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二
現在進行形
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人類の長いゲーム史に残る戦いがあった。合計千人以上のプレイヤーを、数人のプレイヤーが撃退したという話だ。当時は色々変な噂が飛び交ったり、ニュースになったりと大騒ぎになったのだが、
「・・・もう二年も前か」
あの戦いから、彼の人生に大きな影響を与えたあの戦いから今日でちょうど二年となる。時の流れとは早いものだ。
あの日、あいつを見て以降、このゲームにすっかりハマってしまい、二年間休まず毎日プレイしてしまっている。
「・・・雨、降ってきたな」
草原に雨がポツポツ降って来て、草と土と、彼が身に付けている鎧、武器、フルフェイスの兜、そして周囲に転がる無数のレッドバッグを濡らした。このレッドバッグを作ったのは勿論、
「いたぞ!いた!」
後方から声が響き、振り返る。
三人のプレイヤーがこちらに向かって来ていた。友好的ではなさそうだ。
そりゃそうだろう。さっき彼等の仲間を殺したのだから。
「お前がガイルだな!最近ここらでPKしまくってるっつう!」
「正解~」
そう気だるげに答えながらガイルは2つの剣を取り出した。
片方の剣は『頭割』、それより少し短い方は『武器折』という、対になっているそこそこのレア武器。
「どりゃぁあ!!」
一人の男が切り掛かって来るが、ガイルはそいつの攻撃をブキオリで軽く受け流し、彼の腹にトウワリを突き刺した。
「ぐっ!」
「あれ?ここは弱点じゃないか」
防具の弱点を突いたつもりだったが、ズレたようだ。もしくはこいつのステータスが防御寄りか。
「くっ!」
男が後退すると、今度は後衛の魔女が氷の礫を放って来た。
「よっ」
ガイルは礫を避けて敵に接近する。
(・・・四人か・・・イケるか?いや、殺るしかないな)
てっきり三人かと思っていたが、もう一人いた。想定外だが、接近した以上やるしかない。
「ふんっ!」
女剣士の攻撃を回避し、体を回転させて女の首元に蹴りを入れる。
「うぉっ!」
女が怯んでいる隙に地を蹴って加速し、先程一撃加えた男にトドメを刺そうとしたが、
「〈サンダー〉!」
「近付くな!」
魔女と射手が離れた位置で攻撃を仕掛けてくる。
「面倒くせぇ~」
「オラァッ!」
すると女剣士が後方から接近し、ガイルに剣を振り下ろした。
「〈回転〉」
ガイルはスキルを使用して体を反転させ、後方からの攻撃を防ぐ。
「チッ!」
「武器の振りが遅いねぇ」
ガイルはトウワリを手放して女剣士を掴む。
「死ねぇ!」
今度は後ろから男が剣を構えて突撃してきたので、
「よっと!」
ガイルは女剣士を引っ張って体を回し、自分と女剣士との位置を入れ換えた。
「あっ!?」
結果男の攻撃は女剣士を切り裂く事となった。
「何やってん──」
女剣士が消える。これで三人。
「くっ!」
HPの減っている男が下がろうとする。
「逃がすか!」
ガイルが男に接近し、ブキオリを振り下ろす。が、
硬い半透明な壁で攻撃が防がれる。
「ん?」
見ると、どうやら魔女の防御魔法のようだ。
「ふんっ!」
障壁が消えると同時に男が剣を振って来たので、一旦後退して避ける。
「食らえっ」
射手がまた矢を放つが、ガイルは矢を素手で受け止めた。
(・・・ステータスでは全体的に俺が勝ってるな。だが、面倒なコンビネーションだなぁ)
ガイルが左手をスッと出す。すると、地面に突き刺さっていたトウワリが勝手に動き出し、彼の手に戻って行った。この武器に付与されている〈ブーメラン〉という魔法の効果だ。
「・・・さてと、それじゃあ・・・」
ガイルが三人に睨みを効かせ、しばらく沈黙が流れる。そして、
「〈ヒーリング〉」
魔女が男に回復魔法を掛けた。ガイルはその隙を逃さず動き出す。
三人組の右を通り過ぎるように走る。狙いは、
「俺か!」
射手が素早く矢を放つが、ガイルには当たらない。
