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二
殺し屋と殺人鬼
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「・・・ここか」
「あぁ、間違いないはずだ」
巨大都市アスガル。その都市のとある路地裏にポツンとあるポストがあった。
「このポストにターゲットと報酬金を入れたら殺してくれるはずだ」
「一体どんな奴なんだ?最強の殺し屋って奴は?」
「知らねぇ、殺された奴ですら顔を見てないらしいからな。日本サーバー七不思議の一つさ」
「・・・七不思議なんて聞いたことねぇが?」
「・・・今作ったのさ」
他愛もない会話をしながらポストにターゲットの情報と多額の報酬金を入れる。
「頼むぞ殺し屋。ハルさんを殺したクソ野郎をぶっ殺してくれ!」
依頼はガイルの殺害だ。
ガイルが獲物を探す為に森の中を歩き、アスガルへ向かおうとしていた。すると、
「あ?」
ギリギリギリギリと、長年このゲームをプレイしてきたガイルすら聞き覚えのない音が聞こえてきた。
「・・・何の音だ?」
興味をそそられたガイルは導かれるように森の奥へ入って行く。
気が付くと周囲は巨大樹だらけの森の中だった。
「おやおや?ここら辺から聞こえたはずだが」
すると、キイーンと嫌な音がした。ガイルはその音を知っている。
「!」
ガイルは急いでその場から離れる。
すると次の瞬間、先程までガイルが立っていた地面を何かが貫いた。離れていなかったらガイルの身体に穴が空いていただろう。
「・・・音か」
目にも止まらぬあの速度。そしてあの攻撃前の音。間違いなく音響魔法だ。
音響魔法はMPの消費が少なく、速度が音速に近いかそれ以上と速い。その代わりに攻撃力が高い術ほど発動に時間が掛かり、術のチャージ中には独特な音が響いて相手にバレやすいデメリットを持つ。
「音響魔法を組み合わせればゲーム内に存在しない音も作り出せる・・・誘い込まれたか」
ガイルは背の双剣を抜き、構える。まずは敵の音使いを見つけなければ。
「・・・」
しばらくの静寂。警戒を強めるガイルが何気なく一歩踏み出した。すると、
「!!」
足元の地面が一瞬光った。それが何を現しているか知っているガイルは急いで跳び退く。
そして予想通り、光った地面が爆発し、周囲に土や石が散って爆音が鳴り響いた。
「トラップか!」
その時、普通のプレイヤーならこの爆発に目がいって聞き逃すであろう音をガイルの耳が拾った。
キィィーンと、またあの音だ。
「チッ!」
ガイルは地面を転がるようにして飛んで来た音撃を回避し、すぐさま立ち上がって双剣を構えるが、立ち上がった瞬間ガイルの足元がボコッと隆起した。
そして地面から丸太のような岩が発射された。ガイルはギリギリそれを避ける。
「うぉっ!」
回避には成功したが、ガイルは空中に浮き上がってしまった。そしてまた音響魔法を溜める音が聞こえる。
「〈回転〉!」
ガイルは溜めの音が聞こえなくなると同時にスキルを発動させ、身体を高速回転させる。その回転にあわせて武器を振り、迫って来た音撃を何なんか弾いた。
「あっぶねぇ!」
着地し、ガイルが顔を上げる。先程の攻撃は上から放たれていた。周囲を覆うどれかの巨木の上に音使いがいるはずだが、樹には葉が生い茂っている上にそもそも樹がデカ過ぎて下からではろくに上が見えない。
(・・・どこにどんな罠があるか分からん以上変に動き回れねぇ・・・仕方ない、出し惜しみなしだ)
ガイルは片足を上げ、1日一度しか使用できない強力なスキルを発動する。
「〈炎海〉!!」
ガイルがそう叫んで足を地面に叩きつけると、そこから炎が波のように広がり、周囲の地面を焼いた。
地面に仕掛けられた罠や辺りの木々が炎にのまれ、焼き払われる。
「降りてこいよ!じゃなきゃ焼かれるだけだぞ!」
ガイルは上を見上げて声を出す。すると、燃えて行く樹から女が降りて来て焼け焦げた大地に着地する。黒いフードを被り、マフラーで顔の下半分を隠した女だ。
「・・・お前・・・見覚えあるなぁ・・・確か手配書にのってた」
懸賞金が一定以上掛けられた人物は手配書にのる。確か7、80万の懸賞金がついていたような・・・。今はガイルの方が高いだろうが。
「音使いだったのか、最強の殺し屋って奴は。中々珍しい構成だな、面白いぜ」
ガイルはニヤニヤ笑いながら陽気にブキオリをクルクル回す。
「だが、溜めの長い音響魔法はサシの勝負じゃ使えねぇ。罠も全部焼き払った。大人しく首を差し出すんだな!」
