PK以外に興味なし

えるだ~

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チーターPK

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「オラオラァ!ここかここかぁ!?」
 自身を爆炎で包み込み、チーターはそこらじゅうに雷を飛ばした。炎のせいでどこに敵がいるのかは分からないが、それは相手も同じだ。無限に攻撃できる自分に分がある。
 チーターはそう考え、魔法を乱射した。
 楽しい!楽しい!とチーターは心の中がいっぱいだった。一度死ぬだけで全てが失くなり、そうならないように皆が必死で頑張っている中、自分だけはそんなこと気にせず殺戮を楽しめるのだ。こんなに楽しい事はない。と思っていた。


 一方ジャック等。
「・・・テイラ、お前を刺していいか?」
「はぁ!?何言ってんの!?」
「初対面だから信用出来んだろうが、信じてくれればあのクソチーターを絶対殺す」
「・・・刺すって、ダメージはどのくらい入るの?」
「限界までお前にダメージを与えたい。残るHPは十分の一もないだろうな」
「はぁ?!やだよ!」
「頼むそのぐらいダメージが必要なんだ」
「んんー・・・分かった!けど殺したら私の仲間全員連れてお前に復讐するからな!」
「ああ了解だ」
 承諾を得たジャックは、戦斧を盾のように構えるテイラの背中にブレードを突き刺した。
「〈吸血〉」
 そしてテイラの血、HPを吸い取る。
「おいもういいんじゃないか!?」
「あいつを殺すには一撃で仕留めないとならない!もっと必要だ!」
 テイラのHPが半分を切る。
「もういいんじゃ!?」
「まだだ!」
 テイラのHPが三割を切る。
「まだ!?」
「もう少し!」
 そしてテイラのHPが一割を切った。
「よし!」
 ジャックがテイラからブレードを引き抜き、ポーチから回復薬を取り出してテイラに掛ける。
「感謝するぞ」
 ジャックがテイラの肩をポンッと叩いてそう言うと、彼はスキルを発動させた。
「〈血装〉」
 吸血を行ったブレードから血が溢れ出し、その血が鎧のようにジャックの全身を覆う。
「〈血爪〉」
 今度はブレードに血が纏われ、刃をより鋭利に、長くする。
「準備は終わった!?」
「ああ」
 そしてジャックがブレードを構える。
「〈血閃〉!」
 ジャックが大きな血の斬撃を放つ。その斬撃は炎を切り裂き、中にいたチーターをも切り付けた。
 が、チートで強化されていチーターはこの程度では死なない。ジャックもそれは分かっている。この〈血閃〉でやりたかったのは、爆炎を切り払うことだ。
「うぉ!?」
 炎が散っていき、中にいたチーターが姿を現す。
「〈縮地〉!」
「!?」
 そして一瞬の内にジャックはチーターに接近した。そして左手のブレードをチーターの肩に突き刺す。
「ぐおっ!」
「〈吸血〉!」
 本来は刺している限りチーターのHPは減り続けるが、自動回復と相殺しているようで継続ダメージ効果はなくなっていた。が、
「今なら死ぬだろ!」
「!」
 状況を理解したチーターが急いで魔法を放とうとするが、速度は圧倒的にジャックが上だ。
「〈螺旋血拳〉!」
 ジャックの右腕を血が螺旋状に覆い、その拳がチーターの胸部にブチ当たる。
「がっ!」
「死ねザコがぁ!」
 そして螺旋状に纏われた血がドリルのように広がり、チーターの体を貫いた。
「ぐっ!」
 HPが0になり、チーターが消えて始める。
「金掛けてまでズルして、それでも負けるたぁ、モノホンのザコだなお前」
「くっそがぁああああ!」
 チーターはそう叫びながら消えて行った。
 ボトリと落ちたチーターのレッドバッグは、散りきらず残っていた火の中に落下して消滅した。
「ふぅ」
「うぉぉお!よくやったぁホネぇ!」
 テイラがジャックに抱き着き、ガシガシと乱暴に彼の頭を撫でる。
「ああ分かった分かった」
 ジャックがテイラを引き離す。
「お前ソロだろ!私クランに入ってるんだ!お前も来いよ!チーター撃退したなんて言えば皆大喜びで仲間に入れてくれるさ!」
「いや、生憎俺はソロ専なんでな」
「そーか・・・ま、無理強いはしないさ!またどっかで会おうぜチートスレイヤー」
「・・・おう」
 テイラは元気に手を振って、笑顔で去っていった。



数十分後 テイラ所属クランの拠点
「いや、ホントにヤバかった!森が焼け野原になったもん!」
 テイラが興奮気味に仲間達へ報告していた。
「あんまこのゲームチーター沸かないのに珍しいなぁ」
「そーなんだよ、ビックリしたわぁ」
「で、うちのお誘いを断るって何者?」
「さぁ?ホネのマスクと白いフード被ってて・・・どっかで見たことある気がするんだけどなぁ」
「それ骨顔じゃね?ちょっと前に配信者ボコしたって話題になってた」
「あいつはソロじゃなかったことないか?パーティ組んでただろ?」
 皆がそう話し合っていると、誰かが部屋に入ってくる。
「彼はソロですよ。パーティを組んでたのは多分あの時だけです」
「え?そうなのリーダー?」
「あいつと会ったことあるのか?コノハ」
 そこにいたのは、剣聖・コノハだった。
「えぇ、前に少し。・・・それに、近々再開することになると思いますよ」
「え?どういうこと?」
「それは、その日までのお楽しみです」
 コノハがニコッと微笑んだ。
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