PK以外に興味なし

えるだ~

文字の大きさ
上 下
36 / 62

赤ずきん

しおりを挟む
「お、賞金が上がってら」
 ステータスボードを見ていたガイルが呟く。
 賞金とは、半年前のアップデートで追加された要素で、PKの数とその期間に応じてプレイヤーに掛けられる仕様となっている。
「50万ゴールドか。よしよし」
 満足そうに呟き、ボードをポーチにしまってから頭を上げる。
 ガイルは山道のど真ん中に立っていたのだが、道の先から歩いてくる奴等がいた。
「護衛ミッションかな?」
 プレイヤーが二人と、馬車で手綱を引いているNPCが一人。あの馬車を指定場所まで届けるクエストなのだろう。が、関係ない。
「お?なんだ?」
 向こうもこちらに気付いたようだ。
 ガイルは背に担いでいた双剣を引き抜き、構える。そして思い切り地を蹴り、馬車の方へ接近した。
「ぐっ!」
 ガイルの攻撃は、騎士の大型な盾で防がれるが、万全な体勢ではなかった為か姿勢が崩れる。
「なんだお前!」
 騎士が反撃してメイスを振るが、ガイルはそれをサッと避けて、盾で隠しきれていない騎士の足を切った。
「うっ!」
 騎士は急いで足を隠すが、そうすると今度は頭ががら空きだ。
 ガイルのトウワリが奴の頭部に振り下ろされるが、
「ドラッ!」
「おっと」
 騎士の仲間である武士が跳んで来てガイルを蹴った。剣で防ぐが、少し押し飛ばされる。
「大丈夫?」
「おう。まさか邪魔が入るとは」
 二人が並び、こちらを睨む。
「何のようや?何で邪魔する?」
「趣味だ」
「・・・チッ」
 和解は不可能と理解した二人は武器を構える。
 そして三人それぞれが踏み込もうとしたその時、
「!」
 ガイルと二人組の間に何かが降って来て転がった。ガイルはそれが何か瞬時に理解し、後ろへ跳び退いた。
 そしてガイルの予想通り、転がったそれは破裂して中から大量の煙を噴き出した。
「ぐわっ!」
「何だ!煙幕か!」
「なんだなんだぁ?」
 煙幕から逃れたガイルは周囲を警戒する。すると、
「うがっ!」
「ぐぉっ!?」
 煙幕の中から声がした。先程の二人だ。何が起こったかは考えるまでもない。
「・・・ふむ」
 双剣を構える。それと同時に煙幕が晴れ、誰かが現れた。
「ぐふっ!」
 消えていく騎士と、武士に大鎌を突き刺ている赤いケープマントを身に付けた女だ。
「よっ」
 女が鎌を引き抜くと、武士はパラパラと消えて行った。そして女がこちらへ振り向く。
「・・・お前は」
 白髪浅黒の女。見覚えがある。
「あ?私のこと知ってんの?へへっ、やったね、有名になってきたもんだなぁ」
「いや、二年前にあったなと思ってな」
「は?二年前?」
「二年前といえば?」
「・・・あの戦いか?・・・あそこにいたのか」
「あぁ、お前に邪魔されたよ」
「はぁ?邪魔?・・・邪魔って・・・あ!お前あの時の!?」
 ガイルは兜含め装備が変わっているため気付かなかったのだろうが、思い出したようだ。
「邪魔って!お前が邪魔したんだろうが!」
「いいや、邪魔したのはお前だ。俺の方が先に踏み出してた」
「はぁ?・・・もういい、殺人鬼リッパーになった私の力でブッ殺してやんよ!」
「・・・お前もリッパーなのか?」
「お前も?つまりあんたもか?」
「・・・まぁな」
「なんだ?あのプレイヤーに影響されちまったかぁ?」
「お前こそどうなんだ?」
「・・・まぁいい、ブッ殺すことにはかわりないし!」
 女が大鎌を構え、ガイルも双剣を構えた。そして次の瞬間、
「ひぃぃ!!」
 馬車のNPCが突然声を上げた。
「あ?」
 すると突然、林の中から何かが飛び出して来た。
「あぁ!?」
 出てきたのは上位の魔物達だった。
「護衛クエストの奴等か!」
 先程の二人組が倒す予定だった魔物達だろう。対人に特化したクラスであるリッパーのガイルでは部が悪い。
「クソッ!」
 
しおりを挟む

処理中です...