運命の番

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幼い番

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レイドが黒髪の少女に跪いたのを見て、マデリーンは意外だった。
あの娘か。なるほど、確かに美しいな。
美しいがまだ少女というよりは少年のようだ。

イシスの一行は動きやすい簡素な格好でやってきた。
身につけているものは地味だが、皆品があり知的な顔つきをしていた。

ウルシュ国王は短い金髪に金の瞳の、スラリとした美青年だった。年は若く20代前半に見えるが、姫と王子の年齢から換算すると、もっと年上だろう。

金髪の研究者の女性達もそれぞれに痩身優美で、最初はあの中の誰かかと思っていた。
まさか一番後ろに控える、幼い異国風の少女が姫君で、その少女に惚れているとは思いもよらなかった。

レイドはマティアスに語ったように、番の美しさを家族や重鎮にも撒き散らした。
恋に酔っ払ったような語り口調で、彼女の美しさに自分がどれほど参っているのか、番のかぐわしい香りがないと息をするのが苦しいだの、あの金糸鳥のような声が聞きたいだの、他にもそれはそれは、吟遊詩人のようにつらつらと。

バカになった野獣皇太子が、どこかの異国の叙事詩を唄い始めた。

ただでさえ悪評高いのに、またしても変な噂が加わった。しかし、その野獣は自分の気持ちを唄うだけで、番の少女の細かい情報を言わなかったのだ。

マデリーンだけでなく他の者達も、唄に出てくる想い人は、イシスの特徴である金髪色白の長身女性だろうと思い込んでいた。

「まだ10才位ではないか?」
執務室に戻り、側に控える赤髪の夫に問う。

「12才だそうだよ。双子の兄君の王子より小柄だね。私はもっと派手な金髪美女を想像していたから、利発そうな子でほっとしたよ。辺境ではそういう女性達と噂があったからね」

暴れていた時は随分遊んでおり、粗野で荒削りで乱暴者の印象が、そのような女性達を惹きつけていたようだ。
歴代のバカ皇帝達のように変な女性に惚れ込んで、勢いで妻にされては国が乱れる元だと心配していた。

「うむ。まだ小さいが、あの髪と瞳はいいな。広い帝国内でも見たことがない」

「黒はリュウ国の王侯貴族にいると聞いたことがあるけど、私も初めて見たよ。それにしてもあの尊大なレイドが跪いて、あんな幼い少女の手にキスをするなんて、変われば変わるものだね」

皇配はまだ信じられない。
レイドは母が女帝になってからは言わなくなったが、辺境にいる時は女の癖に、など男尊女卑的な発言もしていた。乱暴こそしなかったが、女性を尊重するような素振りは微塵も見せなかった。

「森から帰って来てからまるで別人のようだ。言うことなすこと乙女のようで気味が悪いとマティアスもボヤいていた」

「そうだね。もう番のことしか頭にないね。さらにオスは周囲が見えなくなるから、なんというか哀れだよね」

番への想いが報われれば良いのだが。
相手が人族なので、どう受け止められるかは未知数だ。

獣人の性質上、番に出会ってしまうと他の女性を愛せなくなる。両想いになれず番に去られた場合、狂うこともあると聞く。
悲しいことに、息子の荒れ狂う姿は容易に想像できる。

もしレイドの愛が断られ、皇帝として暗君になりそうな危険性があったら、妹のエスメラルダを後継者としようと、マデリーンは決めていた。

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