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二
音速
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「準備はいいな音使い」
「えぇ、チャージは完──」
「そうじゃねぇ」
ガイルが音使いの言葉を遮り、言う。
「死ぬ覚悟はできたんだよなぁ?」
ニヤケ声でガイルが問い、音使いは鼻で笑い飛ばす。
「お前の方こそ!」
そう叫び、二人は自身の火力最大の術を発動させる。
「〈ソニックカノン〉!」
「〈滅火〉!!」
音使いの手からは超ド級の音波が、ガイルの手からは〈炎爆〉とは比にならない程の爆炎が放たれる。
そして二つの術がぶつかり合い、周囲の物体を吹き飛ばしながら押し合う。だが、ガイルは焦っていなかった。溜めがいる代わりに速いのが特徴の音響魔法の〈ソニックカノン〉と、元より火力自慢な炎スキルなのにさらに溜めて放つ〈滅火〉。どちらが強いかなんて明白だ。
ガイルの予想通り、〈滅火〉は段々と音撃を押し返し始め、熱気が辺りを多い始めた。
その時、
パンッ
と、手を打つような音が響いた。
「!?」
その瞬間音使いの〈ソニックカノン〉が消え、〈滅火〉が前方の全てを焼き払い、吹き飛ばした。
「・・・」
ガイルは先程まで音使いがいたはずの場所を睨むが、彼女本人どころかレッドバッグすら落ちていない。
(あの距離、あのタイミングで〈滅火〉を避けた?どうやって?)
ガイルは双剣を構えて警戒を強める。
次の瞬間、後ろから強風が吹いた。
「!!?」
嫌な予感がしたガイルが急いで振り返ると、いつの間にか背後に立っていた音使いがダガーを振り下ろし、ガイルの背中に突き刺した。
「くっ!」
ガイルはすぐに離れて双剣で切り返す。が、彼女は一瞬にしてガイルから離れた場所まで移動した。
「はぁ?」
おかしい。速すぎる。移動しただけで強風が吹くほどの速度だ。
「・・・奥義か」
それしか考えられない。あれほどの速度が出せるぶっ壊れ技なら、ガイルが知らないはずがない。
「奥義による移動速度の上昇・・・その程度の効果ならデメリットはかなり少ないか」
奥義にはデメリットが付いてくるものだ。普通ならば発動中動けない代わりに強力な遠距離攻撃が放てるというもので、他にも動ける代わりにHPが減ったり、自分を増やして動ける代わりに個々のステータスが落ちたりする奥義を見たことがある。
だが移動速度上昇というのはかなりシンプルで、上手く利用するにもプレイヤー本人の技術が必要だ。そのような単純で扱いが難しい奥義はデメリットがかなり少なくなる傾向にある。
(面倒・・・だが、音響魔法を溜めるには立ち止まらなきゃいけない。つまり奥義を使ってる間はあのダガーで近接戦を仕掛けに来るはずだ。・・・なら)
ガイルはニヤリと笑うと、双剣を握ったままの拳を打ち合わせた。
数分経っただけなのに森は炎に包まれ、空へ向かって絶えず黒煙を上げていた。
そして当の二人はと言うと、
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
ガイルが地面に仕掛けられた倒れる音使いの首元にトウワリを突き立てていた。
「俺の勝ちだぜ最強さんよ」
「クソッ・・・何なんだアレは・・・」
自己強化系の奥義は時間経過で勝手に排除されるが、どうもガイルは時間まで耐えたという訳ではないようだ。別の手段を用いて彼女を看破したようだが。
「ま、運が悪かったな。だがアレはアイツにだけ使う予定だったからな。誇っていいぜ」
「チッ、気に食わねぇ」
「ハッ!そうかよ」
ガイルは鼻で笑うと、トウワリを彼女に突き刺し、音使いは消えていった。
「・・・最強は死んだ。だがアイツは絶対こいつ以上だ」
