異種戦士バトルロイヤル

えるだ~

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最終安地

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 多くの見せ場と死者を出したバトルロイヤルももう終盤。残る参加者は3人だけ。

 その内の一人、稲辻は道路のど真ん中に立って瞑想していた。態々相手を探す必要はない。必ず向こうから現れる。
 そう確信しているからだ。
「……来た」
 稲辻が目を開けるのと振り返れる。そこには黒い鎧を纏った男。ブレンだ。
「おや?なんだ思ったより強そうじゃねぇか」
「俺も、てっきり運がいいだけの奴が来るんじゃないかと思っていたんだが」
 二人が剣を抜き、構える。
 そして両者が踏み込もうとした次の瞬間、
「!」
 二人の間に何かが転がってきた。
「! グレネード!」
 爆弾に気付いた二人はその場から離れる。
 直後、グレネードが爆発する。道路のコンクリートが吹き飛び、砂煙が舞う。
「クソッ、誰だ!」
ブレンが叫ぶ。一方稲辻は冷静に状況を把握していた。
「おいおいおい~楽しそうだから混ざってやるよぉ?」
 現れたのはレッドアイ。右手には金棒、そして左手は、
「・・・お前、その腕」
 レッドアイの左腕はキャノン砲になっていた。しかも身体中に機械の部品をそのまま身体に埋め込んでくっ付けているようでかなりグロテスクだ。
 そしてブレンにはそのパーツに見覚えがあった。間違いなくあのアンドロイドの物だろう。
「へっへっへっ!これで三竦みだな」
「俺が勝つ」
「戯れ言だな」
 三人が武器を構え、お互いを睨む。
 そして同時に踏み込む。
 戦いが始まった。
 最初に仕掛けたのは稲辻だった。刀で斬りかかる。だが、それはフェイント。本命は蹴りによる追撃だ。
しかしブレンはその攻撃を難なく避ける。だが、
「うおっ!?」
突然ブレンの足元が爆発した。レッドアイが砲弾を撃ち込んだのだ。
「ケケケっ!」
「鬱陶しいな」
「同意!」
 そして二人がレッドアイに向けて剣を振った。
 だが、 ガキンッ! 金属音が響く。稲辻の斬撃は金棒によって受け止められてしまった。そしてブレンの攻撃は、
「あぅちっ!!」
レッドアイの左腕に命中した。キャノン砲に傷がつく。
「ドラァッ!」
「ふっ!」
 そして二人の蹴りがレッドアイの胴に叩き込まれる。
「ぐえっ!」
 レッドアイが吹っ飛んだのを見た稲辻がブレンに刀を振り下ろす。
 ブレンは剣でこれを防ぎ、空いた左手に鉄拳を召喚する。
「鉄拳!」
 ブレンの拳が放たれるが、稲辻は上手く刀を動かして、刀の柄でこのパンチを防御する。
 そのまま刀を横薙ぎに振るい反撃するが、ブレンはこれをバックステップで回避する。
「チィッ!」
すると今度はレッドアイが起き上がり、砲弾を放つ。稲辻はこれを避け、反撃しようとするが、
「チャーンス!」
 鉄拳を捨て、両手に剣を召喚したブレンが体制の悪い稲辻に切り掛かった。
 ブレンの斬撃が命中する。かと思われたが、
「!?」
「うぇっ!?」
 一瞬稲辻が光り、そして一瞬で姿を消した。
 と思った次の瞬間、
「ぐっはぁ!」
 いつの間にかレッドアイに接近した稲辻が、彼を蹴り飛ばした。
 吹き飛んだレッドアイは車に激突し、車の爆発に巻き込まれた。
「瞬間移動・・・じゃねぇな。シンプルにクソ速い」
 稲辻の身体に電気が迸る。稲辻が電気の能力を使用したのだ。
「ここからは、遠慮なしだ」
 そして、穴道の時よりも激しく電気がバチバチと音を立て、稲辻の周囲を駆け巡った。
「〈雷神!憑依!〉」
 稲辻がダンッと地を踏み、独特な姿勢で刀を構える。風神雷神図の雷神のようなポーズだ。
「・・・なるほど、憑き人か」
 憑き人。一部の強力な妖や亡霊、神の力を授かった存在のことだ。十中八九、稲辻は雷神の憑き人だろう。
「神だろうが何だろうが関係ねぇ」
 ブレンが数本剣を召喚し、自身の周囲に漂わせる。
「全員殺すだけだ!」
 そしてパチンッと指を鳴らすと、浮遊する剣達が一斉に稲辻の方へ剣先を向ける。
「行け!」
