運命の番

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服装

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アーシェンはイングリッドが住み始めた医務室に来ていた。城の端っこ、広い薬草園がある中庭に面した離れだった。
近くの離れには、薬草が好きなレイドの祖母の魔女ローゼが住んでいるが、まだお互いの存在を知らない。

「一週間の視察旅は私には長いので、アーシェンとシャルカで行ってらっしゃい。まだ結界が張れる力があるし大丈夫でしょう」

イングリッドはアーシェンに城内地図を渡した。
結界が張ってある場所に印が付いている。
新しく出来た神殿までは一人で行けるようになっていた。

「神殿はイシスの女性しか入れません。アーシェンが泉で沐浴している時は、誰も入って来ませんので安心なさい」
「はい。セトおじいさまは、イシスに帰られるんでしょうか?」

建設が終わったので、建築士達はもう帰国する。
セトもその予定らしいが、アーシェンが行った時はどこにもいなかった。
セトはいつも不在だとレイドもボヤいていた。

「セトは街で出会った女性と恋に落ちて、帰るのを渋っています」
アーシェンは納得してしまった。
セトはいつも恋がしたい、家族が欲しいと言っていたから。

「おじいさまの恋が成就するといいです」
「一度は帰国してもらわないと、回収した大量の腕輪と、建築図面を神殿に保管するためにも。その後は好きに生きたらいいわ」

特に良い男達の子種が入った腕輪は、イシスの宝である。



視察に行く日。
アーシェンに頭と顔を覆う白いベールが被された。
目だけが出ている状態である。

「これはグラーツの民族衣装ですか?」
問われた侍女のユニスも困っている。

「いえ、これは私も初めて見ました。何でもアーシェン様のお姿を他の男性に見せたくないとのことで、急ぎ特注で作った物らしいです」

躊躇するイシスの服飾士達に、レイドが依頼した。

イシスの服飾士達のおかげで、帝国の使用人達の制服が一新され、軽く温かく、簡単に脱ぎ着できるようになった。

マデリーンは、歴代皇族が身に付けていた古いドレスを「カビ臭い上に場所を取って邪魔だ」と売り払った。

そして軽い素材の楽そうなドレスばかり、大量発注して着ている。男装のエスメラルダも時々だか、ヒラヒラした長スカートを履くようになり、父のエナンに絶賛されていた。

服飾士の一名は好待遇でグラーツに雇用されることとなり、他の者達は、そろそろ帰国かと思っていたところ、皇太子から理解し難い注文が入ったのだ。

番の容姿を隠す服装
番の匂いを遮断する服装
軽くて暖かい素材

これは違う国に依頼をした方が良いのでは、と誰もが思った。

グラーツの大量の衣装だって冬仕様だった。



イシス国でめったにお目にかからない、外国からの求人があった。
お隣グラーツ帝国、城内施設に住み込み可能、送迎付き、秋冬服の製作。
春夏物しか作ったことがない温暖な国の職人に、冬用の服を作れという珍妙な求人広告だったが、皆、破格の給与と外国短期滞在に釣られてやって来た。

外国も観光できたし、それなりに勉強になったと、もう帰国する雰囲気の中、変なのが来た。



特別賃金が出ると言われたら、もうやるしかない。服飾士達は王宮図書館で資料をかき集め、砂漠の国の衣装を真似て作った総傑作がアーシェンに渡されたのだ。

「匂いを遮断ですか?」
「獣人が多い国なので、アーシェン様の匂いを他の男性に嗅がれたくないのかと・・・」

アーシェンはよく理解できないようだ。
ユニスも人族なので、狼獣人独特の考え方が理解できなかった。
では視察に連れ出さなければいいのにと思った。

そんな理解できない皇太子に、宿と馬車の中ではベールを取っていいと言われ、ほっとしているようだった。



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