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人食い花に転生しました ~復讐~~その人を食べる日まで~
世界樹との接続
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光は、私の体を覆いました。接ぎ木の枝の先から、白い根のようなものが私のからだに絡みつきます。
次の瞬間、接ぎ木の反対側から太い根が飛び出し、地面に刺さりました。その根は伸び続け、地中を掘り進むかのようでした。
────「今、世界樹と接続してはいけない……」
声が聞こえました。天の声とはちょっと違います。私の思考に直接介入してくるような、そんな感じの声でした。
それと同時に、私の体に何か別な力が注ぎ込まれてきました。体中の水分が、沸騰しそうな感じです。内側から焼かれるような感覚……この力は一体……。
────ガガッ……。
思考のノイズがかかりました。また、何かの記憶が流れ込んできます。
記憶の私は、何か帳簿のようなものを片手に、地図を指差していました。指していたのは、ちょうどディーバ帝国の城の北側に位置し、東西に伸びる川でした。
「確かに、こんなに魔鉱石の取引が多いのに……陸路だけでは厳しいはずだ」
「そうです。ここを流通の拠点の港とすればよいはずです。この川は隣接する全ての国へつながっているので十分すぎる場所だと思います。これまでは陸路を何度も往復していましたが、船を使えば魔鉱石を一度で大量に輸送することが可能です。それに私たちも港を利用できれば、商業も発展します」
──それが叶うのなら、私の父母も、楽に行商を続けられるはずです。無理をする必要もないのですから……。
「帝国の国力の増強にもつながる……か……」
「私は商人です。身分もそうですが、女では……署名を集めたところで、話も聞いてもらえません。レイヤ王子……お願いしてもよろしいでしょうか……」
「ああ、他ならぬ君の頼みだ。この報告書で直接国王を納得させてみせる。こういう話なら、第三王子の《プロミス・キンバル》も協力してくれるはずだ。それと……んんっ……コホッ。誰もいないところでは、レイヤと呼んでくれてかまわない」
「レイヤ……」
「そうそう、この話が通ったら、君に渡したいものがあるんだ」
「渡したい物……ですか?」
「ああ、その時は城へ来てくれ。その時渡そうと思っている」
「そうですか……楽しみです」
記憶の私は、なぜか顔を赤くしていました。
────ガッガッガガッ…………。
記憶のノイズが思考を駆け巡りました。そして……なんだか、その記憶は、暖かく感じられました。そして、なんだか少し悲しくもあり…………。
────暖かい記憶…………悲しい……? この感情はいったい…………。
『世界樹の接ぎ木』は、根を伸ばすのをやめました。そして、粉のように消えていきます。
その後、体の熱も引きました。《フィオレ》が心配そうに話しかけてきます。
「シュカ! どうしたの? 大丈夫?」
「ええ、大丈夫ですよ」
あの声……世界樹との接続とは、いったいどういう意味だったのでしょうか……。ですが、体の中から、生命力のようなエネルギーが湧いて出てくるのが感じられます。
変わった点といえば、視界の下の方に、緑色の長いバーが表示されたことです。何の意味を持つかはわかりませんが、気に留めておくことにします。
それにしても……『世界樹の接ぎ木』は消えてしまいました。これは、どう言い訳すればいいのでしょうか……。
と、言い訳を考える間もなく、このタイミングで私の元に、青装束の男はやってきました。…………《アズール》です。
「こんにちは! マドモアゼル」
「に、人間? ……やだ、臭い」
《フィオレ》が《アズール》に反応しました。とても嫌そうな顔をしています。
「おや、妖精ですか……いるんですね、この森にも……」
「あんた、何者なのよ! 死んだ人間の臭いがするー!」
死んだ人間の臭い……言われてみれば確かにそうですが、まだ食べられる程度のちょっと熟したもののように感じます。
「失礼な、別に死んでいるわけではないのですよぉ。かわいい妖精さん」
「か、かわっ…………ま、まあ……言い過ぎたわ。ごめんなさい」
《フィオレ》と《アズール》は、口論になりましたが、ちょっとした一言で収まったようです。それにしても……。
「今日は、何の件でこちらへ?」
「あの件ですよぉ、あの件…………『世界樹の接ぎ木』ですよぉ。もうね、私……諦めました。なので、《人食い花》さんに頑張ってもらうことにしましたぁ。それと……私を使わせた声の主のことなのですがぁ……もうここへこれないそうなんですよぉ」
「《人食い花》って名前じゃないよ。今は《シュカ》っていうんだよ」
《フィオレ》が口を挟みます。
「そうですかぁ。《シュカ》さんですかぁ……とても良いお名前ですねぇ。わかりました。では《シュカ》さん。近々、人間たちがここに大勢やってくると思います。その時は、いっぱい食べちゃってくださぁい。あなたも相当強くなったはずでぇす。まかせましたよぉ、マドモアゼル! ハッハッハッ……」
そう言うと、《アズール》はさっさと行ってしまいました。
すこし、言葉がとげとげしい感じがしました。ですが、態度は紳士的です。『世界樹の接ぎ木』を諦めた、と告げられた時は正直ほっとしましたが……何か言いたげな素振りが少し気になりました。