そして剣が稲辻に向かって発射される。
だが稲辻は動かない。すると、
「!?」
 真っ直ぐ飛んでいった剣達は、稲辻の体に纏われた電流によって弾かれた。稲辻はなにもしていない。奴の電気が自動で剣を弾いたのだ。
「・・・近付くしかないな」
 ブレンは四本の剣を自身の背後で翼のようにして浮遊させ、手には刀を握る。
 そして一気に踏み込み、稲辻に迫る。
「・・・」
対する稲辻は無言。だがブレンの接近に合わせて刀を振る。
ブレンも刀でそれを防ぐ。
そして激しい打ち合いが始まった。が、
「くっ!ぐぉっ!」
 ブレンが押されていた。稲辻の卓越した剣撃に加え、電撃が自動で攻撃してくる。剣を複数操っているブレンとて捌き切れない。
「ちっ!」
 ブレンは大きなハンマーを召喚して地面に叩き付けた。
 コンクリートが砕け、周囲に瓦礫が飛び散る。飛び散った破片も電気によって防がれるが、稲辻の動きが一瞬止まる。
 その隙に浮遊する四本の剣をまとめて稲辻に振り下ろした。
 流石にこの一撃を受け止めるのは愚策と考え、稲辻が下がる。
「はぁ、ふぅー」
「諦めてもいいぞ?お前が俺に勝つ事はない」
「・・・俺はな」
「?」
 ブレンの鎧の隙間から黒い霧が溢れ出す。パラドラナと戦っていた時よりも量が多い。すると、
「フハハ!殺していいんだなぁ!?」
「あぁ、・・・今は協力しろ」
 霧からギョロついた不気味な目が現れ、稲辻を笑いながら睨んだ。
「なんだ、お前も憑き人か」
 黒霧の禍々しい感じからして、かなり強力な悪霊が憑いているようだ。
 ブレン自身もかなりの力を持っている。恐らくは憑依している悪霊の力も大きいのだろう。
「さっさと片付ける」
 ブレンが稲辻に斬り掛かる。稲辻はブレンの攻撃を全て受け流す。
「おらぁ!」
 ブレンが剣を高速で振る。稲辻はその攻撃を刀で受け止めたが、あまりのパワーに吹っ飛ばされた。
「ちっ!」
 稲辻は地面に着地すると、無数の電撃をブレン目掛けて放った。
 しかし、ブレンの周りに漂う四本の剣が盾となり、全ての電撃を防いだ。そしてブレン本人はガードを剣に任せて突貫する。
『切り殺してやる!』
 無数の刃と電流が激しく激突した。
 周囲に衝撃と外れた攻撃がばら蒔かれ、周りの建物や道路を切り裂き、焼き溶かした。
「はぁぁぁぁ!!」
「オラァァァァ!!」
 二人の力が拮抗する。
 稲辻が空中へ飛び上がり、剣先を天に向ける。
 すると一瞬にして雷雲が立ち込め、刀に大きな雷を落とした。
「雷霆!」
 刀に雷が纏わり、刀の刃を覆って巨大な電気の剣へと変貌する。
『クヘヘッ!面白れぇ!』
 黒霧から一本の綺麗な剣が現れ、ブレンはそれを握った。
「天雲!」
 ブレンが地を蹴って飛び上がり、二つの強力な刃が衝突した。
 凄まじい衝撃波と雷撃が周囲を襲う。
「ぬぁああああ!!」
「ぐぉおおおお!!!」
『死ねぇえええ!!』
 二人が全力をぶつけ合ってつばぜり合いを起こしている。そんな二人に接近する影が。
「!?」「!」
「俺も混ぜろよなぁ!」
 レッドアイだ。彼も空中へ飛び上がって、二人の剣に向かって金棒を振り下ろした。
 第三の力が加わったことによりブレンの魔力、稲辻の電力、レッドアイの機械のエネルギーが光りだし、爆発した。
 その爆発は今までとは比にならない規模であり、周囲の物は消し飛びきのこ雲が上がった。

 さら地となったゴーストタウン。すると、瓦礫の中から誰かが姿を現した。白いマスクに赤い目のついた男。
「ふぇー!死んだかと思っ──」
 次の瞬間、レッドアイは横から顔面を蹴られ、頭が吹っ飛んでいった。
 残された彼の体はパタリと倒れる。
「いい加減死んどけ」
 そこに居たのは、ボロボロの甲冑と刀を握った男。
 稲辻だ。
 そこで何処からともなく声が響き渡る。
『決着ぅううううう!!!!』
 稲辻は刀を下ろし、瓦礫に腰を掛ける。
『第八回バトルロイヤル!優勝は!稲辻 光之助ぇええ!!!』

第八回バトルロイヤル 稲辻VSブレンVSレッドアイ
接戦の末、稲辻の勝利
優勝 稲辻 光之助
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