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第二十三話 宝物庫
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案内されたのは湿地の外。その林のある小さな丘。そこには神殿のような祠があった。
眼帯のリザードマンは、祠の扉をゆっくりと開ける。
「ここが、我らの宝物庫だ。本当に解除してくれるんだな」
「ああ、約束は守る……」
僕らはリザードマンの開けた祠に入る。中は明るく神殿のように美しい。明るいのは天井が発光体の水晶でできているせいだろう。
この発光体を売れば結構な金になり、冒険者を襲う必要はないと思うのだが──きっとそこまで頭が回らないのだろう。
『警告。スキル、及び魔法使用不可エリアです』
「何?!」
突然、スマホが警告音を鳴らした。だが、時、すでに遅し──祠の扉が閉じる。急いで戻り、扉を開けようとするも、びくともしない。
「閉じ込められた!?」
「どうやらそのようですね」
と、ファーストが剣で叩くも、スキル無しでは、到底破壊することはできない。ただ、剣の金属音だけが周囲に響くだけだった。
「おい、ここから出せリザードマン!」
大声で叫んでも、誰も答えない。
「おい、スマホ。この扉、どうやって開けるんだ?」
『扉を解析します──完了。強制力により、内側から開けることができません。外側からのみ開けることが可能です』
「なんだって!?」
──強制力──
嫌な言葉だ。いわば、絶対に逆らえないこの世界の法則みたいなものだろう。おそらく、この時点で僕たちは詰んでいる。だが、こういう時こそ、冷静に対処しなければならない。
「リザードマンが飲み込んだスマホは、爆破できるか?」
『可能です』
「可能なのか! じゃあ……」
爆破させようと思った。だが、ちょっと思いとどまる。ここで爆破させることは簡単だ。だが、それをやると、この祠を開けるやつがいなくなる。これはまずい。
「ここを出る方法は、他には?」
『方法はありますが、あまりお勧めできません』
「教えてくれ」
『戦闘不能になることです。すなわち、死です』
「死!?」
そういえば、確かにヘルプには死んでも軍資金で復活できるという項目があった。たしか、初回ならば、金貨10枚で100%だ。
『現在、復活場所を3か所指定できます。場所はこの場所とあなたが住んでいた家と宿泊した宿です』
「復活ポイントか……」
できればこの選択は避けたい。これをやると、ここまで来た苦労が水の泡になる。どちらにしろ、最終手段だ。──もし、やるならば、仲間をストレージに戻して僕だけ死ねばいいとして──。
「仲間をストレージに戻す……!?」
この時、妙案が浮かんだ。あとはスマホ次第なのだが──。
「スマホ、仲間を複製スマホから召喚することは可能か?」
『可能です』
「…………」
こんな簡単に解決方法が見つかるとは──スマホを飲み込ませておいたのが、別の意味で役に立ったようだ。
解決方法も見つかったので、ひとまず当初の予定の軍資金を回収を始めることにする。
祠の奥へ進むと、通路の端に冒険者の屍が散乱しているのを発見した。体は干からびてミイラ化している。僕らと同じように閉じ込められて餓死したのだろうか──。
さらに奥には、彼らのものと思われる装備が置かれていた。彼らが死んだ後、剥ぎ取った装備なことは、ほぼ間違いない。
友好的なリザードマンなら、こんなことはしないだろう。本当に反吐が出る連中だ。
置かれていた装備は、売れば金になりそうなものばかりだったが、それに手を付けるのは正直気が引ける。なので、軍資金となる金貨だけを回収することにした。散らばっている硬貨をかき集めると、全部で金貨20枚程集まった。これは、彼らの無念を晴らすための依頼料ということにでもしておこう。
「これを足して手持ちの金貨は全部で50枚……これなら、少しスキルを無駄使いしても大丈夫だな」