それよりも、ごちそうが大勢くるということは……食べ放題なのでしょうか……。
次の瞬間、接ぎ木の反対側から太い根が飛び出し、地面に刺さりました。その根は伸び続け、地中を掘り進むかのようでした。
────「今、世界樹と接続してはいけない……」
声が聞こえました。天の声とはちょっと違います。私の思考に直接介入してくるような、そんな感じの声でした。
それと同時に、私の体に何か別な力が注ぎ込まれてきました。体中の水分が、沸騰しそうな感じです。内側から焼かれるような感覚……この力は一体……。
────ガガッ……。
思考のノイズがかかりました。また、何かの記憶が流れ込んできます。
記憶の私は、何か帳簿のようなものを片手に、地図を指差していました。指していたのは、ちょうどディーバ帝国の城の北側に位置し、東西に伸びる川でした。
「確かに、こんなに魔鉱石の取引が多いのに……陸路だけでは厳しいはずだ」
「そうです。ここを流通の拠点の港とすればよいはずです。この川は隣接する全ての国へつながっているので十分すぎる場所だと思います。これまでは陸路を何度も往復していましたが、船を使えば魔鉱石を一度で大量に輸送することが可能です。それに私たちも港を利用できれば、商業も発展します」
──それが叶うのなら、私の父母も、楽に行商を続けられるはずです。無理をする必要もないのですから……。
「帝国の国力の増強にもつながる……か……」
「私は商人です。身分もそうですが、女では……署名を集めたところで、話も聞いてもらえません。レイヤ王子……お願いしてもよろしいでしょうか……」
「ああ、他ならぬ君の頼みだ。この報告書で直接国王を納得させてみせる。こういう話なら、第三王子の《プロミス・キンバル》も協力してくれるはずだ。それと……んんっ……コホッ。誰もいないところでは、レイヤと呼んでくれてかまわない」
「レイヤ……」
「そうそう、この話が通ったら、君に渡したいものがあるんだ」
「渡したい物……ですか?」
「ああ、その時は城へ来てくれ。その時渡そうと思っている」
「そうですか……楽しみです」
記憶の私は、なぜか顔を赤くしていました。
────ガッガッガガッ…………。
記憶のノイズが思考を駆け巡りました。そして……なんだか、その記憶は、暖かく感じられました。そして、なんだか少し悲しくもあり…………。
────暖かい記憶…………悲しい……? この感情はいったい…………。
『世界樹の接ぎ木』は、根を伸ばすのをやめました。そして、粉のように消えていきます。
その後、体の熱も引きました。《フィオレ》が心配そうに話しかけてきます。
「シュカ! どうしたの? 大丈夫?」
「ええ、大丈夫ですよ」
あの声……世界樹との接続とは、いったいどういう意味だったのでしょうか……。ですが、体の中から、生命力のようなエネルギーが湧いて出てくるのが感じられます。
変わった点といえば、視界の下の方に、緑色の長いバーが表示されたことです。何の意味を持つかはわかりませんが、気に留めておくことにします。
それにしても……『世界樹の接ぎ木』は消えてしまいました。これは、どう言い訳すればいいのでしょうか……。
と、言い訳を考える間もなく、このタイミングで私の元に、青装束の男はやってきました。…………《アズール》です。
「こんにちは! マドモアゼル」
「に、人間? ……やだ、臭い」
《フィオレ》が《アズール》に反応しました。とても嫌そうな顔をしています。
「おや、妖精ですか……いるんですね、この森にも……」
「あんた、何者なのよ! 死んだ人間の臭いがするー!」
死んだ人間の臭い……言われてみれば確かにそうですが、まだ食べられる程度のちょっと熟したもののように感じます。
「失礼な、別に死んでいるわけではないのですよぉ。かわいい妖精さん」
「か、かわっ…………ま、まあ……言い過ぎたわ。ごめんなさい」
《フィオレ》と《アズール》は、口論になりましたが、ちょっとした一言で収まったようです。それにしても……。
「今日は、何の件でこちらへ?」
「あの件ですよぉ、あの件…………『世界樹の接ぎ木』ですよぉ。もうね、私……諦めました。なので、《人食い花》さんに頑張ってもらうことにしましたぁ。それと……私を使わせた声の主のことなのですがぁ……もうここへこれないそうなんですよぉ」
「《人食い花》って名前じゃないよ。今は《シュカ》っていうんだよ」
《フィオレ》が口を挟みます。
「そうですかぁ。《シュカ》さんですかぁ……とても良いお名前ですねぇ。わかりました。では《シュカ》さん。近々、人間たちがここに大勢やってくると思います。その時は、いっぱい食べちゃってくださぁい。あなたも相当強くなったはずでぇす。まかせましたよぉ、マドモアゼル! ハッハッハッ……」
そう言うと、《アズール》はさっさと行ってしまいました。
すこし、言葉がとげとげしい感じがしました。ですが、態度は紳士的です。『世界樹の接ぎ木』を諦めた、と告げられた時は正直ほっとしましたが……何か言いたげな素振りが少し気になりました。
それよりも、ごちそうが大勢くるということは……食べ放題なのでしょうか……。
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