、説明は要らないだろう?


 う~む、コレなら俺が子供の頃に一時流行ったあの遊びの正体がわかるかも知れない?

 もしかして、アレは仏教系厨二病なお兄さん(もしくはお姉さん)が流行らせたイタい遊びだったかも知れない?


 もしかしたら、御書印集めに近いかもな?
 

 ソレはひとまず置いておいて、係長から聞いた話しだ!


 結局、あの後係長は酔い潰れて寝てしまったので、詳しく聞く事が出来なかったのだ。




 なので、後日係長に【地蔵巡り】の事を教えてもらおうとガード下の屋台のおでん屋に誘った。


 シラフではとても話せないとか言われたので…。


 「…すまんな、あんまりよく覚えてないんだよ。」


 「…いえ、こちらこそ。

 ちょっと民間伝承とか民話収集をしている友達がいるモンでして。」


 「初めまして、【船川】といいます。

 調べた事を【漫画】や【文章】にして、してます、コレ良かったらどうぞ。」


 …フナさんも召喚したさ、でも準備いいな?


 フナさんは過去に出した【探索記】を係長にプレゼントした、微妙な顔されてしまったが?


 「木田くん、君は面白い友達がいるんだね?」

 「…係長、彼、印税でウハウハですから、今日は取材って事で彼が持ちますからドンドン食べましょう!」

 「そんなに儲かるのかい、作家って⁈」

 嘘では無いよ。


 で稼いだ訳では無いけど?



 「親父は自動車会社の営業マンでね、中々の高成績で上司からも認められていたそうなんだが有る時、取引先のお嬢さんと【お見合い】をしないかと話しが有ったそうだ。
 でね……  」


 係長が思い出話を語りだした、そんなのいいから肝心な【地蔵巡り】の事を聞きたいのだが、気持ちよく話しているのを邪魔してはいけない⁈

 もしかして秘密にしている事とかかも知れないし?


 「へぇ、そうなんですかぁ。

 大変参考になります。」


 …話し上手は聞き上手?

 フナさんが上手いこと、合いの手を挟んでくれていた。



 まぁ、一応要約すると、

 上客の所のご令嬢をモノにすれば、出世は勿論の事、この先ウハウハだって言われたそうなんだけど、結婚を約束しておる幼馴染、つまり係長のお母さんがいるからと断った。

 その後、幼馴染と結婚した係長のお父さんは【自動車】ならぬダンバ…じゃないコンバインやトラクター等の【耕運機】を製造販売しているに【出向】させられてしまったそうだ。


 しかも特に売り上げの悪い各地の【営業所】に転勤させられまくっていたらしい。

 見合いを断った上、見せ付ける様に結婚しやがったと思われたらしく、どうやら目の敵にされた様だと後にお袋さんが話してくれたそうだ。

 その息子である係長は子供の頃から転校ばかりでうんざりしていたが、妹さんは最初は割と平気だったそうだ。


 しかし、有る時


 「アタシ、ココが好き!

 もう転校なんてヤダ!

 お父さんなんて大嫌いっ‼︎」


 そう叫んで飛び出した事があるそうだ。




 「…転校で辛いのは折角出来た友達と別れなければいけない事さ、

 だから俺は途中から友達を作らない様にしたんだが、妹はから友達を作らない様にしていたんだ。

 兄の俺が見ても可愛い子でな、転校先では直ぐにチヤホヤされて、逆にそれが煩わしかったみたいな感じだったよ?」


 そんな妹さんがお父さんにそんな事を言う原因がどうやら【地蔵巡り】をして遊んだ村での事らしい。


 どうやら係長のお父さんは【天然】な人の様で、【出向】を命じられた際に、

 「営業マンの鏡と言える君なら、潰れかけたの【営業所】を盛り返せる

 頼んだよ!」

 と、言われたらしい?


 (多分、棒読みだろうなぁ?)


 「ハイ、頑張ります!」

 と、そのままの意味で受け取ってまで頑張ってきていたそうだ。

 そう、その日まで…


 子会社がお父さんのお陰で、親会社よりなってしまうまで!


 結婚してしばらくすると、東北の小さな営業所に飛ば派遣された。


 お父さん的にはやる事は一つだ、お客様に成りうるお宅を一軒一軒廻り、世間話をし、商品の希望要望を聞き、時には農作業を手伝い、慌てず焦らす信頼を重ねていたのた。

 過疎化が進むこんな場所に都会から来た若い営業マンは、おそらく左遷させられたんだろうと村の皆んなや営業所の従業員は思っていたが、可愛い奥さんと共に明るく逞しく頑張っている!

 しかも奥さんのお腹は日増しに大きくなっていく⁈

 世話好きな年寄りが放っておく訳が無い!

 いつしか家族ぐるみの付き合いが始まり、村の殆どのお宅で大なり小なり耕運機を購入していた!

 さらには軽トラや自家用車も新しく購入する際は親会社の自動車を購入するなどのご贔屓ぶりだ⁈


 コレは完全に上役たちの思惑が外れた?