「マスター、いかが致しますか?」
と、ファーストが訪ねる。
「まず、3人一緒に複製スマホから出たら、サードは真っ先に眼帯のリザードマンを粛清。セカンドは周囲の雑魚リザードマンを魔法で強襲。その隙をついてファーストが祠の扉を開ける……と、ざっとこんなところかな」
「素晴らしい作戦です、マスター!」
それを聞いたファーストは、羨望の眼差しを向けた。
「ぼっこぼこにしていいんだね!」
と、サードは指をポキポキと鳴らす。暴れたくてうずうずしている模様。
そんな中、セカンドが冷静な顔つきで、質問してきた。
「では、そのようにいたします。スキルの予算はいかほどで?」
「できれば、金貨3枚程度で足りるといいのだけど……レベル4以下で頼む」
「かしこまりました。妥当なところです」
どうやら、予算を心配してくれたようだ。いくら増えたとはいえ、軍資金は有限だ。効率よく使わなければならない。
準備が整ったところで早速行動に移った。一度、仲間ストレージへと、3人を回収する。その後、遠隔操作を通じて外にある複製スマホから仲間を召喚、作戦が開始される。
祠の外からは激しい戦闘の音が聞こえてきた。だが、それが静まるのに、数分とかからなかった。しばらくして、祠の扉が開く。
「マスター、おまたせしました」
と、ファーストが扉から顔をのぞかせた。
「じゃあ、逃げるか」
どうやら、作戦は成功したようだ。眼帯のリザードマンは仰向けに倒れ、精鋭と思われるリザードマンも、魔法で焼かれていた。残りのリザードマンは、ボスを失ったせいでオタオタしている。そのすきに僕らはこの場から離脱した。もうこんな生臭い場所には一秒たりともいたくはない。
「よし、十分離れたな。あの複製スマホを爆破してくれ」
『了解しました。クローン端末をオーバークロック。冷却システムダウン。セーフティー解除、及び、データ保護自爆機能起動』
「伏せろ!」
と、全員でその場で伏せたその刹那、激しい光と風が、湿地を覆う。
「敵は討った。迷わず成仏してくれよ……」
僕らは、その光を死んでいった冒険者への送り火として先を急いだ。
眼帯のリザードマンは、祠の扉をゆっくりと開ける。
「ここが、我らの宝物庫だ。本当に解除してくれるんだな」
「ああ、約束は守る……」
僕らはリザードマンの開けた祠に入る。中は明るく神殿のように美しい。明るいのは天井が発光体の水晶でできているせいだろう。
この発光体を売れば結構な金になり、冒険者を襲う必要はないと思うのだが──きっとそこまで頭が回らないのだろう。
『警告。スキル、及び魔法使用不可エリアです』
「何?!」
突然、スマホが警告音を鳴らした。だが、時、すでに遅し──祠の扉が閉じる。急いで戻り、扉を開けようとするも、びくともしない。
「閉じ込められた!?」
「どうやらそのようですね」
と、ファーストが剣で叩くも、スキル無しでは、到底破壊することはできない。ただ、剣の金属音だけが周囲に響くだけだった。
「おい、ここから出せリザードマン!」
大声で叫んでも、誰も答えない。
「おい、スマホ。この扉、どうやって開けるんだ?」
『扉を解析します──完了。強制力により、内側から開けることができません。外側からのみ開けることが可能です』
「なんだって!?」
──強制力──
嫌な言葉だ。いわば、絶対に逆らえないこの世界の法則みたいなものだろう。おそらく、この時点で僕たちは詰んでいる。だが、こういう時こそ、冷静に対処しなければならない。
「リザードマンが飲み込んだスマホは、爆破できるか?」
『可能です』
「可能なのか! じゃあ……」
爆破させようと思った。だが、ちょっと思いとどまる。ここで爆破させることは簡単だ。だが、それをやると、この祠を開けるやつがいなくなる。これはまずい。
「ここを出る方法は、他には?」
『方法はありますが、あまりお勧めできません』
「教えてくれ」
『戦闘不能になることです。すなわち、死です』
「死!?」