「・・・最強とまで言われる私が罠に頼った戦い方しかできないとでも?」
「あぁ、間違いないはずだ」
巨大都市アスガル。その都市のとある路地裏にポツンとあるポストがあった。
「このポストにターゲットと報酬金を入れたら殺してくれるはずだ」
「一体どんな奴なんだ?最強の殺し屋って奴は?」
「知らねぇ、殺された奴ですら顔を見てないらしいからな。日本サーバー七不思議の一つさ」
「・・・七不思議なんて聞いたことねぇが?」
「・・・今作ったのさ」
他愛もない会話をしながらポストにターゲットの情報と多額の報酬金を入れる。
「頼むぞ殺し屋。ハルさんを殺したクソ野郎をぶっ殺してくれ!」
依頼はガイルの殺害だ。
ガイルが獲物を探す為に森の中を歩き、アスガルへ向かおうとしていた。すると、
「あ?」
ギリギリギリギリと、長年このゲームをプレイしてきたガイルすら聞き覚えのない音が聞こえてきた。
「・・・何の音だ?」
興味をそそられたガイルは導かれるように森の奥へ入って行く。
気が付くと周囲は巨大樹だらけの森の中だった。
「おやおや?ここら辺から聞こえたはずだが」
すると、キイーンと嫌な音がした。ガイルはその音を知っている。
「!」
ガイルは急いでその場から離れる。
すると次の瞬間、先程までガイルが立っていた地面を何かが貫いた。離れていなかったらガイルの身体に穴が空いていただろう。
「・・・音か」
目にも止まらぬあの速度。そしてあの攻撃前の音。間違いなく音響魔法だ。
音響魔法はMPの消費が少なく、速度が音速に近いかそれ以上と速い。その代わりに攻撃力が高い術ほど発動に時間が掛かり、術のチャージ中には独特な音が響いて相手にバレやすいデメリットを持つ。
「音響魔法を組み合わせればゲーム内に存在しない音も作り出せる・・・誘い込まれたか」
ガイルは背の双剣を抜き、構える。まずは敵の音使いを見つけなければ。
「・・・」
しばらくの静寂。警戒を強めるガイルが何気なく一歩踏み出した。すると、
「!!」
足元の地面が一瞬光った。それが何を現しているか知っているガイルは急いで跳び退く。
そして予想通り、光った地面が爆発し、周囲に土や石が散って爆音が鳴り響いた。
「トラップか!」
その時、普通のプレイヤーならこの爆発に目がいって聞き逃すであろう音をガイルの耳が拾った。
キィィーンと、またあの音だ。
「チッ!」
ガイルは地面を転がるようにして飛んで来た音撃を回避し、すぐさま立ち上がって双剣を構えるが、立ち上がった瞬間ガイルの足元がボコッと隆起した。
そして地面から丸太のような岩が発射された。ガイルはギリギリそれを避ける。
「うぉっ!」
回避には成功したが、ガイルは空中に浮き上がってしまった。そしてまた音響魔法を溜める音が聞こえる。
「〈回転〉!」
ガイルは溜めの音が聞こえなくなると同時にスキルを発動させ、身体を高速回転させる。その回転にあわせて武器を振り、迫って来た音撃を何なんか弾いた。
「あっぶねぇ!」
着地し、ガイルが顔を上げる。先程の攻撃は上から放たれていた。周囲を覆うどれかの巨木の上に音使いがいるはずだが、樹には葉が生い茂っている上にそもそも樹がデカ過ぎて下からではろくに上が見えない。
(・・・どこにどんな罠があるか分からん以上変に動き回れねぇ・・・仕方ない、出し惜しみなしだ)
ガイルは片足を上げ、1日一度しか使用できない強力なスキルを発動する。
「〈炎海〉!!」
ガイルがそう叫んで足を地面に叩きつけると、そこから炎が波のように広がり、周囲の地面を焼いた。
地面に仕掛けられた罠や辺りの木々が炎にのまれ、焼き払われる。
「降りてこいよ!じゃなきゃ焼かれるだけだぞ!」
ガイルは上を見上げて声を出す。すると、燃えて行く樹から女が降りて来て焼け焦げた大地に着地する。黒いフードを被り、マフラーで顔の下半分を隠した女だ。
「・・・お前・・・見覚えあるなぁ・・・確か手配書にのってた」
懸賞金が一定以上掛けられた人物は手配書にのる。確か7、80万の懸賞金がついていたような・・・。今はガイルの方が高いだろうが。
「音使いだったのか、最強の殺し屋って奴は。中々珍しい構成だな、面白いぜ」
ガイルはニヤニヤ笑いながら陽気にブキオリをクルクル回す。
「だが、溜めの長い音響魔法はサシの勝負じゃ使えねぇ。罠も全部焼き払った。大人しく首を差し出すんだな!」
「・・・最強とまで言われる私が罠に頼った戦い方しかできないとでも?」
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