ガイルは近々起こるであろう激戦のことを考え、ニヤリと笑うのだった。
「えぇ、チャージは完──」
「そうじゃねぇ」
ガイルが音使いの言葉を遮り、言う。
「死ぬ覚悟はできたんだよなぁ?」
ニヤケ声でガイルが問い、音使いは鼻で笑い飛ばす。
「お前の方こそ!」
そう叫び、二人は自身の火力最大の術を発動させる。
「〈ソニックカノン〉!」
「〈滅火〉!!」
音使いの手からは超ド級の音波が、ガイルの手からは〈炎爆〉とは比にならない程の爆炎が放たれる。
そして二つの術がぶつかり合い、周囲の物体を吹き飛ばしながら押し合う。だが、ガイルは焦っていなかった。溜めがいる代わりに速いのが特徴の音響魔法の〈ソニックカノン〉と、元より火力自慢な炎スキルなのにさらに溜めて放つ〈滅火〉。どちらが強いかなんて明白だ。
ガイルの予想通り、〈滅火〉は段々と音撃を押し返し始め、熱気が辺りを多い始めた。
その時、
パンッ
と、手を打つような音が響いた。
「!?」
その瞬間音使いの〈ソニックカノン〉が消え、〈滅火〉が前方の全てを焼き払い、吹き飛ばした。
「・・・」
ガイルは先程まで音使いがいたはずの場所を睨むが、彼女本人どころかレッドバッグすら落ちていない。
(あの距離、あのタイミングで〈滅火〉を避けた?どうやって?)
ガイルは双剣を構えて警戒を強める。
次の瞬間、後ろから強風が吹いた。
「!!?」
嫌な予感がしたガイルが急いで振り返ると、いつの間にか背後に立っていた音使いがダガーを振り下ろし、ガイルの背中に突き刺した。
「くっ!」
ガイルはすぐに離れて双剣で切り返す。が、彼女は一瞬にしてガイルから離れた場所まで移動した。
「はぁ?」
おかしい。速すぎる。移動しただけで強風が吹くほどの速度だ。
「・・・奥義か」
それしか考えられない。あれほどの速度が出せるぶっ壊れ技なら、ガイルが知らないはずがない。
「奥義による移動速度の上昇・・・その程度の効果ならデメリットはかなり少ないか」
奥義にはデメリットが付いてくるものだ。普通ならば発動中動けない代わりに強力な遠距離攻撃が放てるというもので、他にも動ける代わりにHPが減ったり、自分を増やして動ける代わりに個々のステータスが落ちたりする奥義を見たことがある。
だが移動速度上昇というのはかなりシンプルで、上手く利用するにもプレイヤー本人の技術が必要だ。そのような単純で扱いが難しい奥義はデメリットがかなり少なくなる傾向にある。
(面倒・・・だが、音響魔法を溜めるには立ち止まらなきゃいけない。つまり奥義を使ってる間はあのダガーで近接戦を仕掛けに来るはずだ。・・・なら)
ガイルはニヤリと笑うと、双剣を握ったままの拳を打ち合わせた。
数分経っただけなのに森は炎に包まれ、空へ向かって絶えず黒煙を上げていた。
そして当の二人はと言うと、
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
ガイルが地面に仕掛けられた倒れる音使いの首元にトウワリを突き立てていた。
「俺の勝ちだぜ最強さんよ」
「クソッ・・・何なんだアレは・・・」
自己強化系の奥義は時間経過で勝手に排除されるが、どうもガイルは時間まで耐えたという訳ではないようだ。別の手段を用いて彼女を看破したようだが。
「ま、運が悪かったな。だがアレはアイツにだけ使う予定だったからな。誇っていいぜ」
「チッ、気に食わねぇ」
「ハッ!そうかよ」
ガイルは鼻で笑うと、トウワリを彼女に突き刺し、音使いは消えていった。
「・・・最強は死んだ。だがアイツは絶対こいつ以上だ」
ガイルは近々起こるであろう激戦のことを考え、ニヤリと笑うのだった。
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