そういえば、確かにヘルプには死んでも軍資金で復活できるという項目があった。たしか、初回ならば、金貨10枚で100%だ。
『現在、復活場所を3か所指定できます。場所はこの場所とあなたが住んでいた家と宿泊した宿です』
「復活ポイントか……」
できればこの選択は避けたい。これをやると、ここまで来た苦労が水の泡になる。どちらにしろ、最終手段だ。──もし、やるならば、仲間をストレージに戻して僕だけ死ねばいいとして──。
「仲間をストレージに戻す……!?」
この時、妙案が浮かんだ。あとはスマホ次第なのだが──。
「スマホ、仲間を複製スマホから召喚することは可能か?」
『可能です』
「…………」
こんな簡単に解決方法が見つかるとは──スマホを飲み込ませておいたのが、別の意味で役に立ったようだ。
解決方法も見つかったので、ひとまず当初の予定の軍資金を回収を始めることにする。
祠の奥へ進むと、通路の端に冒険者の屍が散乱しているのを発見した。体は干からびてミイラ化している。僕らと同じように閉じ込められて餓死したのだろうか──。
さらに奥には、彼らのものと思われる装備が置かれていた。彼らが死んだ後、剥ぎ取った装備なことは、ほぼ間違いない。
友好的なリザードマンなら、こんなことはしないだろう。本当に反吐が出る連中だ。
置かれていた装備は、売れば金になりそうなものばかりだったが、それに手を付けるのは正直気が引ける。なので、軍資金となる金貨だけを回収することにした。散らばっている硬貨をかき集めると、全部で金貨20枚程集まった。これは、彼らの無念を晴らすための依頼料ということにでもしておこう。
「これを足して手持ちの金貨は全部で50枚……これなら、少しスキルを無駄使いしても大丈夫だな」
「マスター、いかが致しますか?」
と、ファーストが訪ねる。
「まず、3人一緒に複製スマホから出たら、サードは真っ先に眼帯のリザードマンを粛清。セカンドは周囲の雑魚リザードマンを魔法で強襲。その隙をついてファーストが祠の扉を開ける……と、ざっとこんなところかな」
「素晴らしい作戦です、マスター!」
それを聞いたファーストは、羨望の眼差しを向けた。
「ぼっこぼこにしていいんだね!」
と、サードは指をポキポキと鳴らす。暴れたくてうずうずしている模様。
そんな中、セカンドが冷静な顔つきで、質問してきた。
「では、そのようにいたします。スキルの予算はいかほどで?」
「できれば、金貨3枚程度で足りるといいのだけど……レベル4以下で頼む」
「かしこまりました。妥当なところです」
どうやら、予算を心配してくれたようだ。いくら増えたとはいえ、軍資金は有限だ。効率よく使わなければならない。
準備が整ったところで早速行動に移った。一度、仲間ストレージへと、3人を回収する。その後、遠隔操作を通じて外にある複製スマホから仲間を召喚、作戦が開始される。
祠の外からは激しい戦闘の音が聞こえてきた。だが、それが静まるのに、数分とかからなかった。しばらくして、祠の扉が開く。
「マスター、おまたせしました」
と、ファーストが扉から顔をのぞかせた。
「じゃあ、逃げるか」
どうやら、作戦は成功したようだ。眼帯のリザードマンは仰向けに倒れ、精鋭と思われるリザードマンも、魔法で焼かれていた。残りのリザードマンは、ボスを失ったせいでオタオタしている。そのすきに僕らはこの場から離脱した。もうこんな生臭い場所には一秒たりともいたくはない。
「よし、十分離れたな。あの複製スマホを爆破してくれ」
『了解しました。クローン端末をオーバークロック。冷却システムダウン。セーフティー解除、及び、データ保護自爆機能起動』
「伏せろ!」
と、全員でその場で伏せたその刹那、激しい光と風が、湿地を覆う。
「敵は討った。迷わず成仏してくれよ……」
僕らは、その光を死んでいった冒険者への送り火として先を急いだ。
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