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人食い花に転生しました ~復讐~~その人を食べる日まで~

花の妖精フィオレ

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 壮絶な《勇者》との闘いから一日が経過しました。

 たしか、連れの魔法使いのエルフがいたはずです。警戒はしていたのですが、来る気配が全く感じられません。

 ですが、用心するに越したことはありません。私は次の戦いのために、《勇者》が削ってくれた地面の修復を急ぎました。

 修復作業のために、村人を3人ほど【複製】します。そういえば、この3人には名前がありませんでした。

 なので、順番に《ほどよい食感》、《まずい健康食》、《フォアグラ》と名付けました。

 この3人には、警戒を兼ねて作業に当たらせます。飛び散った草を集め、植えなおす作業です。足りない分は他から移植します。

 このTP消費50の【複製】スキルですが、消費が少ない割には便利です。【複製】した獲物は、自分で動かしたり、喋らせたり、時には命令をあたえて奴隷のように働かせることができます。

 前回、スキルに対する無知のおかげでひどい目に遭いましたので、今回はこのスキルも入念に調べておきました。

 私が獲物を捕まえて【食事】をすると、その獲物は複製リストに入ります。リストには最大100まで入ります。【複製】された獲物は、何度も使うことによって、強く、賢くなっていくようです。

 このスキルの注意点は、リストが埋まってしまうとその後に【食事】しても、複製リストに入らない点です。うっかりリストを埋めたまま欲しい人間を食べてしまえば、除外されてしまうので気をつけなければなりません。

《羽ウサギ》などは多く食べるので、気が付くとリストが《羽ウサギ》だらけで削除するのが大変だったりします。

 複製リスト登録の除外リストがあれば……改善を要求したいです。


「こんにちは~!」

 突然、声が聞こえてきました。この可愛い声はいったい……。

「人間から森を守ってくれたんだね! ありがとう」

 蝶の羽が生えている女の子の姿をした50センチぐらいのかわいい妖精が現れました。パタパタと羽を動かして近づいてきます。

 ゲージが表示されました。(HP30/30)なので、すぐに【食事】できそうです。

 私の花の上にちゃっかり止まりました。とりあえず、挨拶がわりに【捕獲】をしてみました。

「キャッ! なにするのよー」

 簡単に捕まりました。体力がすぐになくなります。(HP10/30)

 それでは……。

 い・た・だ・き・ま・す!

 ────パクッ。

「イヤアアァァー!」

 そのまま口の中に放り込みました。

 どうしたことでしょう……味がありません。食べてる感触がありません……。

「もう! いきなりひどいことしないでよ!」

 妖精は、私の腹をすり抜けて出てきました。

 ……おかしいです……もう一度【捕獲】してみます。

「あっ! いやーっ! もうっ……なにこのつ~るううぅぅ!」

 一気に口の中に放り込みます。

 ────パクッ。

 味わってみます。

 ────モグモグモグ……。

 ですが、味がしません。歯ごたえもありません。しばらくすると、また腹のあたりからすり抜けて出てきました。

「私は食べ物じゃないよー!」

 ────天敵です……食べることができません……。

 私は、対話を試みました。《マリー》を【複製】して話しかけます。

「あなた、何者ですか?」

「あー! 人間がこんなところにもー! 花さん! やっつけてよ!」

「いいえ、この体は人間ではありません。私が作り出したものです」

 対話に成功したようです。

「本当に? 本当?」

「本当ですよ、それよりも……あなたは一体……」

「私はね、《フィオレ》。『花の妖精』だよ! あなたは?」

「私は…………」

 名前を思い出そうとした瞬間、突如、いろいろな記憶の断片が飛んできました。そして、私のことを呼んでいるような声の記憶が私の思考に干渉します。

《オードリー・クローバー》…………その声は人間の声。なんだかとても知っている声のはずなんですが、思い出せません。

「なになにー」

「私は、《人食い花》と呼ばれています」

「えー。それ、名前じゃないよぉ。っていうか、そんな名前つけたやつ、センスないー!」

 さっきの記憶の断片……《オードリー・クローバー》。それは多分、私が人間だったときの名前かもしれない…………。その名前を、今の自分の名前にすることは、なぜかわかりませんが、いけないことのような気がしました。

「じゃあ、私がつけていい?」

 名前ですか……それもいいかもしれませんね。

「いいですけど、変な名前つけたら食べますよ」

「食べられないから大丈夫だもーん。んんー。……何がいいかなぁ……。そうだ!」

《フィオレ》は、自信ありげに言いました。

「えっとね…………《シュカ》!」
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