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王女は本当に手当てだけをしてくれると、それ以上は何もせず、聖堂の中も、アステリアを嫌ったり拒んだりといった空気は感じられませんでした。
たった1つの言葉をアステリアに残し、王女はアステリアを聖堂の外まで見送りました。
たった1つ。
“執事に気を許してはいけませんよ”
王女がなぜそんな言葉を残したのか…
アステリアには王女の考えている事が分かりませんでした。
聖堂から出る時にトリスタンが少し険しい顔をしていましたが、その日はそれ以上何事も起こることなく、平穏に過ぎていったのです。
ゲーム2日目―………
その日もまたアステリアは銀の園庭でナリスの指導を受けていました。
ゲーム中とはいえ、いつも通りに過ごす必要があるからです。昨日と違うのはこの場にアデルがいないという事。
昨日より静かな事が嬉しくもあり、不安でもありました。
先にアデルの契約者を見つけなければいけない。
ですが現状、憎まれているという事以外は何も分からず足踏みしているのは確かです。
アステリアを憎んでいるとなると、王子が関係しているのでしょう。そうでなければ人間界でアステリアが恨まれる覚えがありません。
『………ま、…が………ですね?』
『んッ?』
ナリスの指導中というのに、アステリアはナリスの声が遠くなる程、ついつい考えこんでしまっていました。
『集中出来ていないようですね…。足が痛みますか?』
いつも怒鳴ってばかりのナリスですが心配してくれる姿は年不相応なのでしょうが、髪を撫でてしまうくらい愛らしく感じます。
『いいえ、足はこれっぽっちも痛くありません。ちょっと考え事を。』
『私の授業で考え事ととは、良い根性ですね。』
『すみません…。』
『で?そんなにも何をお考えだったのです?』
アデルの契約者が誰なのか。
そんな事を考えていたなんて突拍子もなさすぎで、ナリスに言えるはずがありません。
質問してもおかしくないものをグルグル頭の中で探しました。
『王子…じゃなくて、王太子殿下はその…恋人とかいたんでしょうか ?』
『……………は?』
とっさに出したこの質問は間違いだったとすぐに気づいたアステリアは頭をかかえました。
王子が幼い頃から一緒にいたのはアステリア自身で、どれだけ執着されていたかなど疑いようのないくらい身体に刻みこまれているというのに。
『結婚前に不安になられたんですね。大丈夫です、王太子殿下に浮わついた話しなど聞いた事がありません。』
『そうですよね。』
アステリアも特に疑った訳ではありませんが、自信をもってこたえるナリスに対し、ナリスのメイドは少しだけ視線が下に泳いでいたのが気になりました。
『ですが私が言うのもなんですが、王太子殿下はおモテになったのでは?いいよる女性も多かったのでは?』
『知ってどうされるのです?いいよった女性を全て厳罰になさるつもりですか?星の数ほどおりますわよ。』
嫉妬で狂った王太子妃。
そんな異名をもつわけにはいきません。
アステリアも流石に苦笑いになります。
『王太子殿下はアステリア様だけを愛しておられます。ナリス・ドルチェットの名において、私がお約束しますわ。』
ナリスの言葉は気恥ずかしさを感じながらも、嬉しくもあり、自信にも繋がりました。
嘘は本当、本当は嘘。
純粋に言葉をそのまま信じて良いのか、アステリアは笑顔の仮面をつけたまま考えていたのです。
たった1つの言葉をアステリアに残し、王女はアステリアを聖堂の外まで見送りました。
たった1つ。
“執事に気を許してはいけませんよ”
王女がなぜそんな言葉を残したのか…
アステリアには王女の考えている事が分かりませんでした。
聖堂から出る時にトリスタンが少し険しい顔をしていましたが、その日はそれ以上何事も起こることなく、平穏に過ぎていったのです。
ゲーム2日目―………
その日もまたアステリアは銀の園庭でナリスの指導を受けていました。
ゲーム中とはいえ、いつも通りに過ごす必要があるからです。昨日と違うのはこの場にアデルがいないという事。
昨日より静かな事が嬉しくもあり、不安でもありました。
先にアデルの契約者を見つけなければいけない。
ですが現状、憎まれているという事以外は何も分からず足踏みしているのは確かです。
アステリアを憎んでいるとなると、王子が関係しているのでしょう。そうでなければ人間界でアステリアが恨まれる覚えがありません。
『………ま、…が………ですね?』
『んッ?』
ナリスの指導中というのに、アステリアはナリスの声が遠くなる程、ついつい考えこんでしまっていました。
『集中出来ていないようですね…。足が痛みますか?』
いつも怒鳴ってばかりのナリスですが心配してくれる姿は年不相応なのでしょうが、髪を撫でてしまうくらい愛らしく感じます。
『いいえ、足はこれっぽっちも痛くありません。ちょっと考え事を。』
『私の授業で考え事ととは、良い根性ですね。』
『すみません…。』
『で?そんなにも何をお考えだったのです?』
アデルの契約者が誰なのか。
そんな事を考えていたなんて突拍子もなさすぎで、ナリスに言えるはずがありません。
質問してもおかしくないものをグルグル頭の中で探しました。
『王子…じゃなくて、王太子殿下はその…恋人とかいたんでしょうか ?』
『……………は?』
とっさに出したこの質問は間違いだったとすぐに気づいたアステリアは頭をかかえました。
王子が幼い頃から一緒にいたのはアステリア自身で、どれだけ執着されていたかなど疑いようのないくらい身体に刻みこまれているというのに。
『結婚前に不安になられたんですね。大丈夫です、王太子殿下に浮わついた話しなど聞いた事がありません。』
『そうですよね。』
アステリアも特に疑った訳ではありませんが、自信をもってこたえるナリスに対し、ナリスのメイドは少しだけ視線が下に泳いでいたのが気になりました。
『ですが私が言うのもなんですが、王太子殿下はおモテになったのでは?いいよる女性も多かったのでは?』
『知ってどうされるのです?いいよった女性を全て厳罰になさるつもりですか?星の数ほどおりますわよ。』
嫉妬で狂った王太子妃。
そんな異名をもつわけにはいきません。
アステリアも流石に苦笑いになります。
『王太子殿下はアステリア様だけを愛しておられます。ナリス・ドルチェットの名において、私がお約束しますわ。』
ナリスの言葉は気恥ずかしさを感じながらも、嬉しくもあり、自信にも繋がりました。
嘘は本当、本当は嘘。
純粋に言葉をそのまま信じて良いのか、アステリアは笑顔の仮面をつけたまま考えていたのです。
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