 業績の悪い営業所は【処分】する予定だった!

 ソレが出来なくなった、その理由が無くなったからだ、ならば他の営業所にさせればいい⁈

 今度は南の方に、イヤイヤもっと北に!

 …ってことを繰り返していたそうだ?

 実際、係長は小学校六年で八回転校したそうだ?

 その間に子会社は全国ネットでテレビCMを流したり、バラエティーやクイズ番組のスポンサーになったりと知名度と収益を上げていたそうだ?

 「最初は地方CMだったんだが、何か面白いって話題になってからは一気に知名度が上がって、親父がテレビの取材を受けた事も有るくらいだ。」


 そうなると、本丸の親会社も指を咥えて見ている訳にもいかなくなってしたらしい?

 そろそろコチラに戻っておいでと内示があったそうだ。

 

 どうやらお父さんを子会社に追いやったのは、自分の面子を潰されたと腹を立ててる当時の直属の上司で、社長や重役らは本当に潰れ掛けた営業所を再生する為に出向させたのだと思われていたらしい。

 

 「その時に戻れば、大出世だったろうなぁ?」

 「戻らなかったんですか、東京に?」


 「俺は嬉しかったさ、当時中学生でコレで東京の高校に行けると思ったからな、…でも妹は違ったらしい…、当時住んでた場所にずっと居たいと言い出したんだ。

 とても仲の良い友達が出来たから、東京なんて行きたくないってさ?


 でもな、おかしいんだよ。


 今まで友達を作ろうとしなかったアイツが【友達】だなんてさ?」
 
 「良い事じゃないですか、きっとよほど気の合う子が居たんですよ?」

 「それがな、その時はその村には妹と歳の近い子供はいなかったんだよ、分校の教室に生徒は妹だけだったんだ?」

 「…係長は?

 同じ学校に通って…」


 「妹はその時小4でな、俺は中学生で自転車で1時間かけて町のに通っていたんだ。」


 なんでもその時に中学の勉強を教えられる先生が居ないとか、資格がどうとか言われたそうだ?


 「…友達は何も学校だけとは限らないよ。

 入学前の子や世話していた動物とか……違いますか?」
 
 フナさんが質問してくれた。

 俺も係長のが長いので、最初こそうんざりしていたが、【妹さんの友達】が誰なのか気になってきたトコロだった。


 「さすがに作家先生はカンが良いなぁ、

 そう、アイツは裏山で野犬に餌付けしてたんだ。

 多分元は飼い犬なんだろうな?

 子犬を二匹連れた親子だったよ。」


 「そのまま飼えば良かったのでは?」


 「ウチの親父、犬だけは苦手だったんだ。

 だから妹は隠れて餌をやっていたらしい?」


 「ソレからどうなったんです?」


 「…その地方では無くてな、その前にいた場所で【地蔵回し】って言う風習があったんだ。」


 ちょっと信じられない風習なんだが、村の子供たちがなんとお地蔵さんを簀巻きにして村中を引き摺り回すというのだ⁈


 時期は忘れたそうだが、なんでもそうする事で村の【厄】をお地蔵さんが吸い取ってしてくれるらしい?


 最後に引き摺り回されたお地蔵さんを川で綺麗に洗い清めて元の場所に戻し、綺麗な着物を着せてお化粧をし、沢山のお供えをするそうだ。


 「…なんかテレビで見たことありますよ、そんな変わった風習。

 日本の面白いお祭りなんかを紹介する番組か何かで…
 
 ソレが何か関係しているのですか?」


 もう話しは係長とフナさんで進んでいた。


 俺は美味いおでんを横で食べるだけの人になっていた。


 「…お地蔵さんを引き摺り回した子供たちは、お地蔵さんの【お役目】をという事で、お礼にどんな願いも叶うと言われてるそうなんだが…

 実際に「テストで百点取った」とか「ゲーム機を買ってもらえた」とかそんな願いぐらいは叶っていたみたいだ?」

 「…でも、ソレって?」

 「まぁそうだな、お地蔵さんが叶えた訳では無いな、偶然だったり、サンタの正体みたいなオチだろ?


 でもな、その時の妹にはソレに縋るしか無かったんだ…

 妹の願いが犬が飼える様にって事だとは思うが、別の村の風習をで真似たらしい、比較的小さな地蔵モノを夜中に引き摺り回したんだろう…


 朝方、村のハズレでブツブツ言いながら歩いていた妹が駐在さんに保護されたよ。

 妹が引っ張っていたのは、地蔵では無かったんけどな。」


 「…もしかして、墓石だったのではないですか?

 多分ですが、無縁仏の…」



 「…その通りだよ、アンタ、作家じゃなくて探偵なんじゃないのかい?」


 「…仮に妹さんが引っ張っていたモノがお地蔵でも結果は同じだったかも知れませんよ?」

 どう言うこと?

 「…まあ、そうかもな?」


 係長が辛そうに口を開く。


 「妹は【狗神憑き】になっていたんだ。」
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