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第十三話 ゴブリン殲滅
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「誰だ! お前ら!」
「人間キター!」
坑道の柱の陰から2匹のゴブリンが姿を現した。
「僕が相手だ!」と、ゴブリンのヘイトを自分に向ける。その隙をついたファーストが横を走り去った。
通路奥のゴブリンは、僕らの侵入に気づき、ベルを鳴らしながら坑道の奥へと走り出す。やはり奥のゴブリンは仲間を呼びに行く役目のようだ。
そのゴブリンを、追うかのように、ファーストは走る。そして、あっという間にゴブリンに追いつき、転ばせて武器を奪い、急所を一撃。なんとも鮮やかな体術だ。
「どこ見てんだ! お前!」
「ぶっ殺すウゥ!」
目の前にいた二匹のゴブリンは、石斧を振りかざして襲いかかってきた。
持っていた斧で軽く薙ぎ払うと、二匹のゴブリンが持っていた石斧が吹き飛んだ。
村人の時とは違い、力にかなり余裕がある。これなら楽勝だ。
「こ、こいつぅ!」
「なめんな!」
ゴブリンたちは、腰からナイフを取り出し、ジリジリと距離を詰めてくる。その後、片方のゴブリンが僕を襲う。
もちろん、それにタイミングを合わせて斧を振る──だけでよかった筈だが──この時僕は、父がゴブリンに刺された時のことを思い出した。
「(ゴブリンが仲間を平気で犠牲にすることは、前回の戦闘で学習済みだ。もう同じ手は食わない)」
僕は攻撃を止め、目の前のゴブリンの攻撃を避けてやり過ごした。狙うは、二匹目の攻撃だ。案の定、後ろにいたゴブリンが、絶妙なタイミングでナイフを抱えて突進してくる。
「死ねやぁ! ゴルァ!」
もちろん、後ろから襲ってくるゴブリンは、自分が狙われていることに気づいていない。狙いを定め、斧を振り下ろす。
「ンギャピー!」
ゴブリンの頭を割った。読みは完璧だ。すかさず振り向き、もう一匹のゴブリンの頭も叩き潰す。
「ンギャピー!」
余裕の勝利である。これで入り口のゴブリンは片付いた。
あとは、ファーストを待つだけ──の筈だったのだが──。
一向に帰ってくる気配がない。何か、嫌な予感がする。
スマホの着信音が鳴る。
「ん……なんだ? 一体……」
僕は、通話を開始する。
「ライト様……申し訳ありません。目くらましの罠にかかってしまいました。挙句の果てに、大量のゴブリンに捕まってしまい、脱出できません」
「なんだって!? ゴブリンは、罠も使うのか!」
──大誤算だ。
「お願いがあります。ここを離れてスマホを爆発させてください」
「な……それじゃあ、ファーストが……!」
「主に尽すのが私の努め……どうか、私にその努めを果たさせてください……」
「何か、方法はないのか?」
「マスター! 私の初めてがゴブリンに奪われ、傷物になってもよろしいのですか!」
──通信が途切れた。
一応、今の戦闘で得た収入をスマホで確認する。貯まっていたのは銅貨が15枚だ。ただし、銅貨15枚では、レベル1のスキル(銅貨10枚)を1度しか使えない。
ついでにファーストのスキル確認する。スピードタイプのファーストが使えるレベル1のスキルは、倍速と慣性制御(小)。おそらく、捕まっていては意味のないスキルだ。
選択肢は、限られた。ファーストの覚悟を無駄にはできない。
「おい、スマホ! 洞窟を出たらすぐに複製を爆破するんだ!」
『了解しました。爆破起動準備にはいります』
こんなことになるとは思わなかった。勇者といえど、仲間一人守れない勇者なんて、勇者の価値はない。
無理をするべきじゃなかった。コツコツとお金をためてから挑めばよかった。後悔の念しか頭に浮かばない。
『クローン端末をオーバークロック。冷却システムダウン。セーフティー解除、及び、データ保護自爆機能起動』
スマホが爆発する。その瞬間、坑道の入り口が火を噴いた。
山肌にヒビが入り、地面が盛り上がる。そして、いたるところから湯気が立ち上る。
この高熱の中じゃもう、ファーストは助からない。さらに、坑道も潰れてしまっている。こんな状況じゃ蘇生もできない。
──すべて僕のせいだ。
スマホに声をかける。
「ファーストは……死んだか……」
『はい、戦闘不能です』
「そうか……」
『仲間ストレージに収納されました。復活まで24時間です』
「…………え? 今、なんて?」
『仲間ストレージに収納されました。復活まで24時間です』
「24時間…………」
僕は理解した。作成した仲間が死んだ場合、仲間ストレージに戻り、24時間で復活する仕様だということを──。
それを聞いて僕は安心した。だが、スマホ勇者のくせにその仕様を理解していないなんて、恥ずかしい限りだ。
でも、ファーストが大事に至らないで良かった。心苦しい結果だが、今はこの仕様に感謝の言葉もない。
とにかく、任務は達成した。スマホ勇者としての本当の力を発揮できるのはこれからだ。
僕は、期待に胸を高鳴らせなが坑道を後にした。
──ゴブリンの巣穴潰し任務で得た軍資金──
ゴブリン殲滅 銅貨1015枚
報奨金 金貨4枚