「このっ!」
男が近付いて来て剣を水平に振るうが、ガイルはジャンプしてそれを避け、男の頭上を飛び越した。
「なっ!」
「くっ!」
射手は迫るガイルに真っ正面から矢を放つも、簡単に避けられ接近される。
「おら死んどけ!」
そしてトウワリを使って腹を切り裂かれた。
「がっ!」
防御力の高くない射手は一撃で死んだ。今度は防御魔法は間に合わなかったようだ。
「ちっ!」
「よしよし、あと二人」
「〈ファイアボール〉!」
魔女の攻撃をかわし、再度距離を取る。
「ネナ!俺の防御に集中だ!」
「了解~!」
「防御されんのは・・・面倒だ」
ガイルは『トウワリ』と『ブキオリ』を構える。そして、その二つをくっ付けた。
「は?」
するとブキオリの柄が抜けて、それをトウワリの柄の末端に接続する。するとどうだろう、双剣が大剣へと変化した。
「『胴裂』、完成だ」
そう呟くと、ガイルは地を蹴って二人に接近した。
「ネナ!」
「はいっ!」
ガイルがドウザキを振り下ろすが、防御魔法の障壁で防がれる。しかし、
「!?」「うっ!!」
障壁には、見る見る内にヒビが入って行った。
「よいっ──しょぉっ!!」
そして障壁が打ち破られ、その魔法ごと男の体を切り裂いた。
「ぐぼぁっ!!?」
男は血のエフェクトを噴き出し、消えて行った。
「・・・さて、後はお前か」
ガイルがドウザキを肩に担ぎ、魔女に近付く。
「くっ!〈フライ〉!」
魔女は飛行魔法を使用し、逃げようとするが、
「逃がすかよ!〈炎縄〉」
すると、ガイルの腕に巻き付いているような状態で燃えた縄のような物が現れる。ガイルは手慣れた動きでその縄を魔女へ放った。
「うわっ!?」
縄は見事に魔女の足に巻き付いた。
「これ、スキル!?」
「よっ」
ガイルは縄を引き、動揺している魔女を容赦なく地面に落とした。
「何なのよ!?あんた何者!」
戦士が魔法を使うことは滅多にないはずだ。
「・・・俺は、殺人鬼だ」
そう答えを出して、思い切りドウザキを魔女へ振り下ろした。
その威力から周囲の地が揺れ、魔女は消えていく。
「すまんね、サーバー1のPKプレイヤーを目指してるからよ」
ガイルは陽気にそう呟いた。
「・・・もう二年も前か」
あの戦いから、彼の人生に大きな影響を与えたあの戦いから今日でちょうど二年となる。時の流れとは早いものだ。
あの日、あいつを見て以降、このゲームにすっかりハマってしまい、二年間休まず毎日プレイしてしまっている。
「・・・雨、降ってきたな」
草原に雨がポツポツ降って来て、草と土と、彼が身に付けている鎧、武器、フルフェイスの兜、そして周囲に転がる無数のレッドバッグを濡らした。このレッドバッグを作ったのは勿論、
「いたぞ!いた!」
後方から声が響き、振り返る。
三人のプレイヤーがこちらに向かって来ていた。友好的ではなさそうだ。
そりゃそうだろう。さっき彼等の仲間を殺したのだから。
「お前がガイルだな!最近ここらでPKしまくってるっつう!」
「正解~」
そう気だるげに答えながらガイルは2つの剣を取り出した。
片方の剣は『頭割』、それより少し短い方は『武器折』という、対になっているそこそこのレア武器。
「どりゃぁあ!!」
一人の男が切り掛かって来るが、ガイルはそいつの攻撃をブキオリで軽く受け流し、彼の腹にトウワリを突き刺した。
「ぐっ!」
「あれ?ここは弱点じゃないか」
防具の弱点を突いたつもりだったが、ズレたようだ。もしくはこいつのステータスが防御寄りか。
「くっ!」
男が後退すると、今度は後衛の魔女が氷の礫を放って来た。
「よっ」
ガイルは礫を避けて敵に接近する。
(・・・四人か・・・イケるか?いや、殺るしかないな)
てっきり三人かと思っていたが、もう一人いた。想定外だが、接近した以上やるしかない。
「ふんっ!」
女剣士の攻撃を回避し、体を回転させて女の首元に蹴りを入れる。
「うぉっ!」
女が怯んでいる隙に地を蹴って加速し、先程一撃加えた男にトドメを刺そうとしたが、
「〈サンダー〉!」
