運命の番

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母の喜び、父の絶望

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「嫌な予感がすると、あれほど言ったんだ」

父親の感は間違ってなかった。
竜人の本能は正しかった。

グラーツでの3週間余りの滞在を終え、アーシェンとアレンが帰国した。
土産話を楽しみにしていたのに、ウルシュ国王はノアとセーカに、アーシェンが皇太子から求婚された旨を、いの一番に伝えた。

やけに嬉しそうに。
2人の王は大いに盛り上がっている。

「狼獣人の長だけあって、立派な体格の堂々とした意志の強そうな男性だったよ。何よりアーシェンにベタ惚れなのがいい。別れ際も寂しそうで、国境まで送らせてほしいと言い出して、周囲に羽交い締めにされていたよ」

父セーカはその話を聞き、馬鹿っぽい狼男が暴れる場景を思い浮かべる。

「伴侶が無理なら下僕として仕えさせてほしい。どんなことでもすると言われた時は肝が据わっていて頼もしく感じたね。」

「まあっまあっ、すごい!まさに王冠をかけた恋ね。アーシェンたら流石は私の自慢の娘、女冥利に尽きるじゃない。やっぱりあの狼の番だったのね」

ん、あの狼?
やっぱり?

「結界が揺るいだ日があったので、念のため見に行ったの。そうしたら一匹の狼と、アーシェンとアレンが仲良くしていたから、良いことが起きそうな予感がして2人に任せて関知しないことにしたの。大成功ね」

さすが私!とノアは胸を張っている。
セーカは、母親なのになんて無責任なんだ、と喉まで出かかったが飲み込んだ。

「もしかして、昼食にお肉が沢山出てきたのもお母様のおかげですか?」

「うふふっ、そうよ。セーカがいないのに、誰も食べないあんな肉の塊を毎日出すわけないでしょう?」

「ありがとうございます。おかげでレイド様に食べさせてあげることができました」

アーシェンは感動している。
ノアは得意そうだ。

「た、食べさせて・・・」
竜攫いの討伐で不在にしている間にそんなことが。

「僕のアーシェンが結婚、可愛いアーシェンが結婚、なぜ狼なんかと、狼なんかと・・・」

2人の国王とアーシェンが明るく話している横で、父セーカが真っ青な顔で放心している。

父がアーシェンに何か問いかけようとした時
当の本人が
「結婚したら、あの方の子供が沢山ほしいです」

と赤裸々に宣言したため、父は目を見開いたまま固まってしまった。指でつついたら倒れそうだ。

アレンはそんな見るに耐えない状態の父に、心の中で

「父上、なんのお役にも立てず申し訳ございません」

と謝罪した。

帰国日の久々の家族の夕餉は、父親を除き、祝宴の雰囲気で幕を閉じた。
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