特別報奨金(旧坑道埋め立て)金貨10枚
◆所持金貨 金貨14 銀貨10 銅貨15枚
「人間キター!」
坑道の柱の陰から2匹のゴブリンが姿を現した。
「僕が相手だ!」と、ゴブリンのヘイトを自分に向ける。その隙をついたファーストが横を走り去った。
通路奥のゴブリンは、僕らの侵入に気づき、ベルを鳴らしながら坑道の奥へと走り出す。やはり奥のゴブリンは仲間を呼びに行く役目のようだ。
そのゴブリンを、追うかのように、ファーストは走る。そして、あっという間にゴブリンに追いつき、転ばせて武器を奪い、急所を一撃。なんとも鮮やかな体術だ。
「どこ見てんだ! お前!」
「ぶっ殺すウゥ!」
目の前にいた二匹のゴブリンは、石斧を振りかざして襲いかかってきた。
持っていた斧で軽く薙ぎ払うと、二匹のゴブリンが持っていた石斧が吹き飛んだ。
村人の時とは違い、力にかなり余裕がある。これなら楽勝だ。
「こ、こいつぅ!」
「なめんな!」
ゴブリンたちは、腰からナイフを取り出し、ジリジリと距離を詰めてくる。その後、片方のゴブリンが僕を襲う。
もちろん、それにタイミングを合わせて斧を振る──だけでよかった筈だが──この時僕は、父がゴブリンに刺された時のことを思い出した。
「(ゴブリンが仲間を平気で犠牲にすることは、前回の戦闘で学習済みだ。もう同じ手は食わない)」
僕は攻撃を止め、目の前のゴブリンの攻撃を避けてやり過ごした。狙うは、二匹目の攻撃だ。案の定、後ろにいたゴブリンが、絶妙なタイミングでナイフを抱えて突進してくる。
「死ねやぁ! ゴルァ!」
もちろん、後ろから襲ってくるゴブリンは、自分が狙われていることに気づいていない。狙いを定め、斧を振り下ろす。
「ンギャピー!」
ゴブリンの頭を割った。読みは完璧だ。すかさず振り向き、もう一匹のゴブリンの頭も叩き潰す。
「ンギャピー!」
余裕の勝利である。これで入り口のゴブリンは片付いた。
あとは、ファーストを待つだけ──の筈だったのだが──。
一向に帰ってくる気配がない。何か、嫌な予感がする。
スマホの着信音が鳴る。
「ん……なんだ? 一体……」
僕は、通話を開始する。
「ライト様……申し訳ありません。目くらましの罠にかかってしまいました。挙句の果てに、大量のゴブリンに捕まってしまい、脱出できません」
「なんだって!? ゴブリンは、罠も使うのか!」
──大誤算だ。
「お願いがあります。ここを離れてスマホを爆発させてください」
「な……それじゃあ、ファーストが……!」
「主に尽すのが私の努め……どうか、私にその努めを果たさせてください……」
「何か、方法はないのか?」
「マスター! 私の初めてがゴブリンに奪われ、傷物になってもよろしいのですか!」
──通信が途切れた。
一応、今の戦闘で得た収入をスマホで確認する。貯まっていたのは銅貨が15枚だ。ただし、銅貨15枚では、レベル1のスキル(銅貨10枚)を1度しか使えない。
ついでにファーストのスキル確認する。スピードタイプのファーストが使えるレベル1のスキルは、倍速と慣性制御(小)。おそらく、捕まっていては意味のないスキルだ。
選択肢は、限られた。ファーストの覚悟を無駄にはできない。
「おい、スマホ! 洞窟を出たらすぐに複製を爆破するんだ!」
『了解しました。爆破起動準備にはいります』
こんなことになるとは思わなかった。勇者といえど、仲間一人守れない勇者なんて、勇者の価値はない。
無理をするべきじゃなかった。コツコツとお金をためてから挑めばよかった。後悔の念しか頭に浮かばない。
『クローン端末をオーバークロック。冷却システムダウン。セーフティー解除、及び、データ保護自爆機能起動』
スマホが爆発する。その瞬間、坑道の入り口が火を噴いた。
山肌にヒビが入り、地面が盛り上がる。そして、いたるところから湯気が立ち上る。
この高熱の中じゃもう、ファーストは助からない。さらに、坑道も潰れてしまっている。こんな状況じゃ蘇生もできない。
──すべて僕のせいだ。
スマホに声をかける。
「ファーストは……死んだか……」
『はい、戦闘不能です』
「そうか……」
『仲間ストレージに収納されました。復活まで24時間です』
「…………え? 今、なんて?」
『仲間ストレージに収納されました。復活まで24時間です』
「24時間…………」
僕は理解した。作成した仲間が死んだ場合、仲間ストレージに戻り、24時間で復活する仕様だということを──。
それを聞いて僕は安心した。だが、スマホ勇者のくせにその仕様を理解していないなんて、恥ずかしい限りだ。
でも、ファーストが大事に至らないで良かった。心苦しい結果だが、今はこの仕様に感謝の言葉もない。
とにかく、任務は達成した。スマホ勇者としての本当の力を発揮できるのはこれからだ。
僕は、期待に胸を高鳴らせなが坑道を後にした。
──ゴブリンの巣穴潰し任務で得た軍資金──
ゴブリン殲滅 銅貨1015枚
報奨金 金貨4枚
特別報奨金(旧坑道埋め立て)金貨10枚
◆所持金貨 金貨14 銀貨10 銅貨15枚
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