PK以外に興味なし

えるだ~

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デュオ

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 ガイルが巨大都市アスガルを歩いていると、何だか人だかりが出来ていた。気になったガイルも集まりに加わって皆が見る先を見てみると、
 そこにいたのは日本サーバー最大のクラン、『ニホンバレ』の筆頭メンバー達だった。
 そして先頭にいた男が声を出す。
「我々は!解散する!」
「・・・は?」
 ガイルは思わず声を漏らしたが、ガイルだけではない。周りの他のプレイヤー達も驚き、ザワザワと騒がしくなった。
「まぁ、解散理由とかが皆気になってるんだろうが、実にシンプル!ウチのリーダーであるコノハが諸事情によってこのゲームを引退することになったからだ!あいつがいないんじゃ、もうニホンバレではない。と言う訳で、解散することになったんだわ」
 それを聞いて特に特別な理由もないと分かったガイルはその場を立ち去ろうとしたのだが、
「そして!ウチのクランの最後として!非公式大会を開催する!」
 ガイルはピタッと止まり、振り返る。非公式大会ということは死んだら全ロスの殺し合いということなのだから。
「我々は参戦しないが、是非開催する我々に楽しい戦いを見せてほしいのだ!優勝者には豪華景品も用意する!」
 周囲から「おぉ~」と声が上がる。ナンバー1クランの言う豪華景品なんて、超レアアイテムなのは間違いない。
「試合形式は全員敵のバトル・ロワイアル形式!そして、二人一組のデュオ形式とする!」
 ガイルは、ぼっちだ。
「「・・・はぁ!?」」
 思わず声を出したが、横からも同じ声がした。見てみると、いつの間にかそこにいたチカと目があった。
「・・・なんでいる」
「・・・お前の方こそ」



 ニホンバレ主催の非公式大会は来週とのこと。ガイルはもう一度チームを組む相手を考えるが、もうこいつしかいない。
「お前も一人だろ?」
「・・・まぁね」
「・・・はぁ。ま、そうなるわな」
 ガイルはチカとデュオを組むこととなり、一週間一緒に鍛練を積んだ。


そして一週間後。


 ガイルとチカはマップを見ながら教えられた座標までやって来た。そこには、
「おぉ、まるで神殿だな」
 そこには見事な建物が立っていた。建物前には見物人であろうプレイヤー達が多くたむろしている。
「ニホンバレには建築勢もいるらしいしね、流石日本一のクラン」
 そんな会話をしながら神殿に入ろうと入り口の大扉へ歩いていると、
「おい」
「あ?」
 すると建物前に集まっていたプレイヤーの一人が二人を呼び止めた。
「なんの用だよ?」
「へへっ、この大会にはウチのクランのボス達が出場すんだよ。そんで邪魔そうな奴はさきに殺っとけって言われてんだ」
 ぞろぞろと十数人のプレイヤー達が二人を囲むように集まって来て武器を取り出す。
「おいおいニホンバレの奴等はなにしてんだよ」
「あいつらは昔からこういうのには不干渉だったろ」
「確かに」
 そうなことを話していると、男が武器を振り下ろして来た。
「ギャッ!?」
 が、ガイルは素手でその攻撃を弾き、バランスを崩した男の首を掴んで放り投げた。
 素手でのジャストガードは難易度が高い。それを平然とやったガイルを見て、周りのチンピラプレイヤー達は目を丸くして静かになった。
「ほら退いた退いた」
 二人はチンピラをシッシッと追っ払って神殿に入るため大扉を開いた。

「・・・うわ」
 中には100人近くはいるであろうプレイヤー達が立っていた。みな懸賞金20万は軽く越えている上級のプレイヤー達だ。
「あ、いた」
 チカが呟き、二人はそいつの元へ歩いて行く。
「お前は出場しないのか?」
「おや、PK数第二位の方じゃないですか」
 二人が話し掛けたのはニホンバレのリーダー、コノハだった。
「そちらは四位の方ですね」
「あぁ・・・お前も倒したかったんだけどねぇ」
「いえいえ、この大会は我々最後の娯楽として観戦するために開催したので、ニホンバレのメンバーは出ませんよ」
「それは残念」
 三人がそんな話をしていると、
「あ!お前は!」
「ん?おお、見覚えのある顔だな」
 こちらに歩いてきた女が一人。テイラだ。
「なんだ?お前も出場するのか?」
「いや、私も観戦勢だ。・・・最後に仲直りも出来たしな」
 テイラはニホンバレメンバーと喧嘩をしてクランを抜けていた。仲直りしたなら良いことだろう。
「んお?あんたは!」
 また別の誰かが話し掛けて来たため振り返ると、そこにも見覚えのある女が二人と一人。
「おぉ、トゲとミラだったか?あんたらも観戦か。んでそっちのちっこいのは?」
一人知らない少女がいる。ピンクの防具と大盾を身に付けた小柄な女。
「あ、リコっていいます。この御二人とはお友達で」
「あらそう・・・で、お前等か来たってことは・・・やっぱ来るのか?」
「・・・さぁね・・・でもアイツ、こんな大会に来ないほど優しくないでしょ。久しぶりに会いたいしね」
「そうか。ま、ニホンバレメンバーと戦えないのは残念だが、出場するからには優勝す──」
「グワッ!!」
 会話を遮るように、大扉の向こうから悲鳴が聞こえて来た。
「・・・」
 神殿内のプレイヤー達全員が静かになり、扉の方を睨む。
「ぬおっ!?」「ギャっ!?」「どわっ!?」「ぐがっ!」「ギャアッ!」「ヒイッ!?」「誰が─!」「止め─!」「うをっ!?」「ギィヤァア!?」
 金属音と肉を切る音、そして幾つもの悲鳴が聞こえたと思ったら一気に静かになった。そして、ゆっくりと大扉が開かれる。
 
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