PK以外に興味なし

えるだ~

文字の大きさ
上 下
52 / 62

一撃

しおりを挟む
「罠が失くなろうが問題ない」
 そう言い放つと、音使いは格闘家のように構えた。先程の魔法威力から考えるに格闘家との混合構成とかではないはずだが。
「・・・まず、お前が『最強』とか呼ばれてる事が気に食わねぇ。俺は色々荒れてた二年前からこのゲームをしているが、お前は十中八九アイツ以下だ」
「アイツ?・・・ああ、ドクロマスクのアイツか。・・・奴と戦ったことはないが、どうでもいい。依頼が来ていないなら殺す必要もないしな。それに私は『最強』なんて称号に拘っちゃいない」
「そうか。ならこれは俺の我が儘だが、お前をここで殺して、その称号は消し去ることにしよう。アイツ以外が『最強』を名乗るのは違和感しかない。それに、アイツが最強じゃないと殺す意味もない」
「お前も欲しいのか?『最強』って称号が」
「いらんさ!」
 ガイルは地を蹴り、音使いに近付いて双剣を振り下ろす。音使いはそれを回避し、魔法を放とうとするがガイルの切り返しの方が速い。
「その『最強』を殺すのが目的だ!」
 双剣が音使いに迫るが、彼女は身体をクルッと翻して攻撃をかわす。スキルやステータスを生かした回避ではない。単純なキャラコンによる回避だ。
「純粋な魔術師が俺の攻撃をこんなに避けれるとはな。中々の操作技術だ」
 ガイルは連続で双剣を振り回し、音使いは避けたり魔法の盾で防いだりしながらガイルの攻撃を捌く。
「ドラッ!」
 ガイルは一瞬で双剣を合わせて大剣に変形させ、ドウザキを振り下ろすが、彼女は魔法の盾を上手くあわせてタイミングよくガイルの攻撃を受け流した。ジャストガードだ。
 結果ガイルの姿勢が崩れる。
「ぬっ!」
 その隙に音使いが魔法を発動する。
「〈ショックウェーブ〉!」
 音響魔法の衝撃波が発生し、ガイルを少しながら吹っ飛ばす。
「ぬおっと!」
 ガイルが空中に浮いている隙に音使いは別の魔法を溜める。
「〈ソニックジャベリン〉!」
 空気の槍が作り出され、それが音速で放たれる。
「くっ!」
 ガイルはその槍を弾こうと試みるが、間に合わずガイルの肩を槍が貫く。
「ぐわっと!」
 ガイルは受け身をとってすぐに立ち上がり、音使いを見る。すると、
「〈サウンドブラスト〉!」
 音使いが次の魔法を放とうとしていた。
「〈炎爆〉!」
 ガイルもスキルを発動して爆炎を放ち、音使いの魔法を相殺する。
「チッ!」
 音使いが別の魔法の準備を始めたが、
「!!」
 ガイルが散りきっていない炎から飛び出して来て、彼女の胸倉を掴んだ。
「離──」
「ドリャア!!」
 そして思い切り音使いの顔をぶん殴り、続けて蹴り飛ばした。
「ぐふっ!」
 音使いが吹っ飛ばされ、焦げた大地を転がる。
「チッ!、うわっ!?」
 顔を上げると、そこにはドウザキを振り上げたガイル。音使いはゴロッと転がってドウザキの一撃を何とか避け、ガイルから離れる。
「危ないな・・・フゥ・・・」
 息を整え、立ち上がり、自身のHPを確認する。
 魔術師系は後方支援が基本のためHPが元から少ない。リッパーであるガイルの渾身の一撃を食らっい、残りのHPはそれほど多くない。あの大剣を食らえば一発でおじゃんだろう。
 普通にやれば殺られる。そう確信した音使いはとある手に出る。
「・・・おい、ゲームをしないか殺人鬼」
「ゲーム?」
「私は今から、最大火力の一撃を放つ。お前も一発撃ってこい。火力勝負だ」
「ふ~む」
 ガイルは悩む素振りをしながらドウザキを下ろす。そして口を開いた。
「いいぜ、乗った」
 それを聞いて音使いはニヤリと笑う。そして最高火力の魔法を放つ準備を始めた。
「ふーー」
 彼女の右手に空気が収束し、エネルギーの塊のようにまとまって行く。
「ハッ、面白そうだな!」
 ガイルが放とうとしているスキルも溜めが必要なため、ガイルも左手をドウザキから離して構える。すると左手の手甲がマグマのように赤くなり、湯気を出す。
「さあ!喰らわせる!」
しおりを挟む

処理中です...