運命の番

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必死の説得

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今日は学校が休みのアーシェンと海辺に行き、一緒に泳いだ後、農園見学をする予定だ。

往復の移動は王宮広場前から出ている、御者のいない高速に動く白い箱に乗った。

太陽光の熱量を箱に貯めて動かしていると夕食時にアレンが説明してくれたが、レイドにはその理論が全く理解できなかった。
同じ原理で触ると光る石と熱くなる石があり、ロウソクや竈の火の代用として広く一般家庭で使用されているそうだ。火が不要なので木を切る必要もなく、煙も上がらないので環境によい。

白い建物で統一された風光明媚な街並みを眺めていると、だんだん緑が多くなり田舎の風景になってくる。
2時間もかからない内に、海辺の街に到着した。

久しぶりに来たのだと、はしゃいで海辺を小走りに駆ける番に見惚れる。
薄手の布一枚を身に付けただけの、柳のように細くしなやかな姿は女神そのものだ。
化粧もなく着飾っていない分、少女の持つ美しさが際立っていて目が離せない。

自分でも重症だとはわかっているが。
一生このままでいい治さないでくれと、この番に狂った状態を古代の狼神に感謝していた。


今日も紳士的に紳士的にと思いつつも、一緒に泳ぎ始めるとやはりそうはいかない。体が近づけば触りたくなる。
抱きしめてチュッとしたら、番の身体が強張った。
以前までなら照れながらも笑顔でキスを返してくれたのに。遠慮気味に笑うだけで泳いで逃げてしまった。
海に囲まれた湖や泉の多い国なので、アーシェンは泳ぎが得意だ。魚のようにスイスイと遠くに移動していく。

「警戒されている・・・」

また先日のようなことをされないか、怖がられている。自業自得だが寂しい。

海水浴の後はイシスのどこにでもある綺麗な泉で身を清め、海を見ながら昼食を取る。
周囲に人が少なかったからか、食べさせようと口に運んだら躊躇しながらも食べてくれた。
自分の手元で可愛らしい小さな口が動いているの見て「いつかはその口で俺の物を咥えてほしい」などと、不埒な想像をしているしょうもない狼だ。

お返しにと、番からも食べさせてもらう。
お茶も飲ませてほしいとお願いしたら、杯が口元に来た。

「口移しがいい」
「え・・・?」
動揺して、耳が赤くなっている。

「・・・」
少し考えた後、口に含み立ち上がって上からキスをするように飲ませてくれた。勝手がわからないのか口の間から少しこぼしている。

こぼれたのを舐めて、こちらからも口移しで飲ませた。しばらく餌付けし合って、ついでにキスしてペロペロして狼は幸せな時を過ごした。

午後は手を繋いで農園見学をした。
海で感じた警戒感もなく、いつも通りの番の朗らかな様子に安心してオリーブやワインなどを大量に買い込み帰路についた。

夕餉の食卓上に本日購入した物を一緒に並べている時、アーシェンが言いにくそうに話し始めた。

「あの、せっかく貸していただいた本なのですが」

うむ。しっかり読んでくれたのか。
あれで先日のは正当な愛の行為だとわかってく・・・

「子作りのことを何も存ぜず、申し訳ございませんでした。あれは、あの絵のようなことは、どうしても、できません。でもレイド様のことは大好きです。だから赤ちゃんは、神殿で作らせてください」

赤ちゃんを神殿で?
よくわからないが、嫌な予感がする。

よくよく意味を聞いたら、身体を交えずに俺の子種を使って神殿で単体繁殖したいと言うことらしい。

泉での行為がとても怖かったこと。
子作りの図鑑に嫌悪感があったこと。
子作りの交わり自体が恐怖でできないこと。
と言われ、物凄いショックを受け今までの愚行を猛反省した。
まだ初潮も来てない13才に無理強いをした結果だ。女王の言う通りもっと慎重に事を運ばねばいけなかった。

結婚するのに番と交われないなんて、そんな生き地獄な家庭がどこにある。
アーシェンの両肩を掴み、額に汗を浮かべながら謝罪を繰り返した。「でも神殿なら・・・」と小さな声で反論しかけたが、今後アーシェンの嫌がることは一切しないと跪いて許しを請い、神殿での繁殖は何とか撤回してもらった。

夕食前に大男が両膝をつき、小柄な少女の腰にしがみつきながら何かを必死に訴える異様な光景を見て、国王達とアレン王子は「これは結婚したら尻に敷かれるな」と思った。
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