「近付くな!」
魔女と射手が離れた位置で攻撃を仕掛けてくる。
「面倒くせぇ~」
「オラァッ!」
すると女剣士が後方から接近し、ガイルに剣を振り下ろした。
「〈回転〉」
ガイルはスキルを使用して体を反転させ、後方からの攻撃を防ぐ。
「チッ!」
「武器の振りが遅いねぇ」
ガイルはトウワリを手放して女剣士を掴む。
「死ねぇ!」
今度は後ろから男が剣を構えて突撃してきたので、
「よっと!」
ガイルは女剣士を引っ張って体を回し、自分と女剣士との位置を入れ換えた。
「あっ!?」
結果男の攻撃は女剣士を切り裂く事となった。
「何やってん──」
女剣士が消える。これで三人。
「くっ!」
HPの減っている男が下がろうとする。
「逃がすか!」
ガイルが男に接近し、ブキオリを振り下ろす。が、
硬い半透明な壁で攻撃が防がれる。
「ん?」
見ると、どうやら魔女の防御魔法のようだ。
「ふんっ!」
障壁が消えると同時に男が剣を振って来たので、一旦後退して避ける。
「食らえっ」
射手がまた矢を放つが、ガイルは矢を素手で受け止めた。
(・・・ステータスでは全体的に俺が勝ってるな。だが、面倒なコンビネーションだなぁ)
ガイルが左手をスッと出す。すると、地面に突き刺さっていたトウワリが勝手に動き出し、彼の手に戻って行った。この武器に付与されている〈ブーメラン〉という魔法の効果だ。
「・・・さてと、それじゃあ・・・」
ガイルが三人に睨みを効かせ、しばらく沈黙が流れる。そして、
「〈ヒーリング〉」
魔女が男に回復魔法を掛けた。ガイルはその隙を逃さず動き出す。
三人組の右を通り過ぎるように走る。狙いは、
「俺か!」
射手が素早く矢を放つが、ガイルには当たらない。
「このっ!」
男が近付いて来て剣を水平に振るうが、ガイルはジャンプしてそれを避け、男の頭上を飛び越した。
「なっ!」
「くっ!」
射手は迫るガイルに真っ正面から矢を放つも、簡単に避けられ接近される。
「おら死んどけ!」
そしてトウワリを使って腹を切り裂かれた。
「がっ!」
防御力の高くない射手は一撃で死んだ。今度は防御魔法は間に合わなかったようだ。
「ちっ!」
「よしよし、あと二人」
「〈ファイアボール〉!」
魔女の攻撃をかわし、再度距離を取る。
「ネナ!俺の防御に集中だ!」
「了解~!」
「防御されんのは・・・面倒だ」
ガイルは『トウワリ』と『ブキオリ』を構える。そして、その二つをくっ付けた。
「は?」
するとブキオリの柄が抜けて、それをトウワリの柄の末端に接続する。するとどうだろう、双剣が大剣へと変化した。
「『胴裂』、完成だ」
そう呟くと、ガイルは地を蹴って二人に接近した。
「ネナ!」
「はいっ!」
ガイルがドウザキを振り下ろすが、防御魔法の障壁で防がれる。しかし、
「!?」「うっ!!」
障壁には、見る見る内にヒビが入って行った。
「よいっ──しょぉっ!!」
そして障壁が打ち破られ、その魔法ごと男の体を切り裂いた。
「ぐぼぁっ!!?」
男は血のエフェクトを噴き出し、消えて行った。
「・・・さて、後はお前か」
ガイルがドウザキを肩に担ぎ、魔女に近付く。
「くっ!〈フライ〉!」
魔女は飛行魔法を使用し、逃げようとするが、
「逃がすかよ!〈炎縄〉」
すると、ガイルの腕に巻き付いているような状態で燃えた縄のような物が現れる。ガイルは手慣れた動きでその縄を魔女へ放った。
「うわっ!?」
縄は見事に魔女の足に巻き付いた。
「これ、スキル!?」
「よっ」
ガイルは縄を引き、動揺している魔女を容赦なく地面に落とした。
「何なのよ!?あんた何者!」
戦士が魔法を使うことは滅多にないはずだ。
「・・・俺は、殺人鬼だ」
そう答えを出して、思い切りドウザキを魔女へ振り下ろした。
その威力から周囲の地が揺れ、魔女は消えていく。
「すまんね、サーバー1のPKプレイヤーを目指してるからよ」
ガイルは陽気にそう呟いた。
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